レビュー
概要
キャンプYouTuberヒロシによる、ひとりで楽しむソロキャンプの持ち物、行程、心構えを丁寧にまとめた1冊。SB新書らしい切り口で、着替え、調理器具、寝袋、焚き火というテーマをクラシックギアと現行ギアで比較しながら、地域とのつきあい方やマナーにも目を向ける。各章は実際にヒロシが訪れたキャンプ場の日記スタイルになっており、雨天設営や一人分の食事づくりの“手の動き”が具体的なコマと音声付き説明で再現される。写真・図解に加え、「失敗した瞬間に何を選んだか」「翌日どう立て直したか」という振り返り欄があるのも実用的で、読みながら次の出発に備えたくなる構成。
読みどころ
- 第1章のパッキング術では、荷物の重量と収納を天秤にかけたリストをページいっぱいに展開。ギアを並べ、捨てる・残すの判断を可視化し、細かなタグやベルトの留め方まで丁寧に描写。特に動画で飛ばされがちなベルト留めやフックの調整を文章と図で再現し、初めてでも不安にならない手順に落とし込んでいる。
- 3章では火の扱いを詳細に追う。焚き火台の高さを調整する手順、薪の組み方、風の入れ方をマンガで示し、雨天の火力維持のために炭の種類と炎の色を使い分ける具体的な基準も載せている。炎が弱くなったときの薪替えのタイミングを呼吸や心拍の描写と絡めて説明することで、火を扱うときの身体リズムの整え方も学べる。
- 5章では、行程の柔軟性を担保するために「Aルート/Bルート」の選択肢を設け、時間帯や天候、体調によってどこを削るかをフローチャート化。余裕があれば読書や短いハイクを入れる、余裕がなければテント内でのメンテに切り替えるなど、決断のタイミングごとに具体的な判断基準を示している。
- 食事の章では、1人前の段取りにこだわる。食材の段階的な下準備、スパイスの順番、鍋を置く位置まで「手の動き」がコマで追えるようになっていて、初めてでも一人ご飯のタイムラインを俯瞰できる。雨で濡れたテーブルや手で食材を扱う瞬間にも注意を払う描写がある。
- 最終章には地域との共存を語るページがあり、スタッフとの挨拶、トイレマナー、ごみの分別まで丁寧に収録。キャンプ場の空気を壊さない一言や、挨拶のタイミングなど、見落としがちな“空気の読み方”に触れている。
- 付録では「夜の独り言」ノートがあり、静かな時間にどんな思考が浮かんだかを記録するテンプレート付き。ヒロシが挫折したときに何を考えたかがそのまま載っていて、雨天のテント内での過ごし方や、焚き火を見ながらの一人反省に役立つ。
- また、その日の体調と気象のチェックポイントをまとめた「前夜ルーチン」もあり、翌日の行程をヘッダーごとに確認しておくことで、準備不足の恐れを減らす工夫がある。
類書との比較
ソロキャンプ本としては『ソロキャンプの基本』が道具の機能と快適性を中心に扱うのに対し、ヒロシは“体験の記録”と“失敗談”を交えて学びを得る。『焚き火大全』が火のプロとしての専門性を前面に出す中、本書は初心者目線で手の動き、音、感覚を豊かに表現する。『ソロキャンプ戦略』と合わせると、準備(本書)と戦略(ヒートマップ)の両面からソロキャンプを捉えられる。ヒロシの語る“地域との共存”の姿勢は『地域と行くキャンプ』のエッセンスに近く、マナーと余白を大事にしたい人には相性が良い。
こんな人におすすめ
- 装備を軽くしたい初めてのソロキャンパー。
- 雨天でもキャンプしたい人。
- 地元とトラブルを避けるマナーを身につけたい人。
- 1泊2日のバイクキャンプを考えている人。
- 一人でご飯を作るのが不安な初心者。
- 地域との距離感をはかる「挨拶力」を磨きたい人。
感想
ヒロシの語りはまるで隣で話してくれているようで、雨音の描写や火のパチパチという効果音が役に立つ。五感を動かす説明と軽いジョークが、ソロキャンプ歴の浅い読者にも安心感を与える。持ち物の選び方を「次に何を用意すればいいか」という指針に翻訳して提示してくれるので、読後に次の週末のプランが自然と浮かび、持ち物リストやスケジュールの再確認に手が伸びる。
読後は巻末の共存ガイドを参考にスタッフへの一言を準備したくなり、地域の空気を壊さず楽しむ術を学べる。旅の途中で火が消えたときの対処法や、ひとりの時間をどう過ごすか、そうした実践的なヒントが詰まっており、「ソロキャンプの安心感」を作るには欠かせない相棒となってくれる。書き込み型のテンプレートを使い続けるほど、装備の検品と精神状態をセットで調整する習慣がつき、1泊2日の旅の直前でも「やること」が頭の中で整理されるところがありがたい。