『いないいないばあ (松谷みよ子 あかちゃんの本)』レビュー
著者: 松谷 みよ子 / 瀬川 康男
出版社: 童心社
¥873 Kindle価格
著者: 松谷 みよ子 / 瀬川 康男
出版社: 童心社
¥873 Kindle価格
『いないいないばあ』は、赤ちゃん向け絵本の定番として長く読み継がれてきた1冊です。紹介文には「赤ちゃんがほんとうに笑う」という読者の声があり、「あかちゃんだからこそ美しい日本語と最高の絵を」という思いから、日本初の本格的なあかちゃん絵本として生まれたと説明されています。
内容はとてもシンプルで、「いないいない、ばあ」という繰り返しの中で、にゃあにゃや、くまちゃんなどが登場します。言葉としては短いのに、赤ちゃんの反応が強いのは、遊びの構造が身体感覚に合っているからだと思います。隠れて、出てくる。予測できるのに、毎回うれしい。赤ちゃんの世界の「分かる」と「驚く」のちょうど良い間を突く遊びです。
この絵本は、親が読み聞かせるというより、親子で一緒に遊ぶ絵本です。ページをめくる動作が、まさに「いないいない」のための仕掛けになります。読んでいる大人も、つい声色が変わります。すると赤ちゃんが反応します。反応が返ると、大人も楽しくなります。
この相互作用があるので、読み聞かせが得意ではない人でも成立します。文章をうまく読もうとしなくていい。テンポだけを守ればいい。子育ての現場で続く本は、こういう「成功しやすさ」を持っています。
赤ちゃん向けの絵本は、長いストーリーよりも、短く繰り返せるほうが強いです。疲れている日でも読める。外出前でも読める。寝る前の少しの時間でも読める。短いことは、継続の条件です。
さらに、同じ本を何度も読むことは、赤ちゃんの学習そのものです。繰り返すほど安心になります。安心があると、次の挑戦ができます。この本は、そういう土台を作る1冊だと感じました。
赤ちゃん絵本の類書には、擬音やリズムで引っ張るタイプがあります。たとえば『もこ もこもこ』は言葉の響きと絵の変化で楽しむ本です。『がたん ごとん がたん ごとん』のように音の反復で心地よさを作る本もあります。
それらと比べると『いないいないばあ』は、親子の対話が主役です。読み手が「ばあ!」と言う瞬間、赤ちゃんの笑いが返ってくる。返ってきた笑いが、次のページをめくる力になる。この往復が強いです。
また、『だるまさんが』のようにキャラクターの動きで笑いを取る本とも違い、本書は遊びの型がとても普遍的です。顔を隠して、出す。人間のコミュニケーションの原型に近いところを扱っているので、世代を越えて残りやすいのだと思います。
初めての絵本として何を選ぶか迷った時、安心して手に取れる定番です。家の中で赤ちゃんが笑う体験を作りたい人におすすめできます。
この絵本は短いので、同じ本でも成長に合わせて読み方を変えられます。
紹介文にあるように、この本は「母と子の伝承あそび」を絵本の形に再創造したものです。だから、読み聞かせが上手いかどうかより、親子で遊べるかどうかが大切になります。忙しい日でも、30秒で1回「ばあ!」ができる。これが強いです。
この絵本を読んだあと、同じ型を現実の遊びに広げるとさらに楽になります。たとえば、タオルで顔を隠して「いないいない」。カーテンの陰に隠れて「ばあ」。ぬいぐるみで「いないいない」。絵本で学んだ型が、家庭の遊びのテンプレートになります。
遊びがテンプレート化されると、親側の負担も減ります。毎回新しいことを考えなくていい。決まった型があると、疲れている日ほど助かります。赤ちゃんにとっても、予測できる遊びは安心材料になります。
赤ちゃん絵本は好みが分かれます。 絵の濃さ、色づかい、擬音の多さ。 けれど『いないいないばあ』は、遊びの型は普遍的です。 そのため、好みの差は出にくいです。 プレゼントに選んでも失敗しにくい定番だと思います。
「はじめての1冊」を探している人、読み聞かせで気負いたくない人、赤ちゃんとのやり取りを増やしたい人に向いた絵本です。ページ数が短いぶん、家族みんなが参加しやすいのも魅力です。
紹介文でも触れられているとおり、言い回しが短く、声に出すと気持ち良いです。読み手が完璧に読もうとしなくても、赤ちゃんは音のリズムを受け取ります。テンポよく読む日もあれば、間を長くして期待を膨らませる日もある。そうやって同じ絵本を、毎日違う遊びにできます。