Kindleセール開催中

297冊 がお得に購入可能 最大 99%OFF

レビュー

概要

『おおきなかぶ ロシアの昔話 (こどものとも絵本)』は、「大きく育ちすぎたかぶを、みんなで力を合わせて抜く」というシンプルな筋を、反復のリズムで押し切る絵本です。おじいさんが引っぱり、おばあさんが加わり、さらに子ども、犬、猫、ねずみへと“助っ人”が増えていきます。物語は単純なのに、読むたびに盛り上がるのは、展開が「予想できるのに気持ちいい」型にできているからです。

本作は、ロシア民話の大らかさとユーモアが核にあります。正しさを説教するのでなく、「一人の力は限られている」「でも、集まると抜ける」という経験則を、ほほえましい場面の連続で体に覚えさせてくれる一冊です。

読みどころ

1) “くり返し”が、参加型の読み聞かせを作る

この絵本の強さは、言葉のくり返しがそのまま参加の合図になる点です。次に誰が呼ばれるか、次はどう引っぱるか。子どもが展開を先読みしながら「来た来た」という気分になれる。読み聞かせでは、掛け声の部分を少し溜めたり、声の強弱を変えたりすると、場が自然に一体化します。

2) “協力”の価値を、理屈より先に体験させる

協力の大切さは説明できても、腑に落ちるのは体験のあとです。本作は「一人で無理→人数を増やす→やっと抜ける」という流れが明快で、子どもにとって理解の負荷が小さい。そのぶん、成功の瞬間の気持ち良さが残ります。

3) 物語の単純さが、絵の説得力を引き立てる

筋が簡潔だからこそ、引っぱる姿勢、力の入り方、つながった体の列が目に入ります。読み手は絵を追う余裕がある。誰がどこを持っているか、どんな表情をしているか。細部の発見が、再読の楽しみになります。

本の具体的な内容

物語の中心は、畑で育ったかぶを抜く場面です。おじいさんが「抜けない」と気づき、助けを呼ぶ。呼ばれた相手は、次の相手を呼ぶ。列はどんどん長くなるのに、それでも簡単には抜けません。この“じれったさ”があるから、最後にかぶが抜けたときの解放感が生まれます。

登場人物の追加は、単なる人数合わせではありません。おばあさん、子ども、犬、猫、ねずみという並びには、家族と身近な生き物が連なっていく感覚がある。生活の延長にある協力です。大事件でなく、畑の仕事で起きる。だからこそ、「自分の世界でも起こりうる話」として入りやすいと思います。

引っぱる場面では、誰がどこを持っているかが毎回はっきりします。前の人の腰や服をつかみ、列を作って踏ん張る。掛け声が入る版では「うんとこしょ、どっこいしょ」のリズムが反復の芯になります。言葉のテンポと体の動きが揃うと、子どもは“読む”より先に“参加する”側へ移りやすいです。

もうひとつのポイントは、結末が勝ち負けの物語にならない点です。悪役を倒す話ではありません。困りごとを、手持ちの人員で解く話です。勝利の誇張ではなく、ほっとした笑いで終わる。その余韻が、読み聞かせのあと、穏やかに残ります。

実践の回し方

読み聞かせでは、引っぱる場面を「身体感覚」に寄せると盛り上がります。椅子に座ったままでも、腕を引く動きを少し入れるだけで、言葉が運動になります。子どもが掛け声を言い始めたら、そこは任せてしまう。物語の主役が、自然に子どもへ移ります。

家庭なら、読み終えたあとに「誰を呼んだら抜けそう?」と聞いてみるのも面白いです。別の順番を想像させると、協力の発想が遊びになります。

もう少し遊びに寄せるなら、ぬいぐるみや積み木で“列”を作ってみるのもおすすめです。誰が先頭に立つか、誰を後ろにつなぐかを決めるだけで、物語の構造が手で分かります。抜けないときは人数を足す。うまくいったら一緒に喜ぶ。絵本の成功体験が、日常の遊びへ移ります。

類書との比較

反復の気持ち良さを持つ絵本は他にもありますが、本作は「協力が成功につながる」ことを、最短距離で示します。ロシア民話の累積譚(くり返しで積み上げる話)には、登場人物が増えるほど、緊張は高まる型があります。その中で『おおきなかぶ』は、恐怖より笑いが勝つ構造です。

たとえば同じ民話系でも、危機や罰が強調される話だと、幼い読者は怖さに引っ張られます。本作は困りごとの規模が生活レベルに留まり、安心して“成功体験”を味わえる。ここが、読み始めの一冊としての強みです。

こんな人におすすめ

反復の掛け声が好きな子、みんなで声を合わせる遊びが得意な子に特に合います。協力のテーマを、説教ではなく楽しい体験として渡したい家庭や園にも向きます。

感想

この絵本の面白さは、展開が読めるのに、毎回ちゃんと気持ち良いところです。誰が加わっても抜けない時間があるから、最後の一瞬が光る。協力は正しい、ではなく、協力は気持ちいい。そういう記憶を残せる絵本だと思いました。

列の最後に加わる存在が、小さくても効くという感覚も残ります。「自分の出番は小さい」と感じやすい子にとって、勇気になる場面です。

この本が登場する記事(1件)

本の虫達

要約・書評・レビューから学術的考察まで、今話題の本から知識を深めるための情報メディア

検索

ライター一覧

  • 高橋 啓介

    高橋 啓介

    大手出版社で書籍編集を10年経験後、独立してブロガーとして活動。科学論文と書籍を融合させた知識発信で注目を集める。
  • 森田 美優

    森田 美優

    出版社勤務を経てフリーライターに。小説からビジネス書、漫画まで幅広く読む雑食系読書家。Z世代の視点から現代的な読書の楽しみ方を発信。
  • 西村 陸

    西村 陸

    京都大学大学院で認知科学を研究する博士課程学生。理系でありながら文学への造詣も深く、科学と文学の交差点で新たな知の可能性を探求。
  • 佐々木 健太

    佐々木 健太

    元外資系コンサルタントから転身したライター。経済学の知識を活かしながら、健康・お金・人間関係の最適化を追求。エビデンスベースの実践的な知識発信を心がける。

Social Links

このサイトについて

※ 当サイトはアフィリエイトプログラムに参加しています。