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レビュー

概要

『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと 第3版』は、「ある日突然、親が入院した」瞬間から始まる現実を、短期・中期・長期の戦略に分けて整理する実用書です。介護は急にやって来ますが、進めるために必要なのは「情報収集」と「自己申告」です。自分から動かなければ何も進まない。そういう冷たい現実を、手順に落としてくれます。

第3版として、大介護時代を見据えつつ、共倒れを避けるための考え方がより明確になっています。制度や手続き、サービスや施設の種類と費用、専門職とのやりとり、家族の役割分担、仕事や子育てとの両立まで、現場で必要になる論点が詰まっています。

読みどころ

1) 「短期的戦略」で、入院直後のパニックを手順に変える

第1章は短期的戦略として、救急指定病院の対応から始まります。入院手続きで必要になりやすい保証人や保証金、入院時診療計画書やクリニカルパスの見方、インフォームドコンセントやセカンドオピニオン、急性期病院と回復期リハビリテーション病院の流れ、入院期間の現実などを、具体項目で追っていきます。

さらに、医療ソーシャルワーカーへの相談、入院費用、差額ベッド代、民間医療保険の扱い、付き添いや洗濯、地域包括ケア病棟や療養病床といった「もう少し入院したい」場合の選択肢まで触れます。こういう項目が並ぶだけでも、「何を聞けばいいのか」が見えるようになります。

2) 退院後の中期戦略が、介護保険とサービス選びを一気につなぐ

第2章は、退院が介護の始まりになる現実を前提に、地域包括支援センター、主たる介護者とキーパーソンの役割、地域包括ケアシステム、要介護認定、基本チェックリスト、認定調査、不服申立てや区分変更、ケアマネジャーとケアプランの作り方へ進みます。

そこから、訪問診療・訪問看護、ホームヘルパーの仕事範囲、デイサービスやショートステイ、小規模多機能ホーム、住宅改修、福祉用具、地域支援事業や民間サービス、食事の宅配、見守りサービスまで一続きです。サービスの名前だけが増えるのではありません。助かるのは、「どの場面で何を使うのか」が見えることです。

3) 両立パートが厚い。介護離職を避けるための設計ができる

第3章では介護離職を正面から扱い、介護休業制度や介護休業給付金など、働きながら支えるための制度を確認します。ショートステイを休息の必須要素として位置付けるのも現実的です。

遠距離介護の交通費負担、同時期の複数介護やダブルケアといった、人生の負荷が重なる局面にも触れます。介護は「親の問題」であると同時に、「自分の生活の問題」です。両方を同じ画面で見せてくれるのが本書の強さです。

4) 「お金」の章が具体的で、家族間トラブルの予防になる

第5章は介護資金の見立てから始まり、親の年金・貯蓄・借金の確認、代理人カードや預かり金などの入出金の工夫、介護家計簿、高額療養費制度、高額介護サービス費などの軽減策、リバースモーゲージやマイホーム借上げ制度まで扱います。

さらに、扶養控除や医療費控除、世帯分離、日常生活の自立支援事業、成年後見制度、家族信託、生活保護まで選択肢が並びます。親の状態が変化すると、お金の扱いも急に難しくなるので、ここを先に知っておく価値は大きいです。

5) 施設介護を「逃げ」ではなく「戦略」として扱う

第6章では、特別養護老人ホームや有料老人ホーム、グループホーム、ケアハウス、サービス付き高齢者向け住宅など、施設選びの論点が整理されます。重要事項説明書の見方まで入っているので、契約に進む前の注意点が見えます。

施設は罪悪感のテーマになりやすいですが、介護を継続可能にするための戦略でもあります。ここを冷静に扱ってくれるのがありがたいところです。

類書との比較

介護の本は、制度の解説に寄ったもの、施設紹介に寄ったもの、あるいは家族関係の心理に寄ったものなど、焦点が分かれます。どれも必要ですが、「入院の電話が来た日」に必要な情報がまとまっていないことも多い。

本書は、短期→中期→長期の戦略で、時系列に沿って必要な論点を並べます。入院手続きの保証人や同意書、退院時ケアカンファレンス、要介護認定、ケアマネ、住宅改修、介護休業、成年後見や家族信託まで、現実の流れに沿ってつながる。ここが類書との差です。

一方で、個別の制度をさらに深く調べたい場合は、自治体の資料や専門家の解説が必要になります。本書は、迷子にならないための全体地図として優秀だと思います。

こんな人におすすめ

  • 親の入院や介護が現実になり、「何から手を付ければいいか」分からない人
  • 介護離職を避けつつ、制度とサービスを使いながら支えたい人
  • 家族内のお金や役割分担のトラブルを、先回りして減らしたい人

感想

この本は、優しい本ではありません。現実は甘くない、と最初に示します。でも、その冷たさがあるから、読者は行動できます。介護は「知らない」ことで損をします。制度が使えない、費用が膨らむ、家族関係が壊れる。そうした事故を、情報と手順で減らすのが本書の役割だと感じました。

特に良いのは、入院直後の手続きから、退院後のサービス選び、仕事との両立、お金、施設まで、同じ一冊の中でつながることです。突然の出来事に対して、地図とチェックリストを渡してくれる。まさに「親が倒れた」日に役立つ一冊です。

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    大手出版社で書籍編集を10年経験後、独立してブロガーとして活動。科学論文と書籍を融合させた知識発信で注目を集める。
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    佐々木 健太

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