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レビュー

概要

『テニスダブルス 勝つための戦術』は、ダブルスで勝てない原因を「技術不足」だけでなく「位置取りと判断のズレ」として捉え直す戦術本です。シングルス経験者でも、ダブルスになると前衛と後衛の役割分担、ポーチに出るタイミング、サーブ後の立ち位置などで迷いやすい。本書はその迷いを、図解と状況別の整理でほどいていきます。感覚に頼りがちなダブルスを、再現できる形で理解させてくれる一冊です。

タイトルは戦術本ですが、難しい理論書ではありません。初中級者が試合でよく崩れる場面、たとえばリターン後にどこへ動くか、ロブを上げられた時にペアでどうカバーするか、雁行陣と並行陣をどう使い分けるか、といった具体的な問題から入ります。だから、部活やサークルでダブルスに出る人でも使いやすい。頭で理解してから練習メニューに落とし込める構成が、この本のいちばんの強みです。

この本の読みどころ

読みどころは、ダブルスの基本フォーメーションを「形」ではなく「狙い」で説明しているところです。雁行陣がなぜ守りやすいのか、並行陣がなぜプレッシャーをかけやすいのかを理解すると、相手や展開に応じて立ち位置を変える意味が見えてきます。本書はその変化を、コート図を使ってかなり丁寧に追ってくれるので、見ているだけでも頭が整理されます。

サーブとリターンの章も実戦的です。ダブルスでは、サービスエースよりも「次の一球を有利に打てる形」を作ることが重要です。本書はその発想から、配球の組み立てや前衛の動かし方を解説します。リターン側も、ただ返球するだけでなく、どこへ返せば前衛を封じやすいか、相手ペアの陣形を崩しやすいかまで踏み込んでいるので、試合勘を鍛えやすいです。

さらに、パートナーとの連携に触れている点も良いところです。ダブルスは一人だけうまくても崩れる競技で、声かけや意図の共有がかなり大切です。本書はここを精神論で済ませず、「この場面ではどちらが取るのか」「前に詰める合図をどう出すか」といった形に落としているので、ペア練習の質を上げやすい。コーチが練習メニューを考える時にも使いやすい本だと思いました。

類書と比べた強み

テニスの本にはストロークやサーブのフォーム改善を中心にしたものが多いですが、本書はダブルスの判断そのものへ焦点を当てています。フォーム矯正本のように一球の打ち方を深掘りするというより、「その一球をどこでどう使うか」を整理する本です。だから、ショット単体の練習では伸び悩んでいる人にとっては、かなり視界が開けます。

また、上級者向けの高度な配球論だけで終わらないのもよいところです。初中級者がつまずく基礎的な場面から積み上げるので、試合経験が少ない人でも入りやすい。戦術本としては敷居が高すぎず、それでいて試合に持ち込める具体性があります。

ダブルスでは、一球ごとの技術差より「次にどこへ立つか」を共有できるかどうかで勝負が決まりやすいです。本書はその点を何度も確認させるので、読み終わると練習中の会話まで変わってきます。感覚だけで合わせていたペアほど、戦術の言葉を持つ意味がよくわかるはずです。

こんな人におすすめ

ダブルスに出ると立ち位置が曖昧になる人、ペア練習をしても何を合わせればよいかわからない人、サーブやストロークはそこそこ打てるのに試合で勝ち切れない人に向いています。部活の顧問やサークルのまとめ役が、戦術の共通言語を作るために読むのもありです。逆に、最新のプロ戦術やかなり高度なフォーメーション研究を求める人には、やや基礎寄りに感じるかもしれません。

感想

この本を読んで印象に残ったのは、ダブルスは「二人で何となくやる競技」ではなく、かなり論理的に整理できる競技だということでした。なんとなく前に出る、なんとなく下がる、なんとなくセンターを空ける。そうした曖昧な動きが負けにつながっていたと気づかされます。

派手な必殺ショットを増やす本ではありませんが、試合で失点を減らし、得点の形を再現しやすくしてくれる本です。ダブルスで勝ちたい人が最初に読んでおくと、練習の見え方がかなり変わる一冊でした。

サーブやストロークの練習量を増やしているのに結果が出ない時は、技術ではなく配置の問題であることも多いです。本書はその盲点を埋めてくれるので、部活や草トーでも一段勝ちやすくなる感覚を持ちやすいと思います。

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    佐々木 健太

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