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レビュー

概要

『増補 アニメーターズ・サバイバル・キット』は、アニメーションを学ぶ人が一度は通る定番の教本です。歩き方、走り方、重さ、間、演技、タイミングといった、動きを生きたものにする基本が膨大な図と説明でまとめられています。タイトルに「サバイバル」とある通り、単なる理論書ではなく、現場で本当に困るところをどう考えるかに強い本です。

本書の価値は、絵がうまいかどうか以前に、「なぜその動きが不自然に見えるのか」を言葉と図で分解してくれる点にあります。アニメーションは感覚の仕事に見えます。けれど実際には重心、軌道、間の取り方、前後のつながりなど、考えるべき要素が多い。本書はそれを経験談ではなく、再現可能な知識として整理してくれます。手描きと3Dの両方に通じる土台が詰まっています。

読みどころ

いちばんの読みどころは、歩きや走りといった基本動作の解説の深さです。何気ない動きほどごまかしが効かない、というアニメーションの難しさがよくわかります。足が地面から離れる順番、腰の上下、体重移動、止まる時の余韻まで、細かいのに「なるほど」と納得できる。初心者はもちろん、ある程度描ける人ほど痛感する種類の説明です。

また、本書は単に正解を並べるのではなく、「なぜそう見えるのか」を考えさせます。たとえば、速く見せたい時にコマを詰めればいいわけではないし、力強さを出したい時に大きく動かせば済むわけでもない。観客の目が何を拾うのか、どこで重さや感情を感じるのかを前提にしているので、ただのハウツー集よりずっと応用が効きます。

増補版としてありがたいのは、古典的な手描きの原則が、今の制作環境でも十分通用する形で読めることです。ソフトや手法は変わっても、動きの説得力を作る原理は大きく変わりません。だから、デジタル中心の人が読んでも古びた感じがしません。むしろ、便利な機能に頼りすぎて見失いやすい基本へ戻してくれる本です。

類書との比較

アニメーションの入門書は他にもありますが、本書は「一冊で原則を徹底的に叩き込む」方向の強さがあります。用語の定義だけを知る本ではなく、実際に動きを作る時の判断に踏み込んでくるので、読むだけでは終わりません。何度も机に戻して、描きながら参照するタイプの本です。

また、デザインや演出の本に比べると、本書はもっと身体に近いところを扱います。どう見せるか以前に、どう動けば納得感が出るか。その地味だけれど決定的な部分を掘る本なので、派手な演出論より先に読む価値があります。基礎の本でありながら、長く手元に残る理由はそこにあります。

こんな人におすすめ

  • アニメーションを基礎から学び直したい人
  • 手描き・3Dを問わず、動きの説得力を高めたい人
  • 歩きや走りなど基本動作をしっかり理解したい人
  • 入門書の次に、もう一段深い教本を探している人

感想

この本を読むと、アニメーションは「絵をたくさん動かすこと」ではなく、「観客に動きを信じてもらうこと」なのだとよくわかります。たとえば歩きひとつ取っても、どこに体重が乗り、どこで次の一歩へつながるのかを意識するだけで印象が変わる。その差をここまで丁寧に言語化してくれる本は貴重です。

もう1つ良いのは、著者の熱量が技法の説明から伝わってくることです。上手く見せるための小手先ではなく、「動きには理由がある」という姿勢が一貫しています。だから情報量は多いのに、読んでいて圧倒されるだけでは終わりません。地道に練習する意味を納得させてくれる、長く使える一冊でした。

実際、この本は一読して終わるタイプではありません。歩きの章を読んで描き直し、次に走りの章でまた戻る、という使い方になります。その反復に耐えるだけの情報密度があるので、教本としての寿命が長い。アニメーションを本気で学ぶ人の机に残り続ける理由がよくわかりました。

難しい本ではありますが、難解な本ではありません。図を見て試し、また戻るという読み方ができるので、手を動かす人ほど理解が深まります。基礎を飛ばさずに積みたい人にとって、かなり頼もしい教本です。

派手なテクニック本を期待すると地味に見えるかもしれません。けれど、その地味な基礎こそが動きの説得力を支えると実感できます。長く使う教本としての価値が高い一冊でした。授業や独学で迷った時の基準点としても使いやすいです。何度戻っても学び直しが効きます。制作の手元に置いておきたい本です。定番である理由がよくわかります。

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    佐々木 健太

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