レビュー

ストーリーと「コツメモ」で、ADHDタイプの困りごとを実務へ落とす

『仕事&生活の「困った! 」がなくなる マンガでわかる 私って、ADHD脳!?』は、遅刻、先延ばし、忘れ物、片づけなどのつまずきを、ストーリー漫画と解説で整理する本です。紹介文では、主人公が「才能はあるのに低評価の編集者」として描かれます。そこへ精神科医が現れ、生活が変わっていく。物語の流れがあるので、知識だけで終わらず「自分の場面」に当てやすい構成です。

第1章は「ADHD脳って何?」から始まり、原因やセルフチェックへ触れます。最後に【付録】としてDSM-5が入るのも特徴です。用語の裏取りができるので、必要なときに立ち返れます。

仕事の章が強い。「小さなできた」を集める設計になっている

第2章は仕事の困ったに焦点を当てます。STORY2のテーマが「小さな『できた!』を集める」です。ここが良い。ADHDタイプは、結果が出る前に自己評価が折れやすいです。だから、粒度を下げて成功を集める。方針が最初から明確です。

さらに「コツメモ」で具体策が並びます。

  • ざっくり5分だけやってみる
  • 全体のデッサンを描く
  • 1時間ルールでひと息入れる
  • 休憩もスケジュールに組み込む
  • 自分ミーティングを1日3回開く
  • タグづけで仕事に戻る
  • 心に「マイ上司」を住まわせる
  • 仕事に句点を打つ
  • 「リマインド言葉」を使う
  • 刺激をシャットアウトする
  • 朝の時間はルーティン化する
  • 移動のときは「見返り美人」になる

どれも派手ではありません。けれど、生活を回すのはこういう小さな仕組みです。特に「タグづけ」と「句点」は、終わらせ方の技術です。終わらせ方が変わると、先延ばしの連鎖が減ります。

片づけは「気合」ではなく「住所」と「捨て方」で解決へ寄せる

第3章は片づけの困ったです。ここでもコツメモが具体的です。「ゴミは集合させて捨てる」「モノの住所を決める」「最初はモノの表札をつける」「使い捨てグッズを駆使する」など、判断の負荷を減らす方向で組み立てます。

さらに「お掃除ソングをかける」「掃除場所を小分けして達成感を得る」のように、脳が乗る条件も扱います。部屋は根性で片づきません。動ける設計が要ります。

感情と体調の章が現実的。「フォロ友」と睡眠の扱いが印象に残る

第4章は感情と体調です。ここで出てくるのが「フォロ友」です。心の中にフォローしてくれる友達を持つ。友達を励ます言葉で自分を励ます。脳内信号機を赤にする。二次障害から自分を守るための視点が入ります。

体調面では「睡眠は最良の薬」と置き、生活の前提を整える方向へ導きます。自己管理を責めずに組み替える。全体を通して、その姿勢がぶれません。

類書比較:文章の自己啓発本より「行動が止まらない」工夫が多い

ADHDの類書には、説明が丁寧な反面、読む負荷が高い本もあります。読む段階で疲れてしまうと、実践まで届きません。本書はマンガとコツメモで、理解と行動を交互に進めます。読者のエネルギーが切れにくい構成です。

また、単なる時間術よりも、刺激の遮断、休憩の設計、片づけの住所化など、仕組みの話が多いです。だから再現しやすいと感じました。

こんな人におすすめ

  • 仕事で先延ばしが続き、自己評価が下がりやすい人
  • 片づけが苦手で、生活全体が崩れやすい人
  • 感情の揺れと疲れが重なり、対人関係までしんどくなる人

自分を責めるのをやめて、仕組みへ寄せる。本書はその最初の一歩を、ストーリーとコツメモで作ってくれる1冊でした。

取り入れ方:コツメモを「3枚だけ」選ぶと、生活に入りやすい

コツメモは数が多いです。全部やろうとすると、何も残りません。最初は3つだけ選ぶほうが続きます。

仕事なら「ざっくり5分だけやってみる」「全体のデッサンを描く」「仕事に句点を打つ」が入りやすいです。開始、見通し、終わりをセットにします。これだけで、作業が止まりにくくなります。

片づけなら「ゴミは集合させて捨てる」「モノの住所を決める」「最初はモノの表札をつける」が分かりやすいです。判断回数が減るので、片づけの負荷が下がります。衣類は「6セットあればいい」という発想も出てきます。量を絞ると、維持が楽になります。

感情と体調の章では「フォロ友」「脳内信号機」「睡眠は最良の薬」が印象に残ります。ここは、やる気の問題へ戻さないための支えです。自分を責めそうになったら、コツメモを読み返す。それができるだけでも、悪化の連鎖が止まりやすくなります。

目次には【column1】として「ADHD脳の部下とのつき合い方」も入ります。本人向けの本に見えます。ただ、チーム側の視点があるので、上司や同僚が読む意味も出ます。仕事の段取りを責める代わりに、仕組みを一緒に作る。そういう関わり方へ寄せやすいです。

付録にDSM-5があるのも、安心材料になります。言葉の定義を確認したいときに、足場が残ります。

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