『ADHDといっしょに! 自分の強みがわかって自信がつく60の楽しいワ-ク (TOYOKAN BOOKS)』レビュー
出版社: 東洋館出版社
出版社: 東洋館出版社
『ADHDといっしょに! 自分の強みがわかって自信がつく60の楽しいワーク』は、ADHDのある小学生が、自分の特性と付き合いながら成長するためのワークブックです。計画を立てる、忘れない、頼みや思いを伝える、集中する、感情の爆発に備える、落ち着く。こうしたテーマを、60のワークで一歩ずつ学んでいきます。
この本の土台にあるのは、ストレングス・ベースド・アプローチです。特性を弱点として矯正するのではなく、強みに焦点を当て、自己イメージを守りながら技能を増やす方向です。ADHDの子どもは、叱られる経験が積み上がりやすいです。その結果、「どうせ自分は無理」という前提が育ちます。本書は、その前提をゆるめる作りになっています。
第1部は「ADHDと自分」です。自分のADHDを知り、得意と苦手を整理します。ここが最初に来るのが重要です。対策だけを学ぶと、子どもは「直される側」になります。自己理解があると、「工夫する側」へ移れます。
第2部は「ADHDの言いなりには、ならない!」で、イライラや怒りの大爆発への備え、注意と集中、衝動を抑えて賢く選択する、といった技能が出てきます。第3部は、ルーティン、コミュニケーション、計画といった生活の実装へ進みます。つまり、感情と集中の土台を作ってから、日常の仕組み化へ進む順番です。
60のワークがあると、全部やらなきゃと思ってしまいます。しかし本書自体が、効果があったワークに厳選して載せていると説明します。だから使い方も、厳選で良いです。
最初は、子どもが困っていることを1つ選びます。忘れ物、衝動、怒り、友だちとの行き違い。次に、そのテーマのワークをいくつか試し、効いたものだけを「うちのやり方」として残します。残したワークは、定期的に振り返ります。ワークブックを、家庭の取扱説明書に変えるイメージです。
この本は、集中が続きにくい子どもに合わせ、短い単位で進めやすいのが利点です。家庭で回すなら、週に2回、10分だけでも十分です。終わらせるより、続けることを優先します。
おすすめは、次の順番です。
できたことを言葉にするのは、強みを育てるためです。ワークは課題を直す道具でもありますが、同時に自己理解の道具です。自己理解が進むと、支援の方向も具体になります。
先生が使う場合は、全部を配布する必要はありません。注意と集中のワークだけを抜き出す。ルーティンのワークだけを家庭と共有する。そうした使い方でも価値があります。
本書には、保護者や先生にとっても学びになる、といった趣旨の説明があります。ワークには意図や進め方が添えられており、子どもへの声かけや環境調整のヒントになります。
ADHD支援は、子どもに努力を求めるほど苦しくなります。必要なのは、道具と順番です。忘れやすいなら、持ち物を減らし、置き場を固定する。衝動が強いなら、選択肢を減らし、先に決める。怒りが爆発しやすいなら、落ち着く手順を前もって練習する。本書のワークは、こうした「扱いやすくする」方向に寄っています。
そして大人側も、成功の基準を変えやすくなります。今日はワークが1つできた。気持ちを言葉にできた。助けを求められた。これらは立派な前進です。小さな成功を積み上げると、子どもは自分の強みに気づき、自信が育ちます。
ADHDのワークブックには、大人向けのものもあります。たとえば『ADHDタイプの大人のための時間管理ワークブック』や『大人のADHDと不安症ワークブック』は、時間管理や不安への対処が中心です。大人は、仕事の段取りや感情の調整を「結果責任」で迫られやすいので、その設計が有効です。
一方で本書は、子どもが自分の強みを理解し、自信を作りながら技能を増やすことに重心があります。同じADHDでも、子どもの時期は自己像が育つタイミングです。だから、強みに焦点を当てるアプローチの価値が大きいです。
また、女性の生活場面で困りごとを整理するタイプの本として『わたし、ADHDガール。恋と仕事で困ってます。』のような本もあります。こちらは恋愛や仕事の具体場面に寄せた整理が強みです。本書は、子どもが自分の特性と付き合うための練習帳という位置づけで、役割が異なります。
ADHDの子どもが「自分はダメだ」と思い始めているとき、親や先生が関わり方に迷っているとき、本書は助けになります。ワークを通じて、子どもが自分の強みを言語化できるようになると、サポートの方向も定まります。結果として、本人も周囲もラクになります。