レビュー
概要
人体を立体的に捉えるための基本から応用までを丁寧に描いたデッサン教本。骨格の理解を土台に、筋肉・脂肪・皮膚の層を意識した「層描き」手法を提案し、動きのあるポーズや静止した姿勢をどのように丁寧に書き進めるかを図と写真で示す。構図設計・光の角度、陰影のつけ方に加えて、人体の質感を出すためのクロッキーやトーンの使い分けも盛り込む。
読みどころ
・第1部では骨格の太さ、関節の伸び方などを立体ブロックで解説。平面に描く際の奥行き感を得るため、遠近法のグリッドと人体を重ね、透視図法に沿って回転させながら描く手順を段階的に示す。 ・第2部では筋肉の収縮と伸張を意識した描き方を紹介。運動中のシーンでは、筋肉の張力に応じて線のテンションを変えるよう指導し、人体の動きの核を捉えるために3つのキーノード(胸郭・骨盤・膝)を組み合わせたラフスケッチを推奨。 ・後半では光源と陰影の相互作用を解説。太陽光・室内灯・スポットライトそれぞれの方向性に対して、ハイライトとシャドウの境界を描くスティップリングやハッチングの手法が紹介される。
類書との比較
『人体の描き方』(玄光社)や『究極のデッサン術』(ボーンデジタル)は骨格・筋肉の理解をベースにするが、著者自身のワークフローでは質感と陰影に特に重きを置き、「層描き」→「クロッキー」→「陰影」というアプローチが一貫している。『人物の構造を捉える』(マール社)が形状の定義に重心を置くのに対し、本書は光と素材の質感をともに追う点で差別化される。
こんな人におすすめ
人物・イラストレーター、マンガ家、アニメーター、人体デッサンの基本を体系的に学びたい芸術系学生。逆に、単にゆるいスケッチを楽しむだけの人にはステップが多く感じられるかもしれないが、自分でも実用的な人体設定を持ちたい人にはリファレンスとして最適。
感想
層を重ねて描いていくという発想が慣れるまでは手間に感じたが、描き進めるほどに質感を表現する手応えが得られ、完成度が喜びに変わった。光源について細かく考えるセクションを読むとキャラクターの肌に命が宿るように感じられ、次の作品にぜひ取り入れたいと感じた。同時に手首のスケッチを繰り返すことで筋肉の動きの違いを認識できるようになり、どんなポーズにも説得力が出せるようになる。