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レビュー

概要

『おおきいツリー・ちいさいツリー』は、クリスマスの大きな木の先端が、切られては次の誰かの手に渡り、また少し切られて別の誰かを喜ばせるという、連鎖の物語です。ウィロビーさんのお屋敷に届いた立派すぎるツリーが天井につかえてしまい、執事のバクスターが先端を切る。するとその先端が、小間使いのアデレード、庭師、森の動物たちへと順に渡っていき、最後にはごく小さな存在にもぴったりの木になります。

筋立てはとても単純です。けれど、この単純さが強い。切って終わりではなく、切られた部分が次の誰かの喜びになる。大きいものが小さくなるたびに、幸福が減るのではなく増えていく。この発想が、読み終えたあとにじわっと残ります。子ども向けのクリスマス絵本として楽しいだけでなく、「分けること」「ちょうどよさ」「誰かの余りものが別の誰かの宝物になること」を自然に伝えてくれる本です。

絵本としての魅力は、くり返しのリズムにもあります。同じことが少しずつ形を変えて続くので、小さな子でも流れをつかみやすいです。そしてページをめくるたびに、「次は誰のところへ行くのかな」という期待が生まれます。読み聞かせに向いた絵本です。

読みどころ

1. くり返しの構造が、子どもにとって分かりやすい

この絵本のいちばんの強さは、物語の型がはっきりしていることです。大きすぎる、少し切る、次の人に渡る、また少し切る。この反復が続くことで、子どもは先を予想しながら楽しめます。次の展開を当てたくなる本は、読み聞かせの場で強いです。

また、同じパターンなのに退屈しないのは、受け取る相手が変わるからです。大きなお屋敷の中から個人の部屋へ、屋外へ、さらに動物たちの世界へと、スケールが小さくなりながら視点が広がっていきます。その流れが自然なので、物語に無理がありません。

2. 「余りもの」が価値に変わる感覚を教えてくれる

大人はつい、切り落とされた部分を“端材”のように見てしまいます。でもこの絵本では、その切れ端こそが次の誰かにとってのちょうどよい贈り物になります。この逆転がとてもいいです。

家庭や子育ての場面では、「大きいもの、立派なものが正解」と思い込みやすいことがあります。けれど、本書が伝えるのは別の感覚です。ある人には大きすぎるものでも、別の誰かにはぴったりです。子どもにとってこの感覚は大事で、比較や競争ではなく、合う大きさや自分にとってのうれしさを考えるきっかけになります。

3. クリスマス絵本でありながら、やさしい社会性がある

本書は宗教色やイベント感よりも、誰かから誰かへ喜びが受け渡される流れに重心があります。そのため、クリスマスの時期だけでなく、分け合うことや譲り合うことを考える絵本としても読めます。説教くさくないのに、読後には自然と「よかったね」が残る。この控えめな社会性が魅力です。

さらに、立場の違う人物や動物が同じ木を介してつながるのも印象的です。お金持ちの屋敷から使用人の部屋へ、さらに庭師の場所、森の小動物の巣へと喜びが順に届きます。その広がりが、短い絵本の中できれいに描かれています。

4. 絵と文のやわらかさが、冬の読み聞かせに合う

この絵本は、派手な事件や大きな感情の爆発がありません。そのぶん、冬の静かな空気に合います。部屋で毛布にくるまりながら読むと似合うタイプの本です。文章のリズムもやさしく、絵もあたたかいので、寝る前の読み聞かせにも向いています。

類書との比較

クリスマス絵本には、サンタやプレゼント、奇跡を前面に出すものが多いですが、本書は日常の延長にある喜びを描くタイプです。大がかりな魔法が起きるわけではなく、木の先端が順番に渡るだけ。それでも十分に幸福感があるのは、物語の設計がうまいからです。

また、探し絵や賑やかなイベント絵本と比べると、こちらは静かな反復を味わう本です。刺激の強い絵本のあとに読むと、むしろこの落ち着きが心地よく感じられます。読み聞かせでテンションを上げるというより、じんわり温めるタイプの良作です。

こんな人におすすめ

  • クリスマスの読み聞かせに、静かで温かい絵本を探している家庭
  • 子どもに「分けること」や「ちょうどよさ」を自然に伝えたい人
  • 反復のある物語が好きな幼児から低学年の子ども
  • 季節ものでも、毎年読み返しやすい古典的な絵本を選びたい人

感想

この本を読んでいちばん心に残ったのは、大きなものが小さくなるたびに幸せが広がっていくところでした。普通なら「切られて減っていく」と感じる場面が、ここでは「次の誰かにちょうどよくなる」こととして描かれます。この発想の転換が本当に美しいです。

親子で読むと、子どもはたいてい「次はだれのツリーになるの」と先を知りたがります。その反応が自然に出る構造なので、読み聞かせが会話になりやすい本です。読み終えたあとも、「大きいのがいいわけじゃないね」「ぴったりってうれしいね」と話を広げやすいです。

クリスマス絵本として有名なのも納得で、冬になるとまた開きたくなる力があります。派手さではなく、静かなやさしさで残る本でした。長く読み継がれてきた理由がよく分かる一冊です。

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    佐々木 健太

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