レビュー
概要
「日常のついで」にヨガのポーズを組み込み、50代女性が抱える自律神経の乱れや代謝低下、腰痛や五十肩といった不快を、難しい練習ではなく普段の動きの中でほどよく整えることを目指す本。著者は「50代女性は欲張り」と言い切り、努力や出費に縛られない「ついでヨガ」こそ現代の忙しい暮らしにマッチすると説く。寝ながら、座って、立って、椅子に座った状態など生活のシーン別に「ついで」のポーズを30点以上紹介し、ヨガの専門用語を使わずに「どこでどんな動きを意識すればいいか」を具体的に示している。すべての動きの説明には「ついでに一声」「ついでの深呼吸」といった声かけ例が添えられ、ママ友と声を合わせて実践したり、夫婦で呼吸を共有したりすることでリズムを育てる工夫がされている。
読みどころ
- 場面別のポーズ分類:睡眠前の布団の中、テレビを見ながら、掃除の合間、歩くついでにといったふし目ごとに「どのポーズをするか」を細かく区分。たとえば「寝ころんだついでにワニのポーズ」「布団のついでに胎児のポーズ」「立ったついでに月のポーズ」といった具合に、日常動作と組み合わせた名称で提示するためイメージしやすい。
- 不快別の声かけと効果:「肩こり」「むくみ」「骨折予防」「尿漏れ」「冷えのぼせ」「代謝アップ」などのテーマに合わせ、ついでポーズの狙いを説明。繰り返し「ついで」という枠組みで導入することで、「できるかどうか」ではなく「忘れずに動く」ことに意識が向かう仕掛けが小気味良い。
- 「ついで」が持つ心理的効能:著者が繰り返すフレーズ「50代の女はラクする達人」や「ついでが得意」で、自分の暮らしに主導権があることを再認識させる。ポーズの合間に「自分の体を観察する」「その日の調子を見極める」といった内省を挟むことで、セルフチェックの習慣も芽生える。
- イラストとタイミングの工夫:ポーズが単なる一覧にならず、体重をかけた位置や呼吸のタイミング、熱を感じたときの調整方法まで補足されており、実践で見落としやすい部分をカバーする。イラストはやさしく線画で、50代の体と心をいたわるトーンが保たれている。
- 日常のかけらをつないでリズム化:たとえば「掃除→モップをかける→片足立ち」のように連続した動きを一つのセッションとして扱い、雑多な家事の中に「動きのリズム」を組み込む。これにより「ついで」の自然な流れで呼吸・姿勢・集中力が連動する。
- Columnで場面ごとの補足:各章の合間に挟まれるColumnでは、収納スペースをどう使うか、子どものモノの守り方、強力助っ人コマンドタブの活用法など小さなヒントが散りばめられている。ページをめくるごとに「今日のついで」に使える小ワザが一つずつ増えていくため、読み終えてもノートを手元に置いておきたくなる。
類書との比較
『365日わたしのものさし』や『ついでヨガ』というフレーズを使う書籍もあるが、本書は50代に特化し、ついで動作を具体的に拾い上げる点で突き抜けている。高齢者向けのヨガ本が静的なポーズを並べるのに対し、本書は「熟年の生活動線そのもの」によるストーリーで、段階的に日常に組み込んでいくプロセスを描いている点がユニーク。日々の動きが多様でリズムの差がある世代でも、同じ真似をしろという指示ではなく「自分のついでを見つけて換える」柔軟性を持つ。
こんな人におすすめ
- ついで作業の感覚で体を動かしたい50代〜60代の女性
- 体調が安定せず「運動したいけれど時間がない」と感じている人
- 深堀真由美のやわらかな声かけを再現したい人
- ついでの呼吸リズムを使って気分の波を安定させたい人
- 生活動線のリズムを整えて、自律神経系の乱れを予防したい人
感想
- 「ついで」という言葉があるだけで、かえって肩の力が抜ける。単なる練習よりも、自分が「今やっていること」とつなげて体を動かす行為を肯定する視点が印象的。
- コマ割りされたイラストと文章のリズムが、ストレスで固くなった関節にやさしく届く感覚。立っていても座っていても、視点を変えて「ついで」を拾うというちょっとした遊び心もある。
- 目次を見るだけで「これなら続けられそう」とイメージが浮かぶ構成だと感じ、読むたびに自分の生活をスライスしているような気分になる。
- ついでの呼吸や声かけを繰り返すと、「儀式」のようにその瞬間が定着して、気分の揺れが穏やかになり、自律神経が整う感覚があった。