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レビュー

概要

『ゆるFIRE 億万長者になりたいわけじゃない私たちの投資生活』は、流行りのFIREを「フルリタイア前提」ではなく、生活費を“半分は運用益、半分は好きな仕事”でまかなう「ゆるFIRE(サイドFIRE)」として再構成した本です。完全FIREに比べて必要資産が下がるぶん、再現性を上げることに力点があります。

著者は、自分を「高収入でも投資の天才でもない」と位置づけつつ、元・年収300万円の事務職OLから、30代前半で資産3000万円をつくって正社員を卒業した経験をベースに話を進めます。さらに、2018年末からサイドFIRE生活に入り、2021年10月時点で個人総資産が6000万円を突破した、という“時間軸のある実例”が、読み手の腹落ちを助けます。

読みどころ

1) FIREを「生活の設計図」に落とし込む:稼ぐ×貯める×増やす

FIREの本は、投資戦略の話に寄りすぎると生活の現実感が薄れ、節約の話に寄りすぎると息が詰まります。本書は「稼ぐ」「貯める」「増やす」を王道として並べ、どれか一発で解決しようとしません。だから、読後に残るのは“投資のテクニック”というより、“生活の組み方”です。

特に「生活費の半分を運用利益で、残り半分を好きな仕事で」という前提は、心理的な負担を下げます。完全リタイアがゴールだと、途中はずっと我慢になりがちですが、サイドFIREなら“途中からラクになる”構造を作りやすい。目標が現実の時間感覚に落ちてきます。

著者の家庭は家計が完全折半で、夫は稼いだ分を都度使っていく浪費家だと明かされます。二人で足並みをそろえて突き進む話ではなく、現実にありがちなズレを抱えたまま前へ進む。その前提があるので、具体策が机上の空論に見えにくいです。

2) 2.5%ルールという「安全側の目安」

本書では、ゆるFIREの実現に向けた考え方として「2.5%ルール」が出てきます。細かな数字の正誤を断定するよりも、ここで大事なのは“無理のない設計に倒す”という姿勢だと感じました。投資の世界は、派手な成功談ほど例外が混ざります。だからこそ、最初から安全側の仮定を置いて計画する考え方は、初心者の防波堤になります。

もちろん、相場には波があり、未来は不確実です。本書を読んで同じ数字をなぞるというより、自分の生活費・働き方・リスク許容度に合わせて設計を見直す材料として捉えるのが良いと思います。

3) タイプ別の戦い方がある:投資の“性格適性”を前提にする

面白いのは、投資方法を一枚岩にせず、タイプ別に提案しているところです。例として、

  • 稼ぐのは苦手で、貯めるのは得意な「まったり貯め上手さん」
  • 稼ぐのは得意で、貯めるのは苦手な「キビキビ稼ぎ上手さん」
  • 稼ぐも貯めるも両方頑張れる「すっきりムダなしさん」

のように、生活のクセから入り、取りうる戦略を変えます。投資は理屈だけでなく、継続が勝負です。自分の性格と衝突する方法は続かない。その現実を前提にしているのが、実用書としての強さだと感じました。

4) 章立てが「ロードマップ」になっている

構成は大きく5段階です。

  • ゆるFIREの基本
  • 本業×副業で稼ぐ
  • ミニマルライフで貯める
  • 投資信託で増やす
  • いよいよゆるFIRE

順番が分かりやすいので、「いま自分はどの章を厚くやるべきか」を判断しやすい。投資の前に家計と働き方が来るのも、地に足がついています。

類書との比較

FIRE本の中には、高収入を前提に貯蓄率7〜8割を目指すような、かなりハードなモデルもあります。そうした本は最短距離を示してくれますが、再現できない人にとっては“眺めて終わる理想論”になりがちです。

本書はそこを割り切って、完全FIREより難易度を下げた「ゆるFIRE」を中心に据えます。投資だけでなく、副業・ミニマルライフ・家計の管理がセットで語られ、さらにタイプ別に戦略が分岐するので、現実の生活に当てはめやすい。極端な我慢より、長く続く設計を取りたい人に向く本です。

こんな人におすすめ

  • FIREに興味はあるが、完全リタイアは現実的に感じない人
  • 投資を始めたいが、まず生活の設計から固めたい人
  • 副業やミニマルライフも含めて、全体像で考えたい人

感想

この本を読んで「ゆるFIRE」は、投資の話というより、人生の運転方法を変える話だと感じました。無理にアクセルを踏み続けるのではなく、燃費の良い走り方に変え、途中で休める仕組みを作る。そこに投資が組み込まれているだけです。

数字の誘惑に振り回されやすい分野だからこそ、派手さより現実味を選ぶ視点は貴重です。まずは自分の生活費を把握し、次に“稼ぐ・貯める・増やす”をどう配分するかを考える。その入口に置く本として、良いバランスだと思いました。

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    佐々木 健太

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