『その幸運は偶然ではないんです!』レビュー
著者: J.D.クランボルツ / A.S.レヴィン / 花田 光世 / 大木 紀子 / 宮地 夕紀子
出版社: ダイヤモンド社
¥1,485 Kindle価格
著者: J.D.クランボルツ / A.S.レヴィン / 花田 光世 / 大木 紀子 / 宮地 夕紀子
出版社: ダイヤモンド社
¥1,485 Kindle価格
『その幸運は偶然ではないんです!』は、キャリアを「計画通りに決めるもの」と考える人ほど、読みながらハッとしやすい本です。内容紹介では、この本のターゲットは「普通の人たち」であり、「普通の人たち」がどうチャンスをものにして成功物語を構築できるのかが、この本の目指したところだと書かれています。
出版社コメントでは、将来のキャリアや人生の選択に悩みながら道を切り拓いた、ごく普通の人のケースを、心理学者であるキャリアカウンセラーが読み解きながら、変化の激しい時代における仕事とキャリアの新しい考え方を示す、と紹介されています。つまり、誰か特別な成功者を祭り上げるのではなく、転機の扱い方を学ぶ本です。
この本で強いのが、「みなさんには、今後一切キャリアに関する意思決定をしないでほしいのです」という著者のアドバイスです。かなり極端に聞こえます。
ただ、ここで言いたいのは「考えるな」という話ではありません。 むしろ、未来を1本の線に固定しすぎると、偶然のチャンスを取り逃がしやすい。そういう警告だと受け取れます。 変化が激しい時代は、最初の計画より途中で拾った縁が効くこともあります。 だから、その現実に合わせてキャリアの作り方を組み替える。これが本書の狙いだと思います。
出版社コメントのキーワードは「ほんの少しの勇気」です。キャリアの転機は大きな勝負に見えます。 でも実際は、小さな行動の積み重ねで形は変わります。
新しい役割を引き受ける。人に会う。頼まれた仕事をやってみる。興味がある領域に触れてみる。そうした一歩が、次の偶然を連れてきます。本書は、その一歩を肯定し、転機を「運」ではなく「行動」で扱えるようにする本だと思います。
このフレーズは、誤解されやすいです。転職や進路で何も決めない、という意味ではないと思います。むしろ、早い段階で「これしかない」に固めすぎない、という提案として読むと腑に落ちます。
キャリアの悩みは、決めた瞬間に消えるわけではありません。決めたあとも、環境が変われば迷いは出ます。だから「いまの一手」を積み重ねて、チャンスが来たときに掴める状態を作る。そういう時間の使い方へ視点を移すのが、本書の狙いだと感じました。
偶然はコントロールできません。でも、偶然が起きる“場”は増やせます。たとえば、次のような小さな行動です。
ここで重要なのは、大きな賭けをしないことです。生活が壊れるほどのリスクを取る必要はありません。ほんの少しの勇気で、行動の幅を広げる。その積み重ねが「偶然ではない幸運」を呼び込みやすくする、というメッセージが本書にはあります。
転機にいるときは、情報を集めるほど不安が増えやすいです。 その状態で決め打ちすると、ますます怖くなる。 本書の発想で効くのは、未来を確定させるのではなく、選択肢を増やす動きです。
たとえば、いまの仕事の延長線上でしか考えていないなら、違う領域の人に会う。いまの自分にできることしか見えていないなら、少し背伸びの依頼を受けてみる。こうした「扉を1枚だけ開ける」行動なら、リスクは小さく、得られる情報は大きいです。
キャリア本は、読み手を煽りすぎることがあります。早く決めろ、遅れるな、才能を見つけろ、と。
でも本書は「普通の人たち」が対象だと明言しています。だから、完璧な自己分析を前提にしない。最初から正解を引き当てる前提にも乗らない。そのぶん、焦りよりも「やれること」が増えやすいです。転機に直面している大学生や若手ビジネスパーソンに、勇気を与える書だと紹介されているのも納得です。
『その幸運は偶然ではないんです!』は、普通の人が転機を活かし、チャンスをものにしていく過程を、心理学者の視点で読み解くキャリア本です。 「キャリアの意思決定をしないでほしい」という痛烈な提案は、未来を固定しすぎず、偶然を拾える状態で動くための考え方だと感じます。 変化の激しい時代に、キャリアを“正解探し”ではなく“試しながら作るもの”へ切り替えたい人に合う一冊です。