レビュー
概要
『マンションを買うなら60㎡にしなさい』は、マンション購入を「住まい選び」だけでなく「資産価値のある買い物」として考える本です。著者は不動産コンサルタントの後藤一仁。タイトルの60㎡は単なる好みではなく、価格、住み心地、将来の売りやすさや貸しやすさのバランスが取りやすい広さとして提示されます。
家を買う本というと、住宅ローンや内見のテクニックに寄りがちですが、本書が重視しているのは出口です。今の暮らしに合うかだけでなく、将来売却しやすいか、需要が残るか、資産価値を保ちやすいかまで考えます。自宅購入を感情だけで決めたくない人に向く本です。
読みどころ
読みどころの1つ目は、「なぜ60㎡なのか」を感覚ではなく需要の厚さで説明している点です。狭すぎると住みにくく、広すぎると総額が上がって買い手が限られる。その中間として、単身、DINKS、小さな子どもがいる家庭まで広く検討しやすい面積として60㎡を置いています。この視点は、住み心地と売却可能性を同時に考える上で分かりやすいです。
2つ目は、物件を選ぶときに「立地」「広さ」「価格」だけで終わらせないことです。本書では、管理状態、修繕積立金、周辺相場、将来の需要といった、買った後に効いてくる条件まで見ます。特に、資産価値が落ちにくい物件とは何かを、自宅用でも無視できない論点として扱っているのが実践的です。
3つ目は、自宅選びと賃貸の視点をつなげて考えられることです。将来転勤や住み替えの可能性があるなら、自分が気に入るかだけでなく、他人が借りたいと思うかも重要になります。こうした視点が入るので、自宅を「完全に消費財」として見なくなります。
また、マンション購入を背伸びの買い物にしないのも良いところです。広い方が偉い、高い方が安心という発想ではなく、無理なく持てて、将来も価値を残しやすいラインを探る本として読めます。住宅本でありながら、家計防衛の本でもあります。
類書との比較
住宅購入の入門書が手続きやローンの基礎に寄るのに対し、本書は「どんな物件を持つべきか」の判断軸に重心があります。買い方より、何を選ぶかで失敗しないための本と言えます。
不動産投資本ほど収益性一辺倒ではなく、自宅として住む人の事情も残しています。そのため、投資家向けというより、自宅を買うけれど資産価値も無視したくない人にちょうどいいです。
こんな人におすすめ
これからマンション購入を考える人、特に将来売却や住み替えの可能性がある人におすすめです。住み心地だけで物件を決めるのが不安な人には、かなり参考になります。
また、子どもの成長や転勤などで住まいが固定されない家庭にも向いています。今だけでなく、数年後も見据えて選びたい人向けの本です。
初めて不動産を買う人にも読みやすいです。専門用語を振りかざすより、「どんな物件だとあとで困りにくいか」という実感ベースで話が進むので、判断の軸を持ちやすくなります。
感想
この本を読んでよかったのは、マンション購入を「夢の実現」だけで考えなくなったことです。家は大きな買い物だからこそ、感情だけで選ぶと後で動きにくくなります。本書はその怖さを煽りすぎず、でも現実的な判断軸を与えてくれます。
60㎡という提案に必ずしも全員がそのまま乗る必要はありません。ただ、売りやすさ、貸しやすさ、家計とのバランスを同時に考える視点はかなり使えます。自宅購入を資産形成の一部として考えたい人には、読んで損のない一冊でした。
家は人生で何度も買い替えるものではないからこそ、最初にこういう視点を入れておく意味があります。住みたい気持ちと資産性を両立させたい人にとって、冷静さを取り戻させてくれる本でした。
広さに正解はなくても、判断の軸は持てます。本書はその軸を「将来の需要」という言葉で示してくれるので、内見のときに見るポイントがかなり変わるはずです。
自宅購入を一度きりの感情的イベントにせず、家計と資産の両面から考えるきっかけになる本でした。不動産を難しく感じる人にも入りやすい実務書だと思います。
買うか借りるかの議論に決着をつける本ではありませんが、少なくとも「買うならどう選ぶべきか」はかなり整理されます。住宅購入で後悔したくない人ほど、先に読んでおく意味がある本です。
数字と暮らしを両方見る目を持ちたい人に向いています。