レビュー

「自己肯定感」を、子育ての現場に落とし込むための本です

子育ての情報って、頑張れば頑張るほど矛盾が増えるように思いませんか。「ほめて伸ばす」が正しいと言われたかと思えば、次は「ほめすぎは逆効果」とも言われます。何を信じればいいのか分からなくなります。

『子育てママに知ってほしい ホンモノの自己肯定感』は、そういう迷いの中心にある「自己肯定感」を、きれいごとではなく育児の手触りに戻してくれる本でした。冒頭で「子育てに正解はないが、間違いはある」と言い切るところからして、甘い慰めではなく、ちゃんと現実を扱う姿勢が見えます。

「優しさ」と「厳しさ」をセットで考えるのが、この本の核です

本書の大事な主張は、自己肯定感を育てるには「母性愛」と「父性愛」という2つの愛情をバランスよく注ぐことが必要だ、という点です。

  • 母性愛(優しさ):子どものありのままを受け入れる土台を作ります。
  • 父性愛(厳しさ):社会のルールや規範の中で、目標を達成する力を育てます。

どちらか片方だけに寄ると、自己肯定感が「ホンモノ」になりにくい、と本書は言います。特に印象に残ったのは、父性愛が欠けると、本人の自己肯定感そのものは強くても、失敗を恐れて挑戦できなかったり、困難に出合うとあっさり諦めたりするような「ニセモノの自己肯定感」になってしまう可能性がある、という指摘です。

「優しくすること」だけでは足りない。でも「厳しくすること」も、罰や否定ではなく、目標に向かって踏ん張る筋力を育てるためにある。ここを整理してくれるので、日々の声かけがブレにくくなります。

「母性愛」と「父性愛」を、家庭の言葉に置き換えると見えやすいです

この2つは概念として聞くと難しそうですが、家庭の場面に置き換えると意外とシンプルです。

母性愛(優しさ)の側は、「あなたはあなたで大丈夫」と伝える方向です。たとえば、失敗して落ち込んだときに「結果より、挑戦したことがうれしいよ」と言ったり、気持ちを受け止めてから一緒に次を考えたりします。ここが薄いと、子どもは安心できず、挑戦する前に心が折れやすくなります。

一方で父性愛(厳しさ)の側は、「できるようになろう」と背中を押す方向です。時間を守る、約束を守る、やるべきことをやってから遊ぶ、といった“社会のルール”を家庭の中で練習します。ここが薄いと、「自分は大丈夫」という感覚だけが先に立ち、失敗が怖くて動けなくなるなど、結果として挑戦に弱くなる可能性があると本書は指摘します。

よくある悩みに効くのは、背景の説明が丁寧だからです

自己肯定感が高い子は積極的で、ポジティブにとらえやすく、くじけずにチャレンジできる傾向がある。一方で低い子は、新しいことに挑戦するのを怖がったり、壁にぶつかると諦めやすい傾向がある。本書は、こうした一般論を置いたうえで、「どう育てるか」に踏み込んでいきます。

著者は企業研修で自己肯定感を高める方法を伝えてきた経験があり、その手法を子ども向けに作り直して「こども成功塾」を設立し、保護者向けセミナーも行ってきたそうです。だからか、精神論ではなく「プログラムとして育てる」感覚が強く、読んでいて再現しやすいです。

「厳しさ」は怖くなくていい、というメッセージが救いになります

個人的に、子育ての難しさって「厳しくしたいわけじゃないのに、厳しくしないと回らない」場面があるところだと思います。片づけ、宿題、時間、約束、スマホなど。怒りたくないのに怒ってしまって、自己嫌悪になることもあります。

本書で言う父性愛の「厳しさ」は、感情で押さえつけることではなく、社会で生きるためのルールや目標達成の力を育てるための枠組みです。つまり、怖さではなく、安心のための線引きです。この見方ができると、厳しさを「関係を壊す道具」ではなく「挑戦を支える土台」に戻せます。

今日から試しやすいのは「優しさ→厳しさ」の順番です

本書を読んで、いきなり完璧なバランスを目指す必要はないと思いました。むしろ、順番が大事です。まず母性愛で土台を作り、その上で父性愛を足す。この流れがあると、厳しさが「突き放し」ではなく「応援」になります。

たとえば、宿題ができなくて泣いているときに、最初から「早くやりなさい」と言うのではなく、「難しかったね」と気持ちを受け止めてから、「じゃあ5分だけ一緒にやってみよう」と区切る。こういう小さな設計が、子どもの中に「自分はできるかも」を残していきます。

こんな人におすすめ

  • 子どもをほめたり励ましたりしているのに、挑戦を避ける姿が気になっている人
  • 「優しさ」と「厳しさ」のさじ加減に迷っている人
  • 自己肯定感を、日々の声かけやルール作りに落とし込みたい人

まとめ

この本は、「自己肯定感を上げよう」とふんわり言うのではなく、母性愛(優しさ)と父性愛(厳しさ)の両方で、子どもが自分を認めつつ挑戦できる状態を作る、という具体の設計図を示してくれます。子育ての迷いを、理念ではなく行動に戻したいときは、頼りになる1冊です。

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