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レビュー

「空き家を買う前」から始める、セルフリノベ入門の決定版

『空き家改修の教科書』は、空き家を自分で直して住むための入門書です。DIYの本は多いです。ただ、多くは「直し方」から入ります。本書は順番が違います。第1章が「空き家改修の前に知っておくこと」から始まり、空き家の見極め、費用の比較、地方移住のステップ、見学時のチェック、建築確認申請が必要なケースまで押さえます。つまり、買う前に失敗を減らす本です。ここが本書の価値だと感じました。

内容紹介にもある通り、写真とイラストの図解が豊富です。111ページ程度の薄さでも、情報が詰まっています。さらに、改修事例集と座談会まで入ります。机上の理屈だけで終わらせず、「実際にやった人の目線」で補強しているのが良いです。

第1章が効く。空き家は「見た目」ではなく「手続きと構造」で詰む

第1章には、空き家の常識・非常識、改修費用の徹底比較、空き家探し、見学チェック、チェックリスト、建築確認申請の話が並びます。ここを読むと、空き家改修が「DIYの腕前」だけでは成立しないと分かります。手続きや法規、相談先、図面起こしが先に要ります。これを飛ばすと、改修途中で止まります。

特に便利なのが「空き家チェックリスト」です。現場見学はテンションが上がります。見落としが起きます。チェックリストがあると、見落としを減らせます。結果的に、購入後の後悔が減ります。

第2章は現場の工程を追う。道具から解体、構造、設備まで届く

第2章は「さぁ、空き家の現場に行こう!」です。工具、資材調達、相談、計画づくり、解体、水平・垂直、墨付けと刻み、継ぎ手(蟻継ぎ、鎌蟻継ぎ、追掛け継ぎ)、屋根工事、基礎沈下への対処、腐った柱や桁、土壁、板壁、床、フローリングまで出ます。さらに内壁、珪藻土や漆喰、天井、建具、窓の新設、配管、キッチン、トイレ(下水処理と便器取り付け)、風呂、電気工事まで並びます。

ここまで来ると、DIYというよりプロジェクト管理です。本書が良いのは、工程が見えることです。工程が見えると「今は何を決める段階か」が分かります。材料の手配も、協力者の相談も、段取りを組みやすくなります。

「水平・垂直」と「構造の補修」を先に置くのが現実的

DIYの本は、仕上げ材に目が行きがちです。珪藻土、漆喰、フローリング。見た目が変わるので楽しい。ただ、空き家改修は見た目の前に土台です。本書は、解体のあとに水平・垂直を確認し、基礎沈下への対処や腐った柱、桁の補修へ進めます。順番が良い。順番が良いと、後戻りが減ります。

継ぎ手に蟻継ぎや追掛け継ぎが出てくるのも、入門書としては珍しいです。ここがあると、古民家の構造が「なんとなく」から「部材の接続」へ変わります。理解が上がると、専門家へ相談する場面でも会話は通ります。DIYで全部をやりきれなくても、判断の質は上がります。そこが大きいです。

トイレと風呂が具体的。下水処理まで触れるのは助かる

水回りは、空き家改修で一番悩みがちです。トイレは下水処理の話から入り、便器取り付けまで分けて扱います。設備は失敗すると生活が止まります。だからこそ、工程と注意点を先に知る価値があります。風呂も「どうするか」という問いから入るので、正解を押しつけない。地域や予算に合わせて選べる構えになっています。

事例集が現実を教える。こだわりと妥協の落とし所が見える

第3章はこだわりの改修事例集です。屋根を自分たちで改修して土間リビングで外とつながる家、ワークスペースと住まいを兼ねた古民家、地域になじみながら仲間と楽しむ改修などが並びます。事例は、モチベーションの燃料になります。同時に「ここは自分ではやらない」という線引きの材料にもなります。

座談会が入っているのも良いです。改修は、正解が1つではありません。予算、時間、家族、地域との関係で変わります。複数人の視点があると、判断の幅が広がります。

著者略歴が示す「7年かけて直した」時間感覚がリアル

著者略歴では、設計事務所退職後に移住し、7年かけて古民家を改修したと紹介されています。これが大事です。空き家改修は、短期で終わると思うと苦しくなります。時間がかかる前提だと、楽になります。暮らしながら直す。学びながら直す。仲間を増やしながら直す。本書の語り口は、この時間感覚と相性が良いと感じました。

また、NPO法人結びめが関わっている点も示唆的です。空き家改修は、個人だけでは詰みやすい。地元の工務店や設計士のネットワークがあると、判断の幅が広がります。本書の随所に「相談しよう」と書かれるのは、その現実があるからだと思います。

類書比較:DIYのテク本より「購入前の見極め」と「工程設計」に強い

DIYの類書は、塗装や床張りなど単発の技術に強いことが多いです。本書も技術は扱います。ただ、それ以上に「空き家の見極め」「建築確認」「図面」「相談」「工程」という土台が厚い。古民家や空き家は、見た目がきれいでも構造や設備で苦しみます。本書はそこを先に言います。

さらに、地方移住のステップや地域との関わりにも触れます。改修は家の中だけで完結しません。資材、職人、行政、近隣とつながります。その前提がある入門書は貴重です。

こんな人におすすめ

  • 空き家を買ってDIYしたいが、何から始めればよいか分からない人
  • 見学のときに、見るべきポイントを整理したい人
  • 改修の全工程を把握し、段取りを組めるようになりたい人

空き家改修は、夢と現実が近い分だけ、失敗も起きやすいです。本書はその失敗を、順番とチェックで減らしてくれる教科書でした。

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    佐々木 健太

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