レビュー
概要
形態学を基盤にしながら人体を描くための新しいアプローチを示したデッサン書。筋肉と骨格の関係を解剖学的に整理した上で、透視図法と陰影を組み合わせ「かたちのフォルムそのもの」を捉える令垣。各部位の特徴を“モルフォ”(形態)として分解し、3段階のフォーカス(大域→中域→局所)で詳細に描き進めていく。
読みどころ
・第一章では、頭部・肩・骨盤という“3つの軸”を軸に、身体の連動を「円の弧」と「直線」で描く。筋肉の張りを解剖図で確認しつつ、実際のポーズを透明なボディでトレースすることで、写実を超えてフォルムを構築する考え方が提示される。 ・第二章は陰影の構築。光源をひとつに定め、交差するラインを取り入れながら面と体積を追い、材質感を表現する。アスリートと一般的な体型の違いを同時に掲載し、「筋肉の付き方」「皮膚の伸び方」を数値とデッサンで比較する。 ・第三章では、動く体を捉えるために形態を一定時間で分割し、各フレームで「モルフォの変化」を記録する技法を紹介。急激な動きに対しても、モーションの中で最も重要な形を抽出することで視覚的な安定感を保てるテクニックが展開。
類書との比較
『人体デッサンの描き方』(グラフィック社)は骨格構造の丁寧な解説に強みがあるが、本書は形態の変化を中心に置き、立体の変化そのものを記録する点で差異がある。『アトリエで学ぶ人物画』(美術出版社)よりも科学的定義を用い、視覚と数値をリンクさせるため、芸術と科学の間を行き来するプロットに向いている。
こんな人におすすめ
人体のリアルなボリュームを形態的に捉えたいイラストレーター、アートディレクター、クリエイター。スピード感あるアクション表現をする人にも、正確な体積感を保つ助けになる。逆に単なる線画の美しさを追う人にはやや分析的すぎるかもしれないが、動きのある演出に正確さを求める人には心強い。
感想
「モルフォ」という視点を持ったまま、スケッチを続けると体の動きが自然に分節され、どこを強調すべきかが明確になった。動的なポーズの描写でフォルムの変化を追うところは、漫画やアニメーション用のキャラ設計にも役立つ。形を科学的に捉えることで、絵に説得力を持たせるための手がかりが得られる一冊だった。