レビュー
概要
名医として知られる泌尿器科医が、早期前立腺がんの治療において「負担が少ない」「短時間」「機能を温存」という三つのキーワードを軸に、最新の手術・局所療法を解説する一冊。前立腺がんは進行しても致命率が低いため、生活の質を落とさずに治療することが重視されているが、その実現にはPSA検査のアラートから疼痛の管理、術後尿失禁や性機能維持のガイドラインまでを横断する視点が必要。本書は、基礎知識とエビデンスを織り交ぜながら、名医が実際に手がけている「前立腺がん標的局所療法(フォーカルセラピー)」を含む治療アプローチを詳細に紹介する。
読みどころ
- 第1章では、患者の不安が増幅する検査プロセスを丁寧に描写。PSAのグレーゾーンやMRI所見の読解を図解しながら、結果が出たときどのように医師と対話して次のステップを決めるかをシミュレーション形式で示す。
- 第3章では、手術の負担を減らすためのロボット支援のみではなく、局所療法の導入と、腹圧を高めずに切開せずにエネルギー照射するフォーカルセラピーがどう適応になるかを解説。リスクの低い患者を見極めるために、「リンパ節転移の可能性」「密度の高い腫瘍」などを表で整理し、適応基準を可視化している。
- 終盤には、「術後機能温存」への工夫があり、排尿訓練や性機能維持のためのリハビリプログラムを医療チームの言葉で紹介。定型リハビリと並行して精神科的なサポートを組み込む設計が記されており、患者のQOL評価を録るシートも添付されている。
類書との比較
『前立腺がん 標準治療ガイド』『前立腺がんのすべて』が主に術式や放射線の選択に力点を置く一方で、本書は負担をいかに軽減するか、機能をどう守るかに特化している。類書がデータと手順を並べることが多いのに対し、こちらは患者の視点に立った設問(「この治療は1週間で日常に戻れるか」「性機能への影響はどう説明されていたか」)を章末でまとめ、実際の面談でどう使うかまでフレームを与える。フォーカルセラピーの実践例を載せた点も、従来の教科書にはなく先進的で、選択肢の幅が明確に提示されている。
こんな人におすすめ
- PSAの異常値を指摘され、慎重に治療オプションを比較したい男性。
- 手術や放射線で排尿/性機能を失うリスクを心配し、代替療法を探している人。
- 泌尿器科スタッフや看護師で、患者に優しい説明を行いたい医療者。
感想
フォーカルセラピーを導入した患者の体験談に触れると、「短時間で終わる」「家に帰ってすぐトイレに行ける」という具体的な変化が生きた言葉として響いた。治療選択のパートでは、自分の価値観(機能温存>根治)と医師の提案を並べて表にするワークがあり、判断に必要な情報が整理できた。術後の排尿・性機能のリハビリの説明にも、看護師が寄り添って実施するストーリーが挟まれていて、患者と医療チームの信頼を育む姿勢が伝わった。不安を抱えた患者を安心させる対話ツールとしても使える構成になっていた。