レビュー
概要
同人誌やZINE制作に必要な本文デザインの基本を、実例とテンプレートで示すハンドブック。写植やフォント選定、余白の操作、カラーとグリッドの扱いなど「文字組み・ページ構成」に注力しながら、手作り感をいかしたレイアウトを多数掲載。あるいはillustratorやInDesignを使わずとも喫茶店で編集するようなシンプルなワークフローを重視し、ページごとの構成メモやチェックリストを見開きにして提供する。
読みどころ
・第1章では文字の扱いを「粒子→ブロック→空間」の3段階で解説し、フォントのトーンと行間・字間の関係を図示。例えば詩的な文は行揃えをアシンメトリーにして「余白から浮かぶ呼吸」を生み出し、読みやすさを落とさずリズム感を作る方法が具体例で紹介される。 ・中盤の「ページ構成」では、トーンによって読み進める順路を誘導するために、グリッドとカラーブロックを分割し、読者の視線を引き込むための「階段状配置」「対角線のわり当て」などを詳細に説明。さらに、映像的な展開を意識して、見開きごとの切り替えを計画するワークシートも設ける。 ・後半は、印刷・製本のトラブル回避。用紙選び、トンボの引き方、PDF書き出し時のカラープロファイル設定、オンデマンド印刷業者とのやり取りテンプレを掲載。手作業でホチキス留めをする際の余白と折り返しのルール、そしてZINEならではのページ数の調整法もフォローする。
類書との比較
『ZINEの教科書』(BNN)や『同人誌づくり入門』(玄光社MOOK)も実践的だが、こちらは本文設計と整合する「読み手の視線管理」まで踏み込み、文字と余白の関係を色・トーンと連携させた点で差別化される。『グリッド・デザインの教科書』(マール社)がフォーマット軸であるのに対し、本書は読み物の特性を生かしながらグリッドを柔軟に使う方法を示すため同人誌の編集者向けにより親和性が高い。
こんな人におすすめ
自分の本を紙で作ってみたい同人作家、ZINE制作に挑む初心者、編集者。逆に、ただ文章を書いてPDF公開で良い人には紙しものルールが煩雑に感じるかもしれないが、「紙のページをどう構成するか」に悩む人には実践的なヘルプとなる。
感想
文字と余白の呼吸を意識してレイアウトすると、文章が自然と読み手に寄り添う。チェックリストに沿って1ページずつ確認しながら進めたため、印刷直前に「行間を再調整」する回数が減った。自分のZINEが読まれる「流れ」をデザインできた実感があり、紙の編集のクセを直したい人には心強い指南書だ。