レビュー

「貯金していれば安心」が崩れた時代の、お金の基礎体力づくり

『小学生から知っておきたい 使い方 貯め方 増やし方 守り方 マンガでわかる お金の本』は、低金利時代に必要なお金の基礎を、子ども向けに整理し直す本です。内容紹介では、真面目に働き、ちゃんと貯金しても、お金が増えない社会になっていく、と前提を置いたうえで、これからの子どもに「お金の知識」が必須だと語られています。

ここで大事なのは、単に節約を教える本ではないことです。本書が掲げるのは「使う・貯める」だけではなく、「増やす」「守る」まで含めた4つの力です。低金利の環境では、貯めるだけで価値が増える期待を持ちにくい。だからこそ、増やす仕組みと危険な誘惑から身を守る視点もセットで必要になる。子ども向けにしては現実的なテーマ設定だと思います。

キャッシュレスの「お金の流れ」を最初に扱うのが今っぽい

内容紹介には、キャッシュレス払いのお金の流れから、投資の仕組み、景気・経済のことまで、マンガと身近な例でしっかり解説するとあります。現金のやりとりよりも、数字としてお金が動く場面のほうが先に来る子どもが増えている今、最初に「見えないお金」を扱うのは筋がいいです。

親の側は、この“見えない感覚”をつい避けたくなります。スマホ決済は便利ですが、支出の痛みが薄れやすい。ここを放置すると「使っている実感のない浪費」が習慣になります。本書の狙いは、キャッシュレスを否定することではなく、「見えないものを見えるようにする」方向にあると読み取れます。

「増やす」「守る」を子ども向けに言い換えると、こうなる

子どもに投資の話をすると、「ギャンブルでしょ」と返されることがあります。大人側も、投資=株だけ、という狭い理解で止まりがちです。本書は投資の仕組みを扱うと明言しているので、少なくとも「なぜ増えるのか/なぜ減るのか」の因果に触れられるはずです。

さらに「守り方」が入っているのが重要です。低金利時代は、儲け話の誘惑も増えます。内容紹介では危険な誘惑から守る力が不可欠だと言っています。これは詐欺や過剰な課金だけでなく、借金・分割・リボのように“今日の快楽を未来へ先送りする仕組み”への耐性を育てる、という意味でも効いてきます。

仮想通貨とクラウドファンディングまで触れる「アップデート感」

本書は、大人も実はよく分かっていない仮想通貨やクラウドファンディングまで網羅している、と紹介されています。ここがこの本の強みで、教科書的なお金の話で止まらず、子どもが実際に目にするニュースやサービスと接続できる。

仮想通貨を推奨するのではなく、「仕組みとしてこういうものがある」と理解しておくことが大切です。知らないものほど、怖いか、過信するか、どちらかに振れます。クラウドファンディングも同じで、応援と投資が混ざった独特の構造があります。子どものうちに「お金の流れ」と「リスク」をセットで見られると、将来の意思決定が変わるはずです。

親子で読むときのコツ:答え合わせではなく会話を増やす

この本を読むとき、親が“正解役”になりすぎないほうがいいと思いました。内容紹介の段階でも扱う範囲が広いので、親も分からないところが出ます。でも、それでいい。むしろ「分からないから一緒に調べる」が、そのまま金融リテラシーのトレーニングになります。

おすすめは、章の内容を生活の中の小さな実験に落とすことです。

  • キャッシュレスの支払い履歴を一緒に見て、何に使ったか分類してみる
  • おこづかいを「使う」「貯める」「増やす(目的貯金)」で分けてみる
  • ニュースで見た言葉(景気、金利、仮想通貨)を本の説明に戻って確認する

お金の本は、読むだけだとすぐ忘れます。でも「支払いの記録」「欲しいもの」「ニュース」と結びつくと、知識が生活に残ります。本書はその接続点を、マンガと身近な例で作ろうとしている。子ども向けでありながら、大人の思い込みもほどいてくれる一冊です。

景気や経済の話は「ニュースの単語」ではなく「暮らしの現象」から入る

内容紹介では、景気・経済のことまで扱うと明記されています。景気という言葉は抽象的ですが、子どもにとっての入口は具体です。たとえば「値段が上がった」「売り切れて買えない」「セールが増えた」など、暮らしの中の現象は景気とつながっています。

本書がマンガと身近な例で解説するとしているのは、この“接続”が重要だからだと思います。経済の話を難しくするのは、専門用語よりも「自分と関係ない」と感じる距離感です。キャッシュレスの流れから始めて、投資、景気へ進む構成は、距離感を縮めるための順番として合理的です。

「守り方」を現代の生活に当てはめると、誘惑は意外と身近にある

危険な誘惑から守る力が不可欠だ、という紹介文は、子ども向けの本としてかなり重要です。誘惑は、知らない人からの詐欺だけではありません。ゲームの課金、SNS経由の衝動買い、友達同士の“ノリ出費”、分割や後払いの気軽さ。いずれも、仕組みを知らないと負けやすいポイントです。

「増やす」より先に「守る」を教えたい家庭も多いはずです。その意味でも、本書は親子で「危ない話を怖がらずに言語化する」ための土台になります。仮想通貨やクラウドファンディングまで扱うとされているので、流行を追う目的というより、流行に飲み込まれないための基礎づくりとして読む価値がある一冊です。

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