レビュー
概要
神経科学の立場から記憶と物語(ナラティブ)のつながりを分析し、「記憶」そのものが外界との対話で創られる過程であることを明らかにする。著者は脳科学者として実験データと臨床事例を縦横に使い、記憶の中身をどう言葉や物語が編んでいるかを丁寧に解説する。
読みどころ
- 第1章は記憶の基礎の再定義で、エピソード記憶、意味記憶、手続き記憶を区別しながら、「ナラティブ」として再構築される過程を描く。
- 第3章では記憶の再生時に伴う誤情報の混入と、その予防方法を紹介。特に証言の場面で記憶がどう変質するかを示し、信頼性の高い記録法を提案。
- 第5章以降は記憶の再形成を促す実践、メモ、リフレクションのワーク。
類書との比較
『脳はなにを記憶するのか』が脳のメカニズムを中心に解説するのに対し、本書は記憶の現象を物語(ナラティブ)で捉え直し、体験の構造を語る。前者が神経科学の仕組みを詳述するなら、本書は記憶を社会的に再構築する方法を提供する。
こんな人におすすめ
・記憶に興味がある人。
・記録する仕事をする人。
・記憶と語りをつなげたい人。
感想
記憶を「ただの保管庫」ではなく、語ることで起きる再生と再構築のプロセスとして捉えることで、日々書き留める習慣が鮮やかになった。気づかなかった記憶のトーンがくっきりして、自分の人生が少し物語に近づいた気がした。