レビュー
概要
心理学と行動経済学を横断しながら、日常の意思決定を歪める数多のバイアスを可視化する一冊。著者は取締役・研究者として多数の会議や組織変革を観察し、「99%のバイアスをまず認める」ことこそが合理的な判断の出発点だと説く。各章にワークシートをつけて、バイアスを自分ごと化する仕組みが取り入れられている。
読みどころ
- 第1章は「認知のゆがみ」に着目。確証バイアス、アンカリング、フレーミングといった定番を具体的な場面とともに解説し、会議や交渉でどのようにして自分がストーリーを作っているかを観察するワークを提供。客観的データと感覚を並列させず、感覚的なこだわりと数値をマッピングする。
- 第3章ではバイアスを避けるためのルール化を提示。採用面接や評価会議の前に、全員が同じ評価軸を持つ “共通テンプレート” を使うことでハロー効果や構造化の欠落を防ぐ。バイアスをメモに書き出すフォームや、簡易スコアカードを用いる工程が具体的に紹介されている。
- 第5章以降はチームとしてバイアスと向き合うための仕組み。ファシリテーションの切り口を持ち込み、反論・反射的な拒否・確信の過剰を誘発するフレーズを即座に書き換えることで、議論を開くための言語を豊富に示す。
類書との比較
『ファスト&スロー』がシステム1とシステム2の衝突を説明するのに対し、本書はその内面の仕組みを “99の形式” として構造化し、実際の行動に落とし込む。前者が理論的な理解に重きを置くなら、こちらは会議室でのバイアス対策チェックリストとしてすぐに使える点で差異がある。
こんな人におすすめ
・日常業務にバイアスが入っていると感じながらも、原因を言語化できない人。
・採用や昇進の場に関与するマネージャー。
・意思決定の質を確保したい経営チーム。
感想
「バイアスをまず認める」ことが、批判的思考の第一歩だと感じられる。実際にチェックリストを会議の冒頭に貼り、疑わしいバイアスを書き出すと、意図していない思い込みが自然と見えてきた。99%と大きな数字を掲げるが、章ごとのワークが小さな行動として使えるため、読後すぐに使える実用書という印象だった。