レビュー
概要
歴史上の人物が全員ねこになって登場する独特のユーモアで、小学生にも読みやすく天才的なナビゲートをする歴史漫画。日本の通史を一通り追う王道の構成ながら、直感的なコマ割りと「○○時代猫図鑑」といったビジュアル資料で、忙しい読者でも記憶に残るエピソードをリズムよく並べていく。実業之日本社のシリーズとして2014年に刊行されたこの1巻では、縄文〜古墳時代を「ふわふわした猫の暮らし」として描きながら、その裏側にある社会構造や政治の変遷まで編集的に押さえる。アニメ『ねこねこ日本史』(NHK Eテレ)が展開されていることもあり、子どもと並行して視覚的に学べる点が魅力。割と軽い読み口なのに、後で調べ直したくなるディテールが散りばめられている。
読みどころ
- 古代の人々を猫のキャラクターにして、名前と性格をカジュアルに覚えさせる。たとえば卑弥呼=「キラキラお姫さま猫」、卑弥呼の弟=「真面目な忍者猫」として描き、脳内に人物相関が残る。
- 神話・伝承部分では、猫独特の距離感を活かして「人間と神のあいだ」のムードを浮かび上がらせる。天照大神のシーンでは、岩戸をシャキッと開けるカットにジワジワくる笑いが乗り、緊張感を緩ませながら史実の位置づけを押さえる。
- 体験コーナーとして各巻末に「ねこの着物チェック」や「弥生の道具カタログ」が付いており、具体的な出土品や土地の名称に触れたあとで「どうしてその形になったか?」を問いかける構成になっている。
類書との比較
『角川まんが学習シリーズ 日本の歴史』や『講談社 学習まんが 日本の歴史』は、造形や史実の厚みに勝るが、どうしても登場人物が人間のままで堅めに語られがち。『ねこねこ日本史』はムードをかなり取っ払って「猫」という柔らかい記号に置き換えることで、逆に印象に残りやすさを高めており、大人が読んでもおもちゃ箱のような色遣いの中から意外な洞察を得られる。『日本の歴史まんが』系のところに比べ、史書ではなくトーンで歴史を「愛玩」させるところが差別化ポイント。登場人物の関係性を俯瞰する場面も、猫のしぐさと絡めて「そっちの読み方が正解」という余白を残すため、記憶の引き出しが深くなる仕掛けになっている。
こんな人におすすめ
- 暗記が苦手な子でも、キャラクターの行動で覚えたい小学生・中学生
- 親子で歴史を眺めながら「言い換え」や「たとえ」を考えたい家庭
- 大人が再読しても軽やかに笑いながら歴史を整理し直せるサブブック
- 歴史のストーリーではなくムードで記憶を留めたい人
感想
最初の「土器ねこのポーズ」コマをめくった瞬間、歴史の教科書で読んだ単語が「猫語」へ翻訳されていく感覚に驚いた。玻璃弥生の猫のしぐさから、あの時代の緊張と開放のテンションが潮のように押し寄せ、そのまま主人公の声が「みんな箸を持ってごはんを食べていたんだね」という一文で落ち着くところまで再現されている。ふだん忙しいと歴史が「過去の他人」になりがちだが、「ねこねこ」のタッチなら、朝ごはんの盛りつけを見ながらでも、卑弥呼の言葉がパッと浮かぶ。元気な猫がポンと登場するたびに「次の時代へ行こう」と背中を押されるようで、学び直しのリズムが自然に回る体験になった。