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レビュー

「自己肯定感」を、人生の実感として描いたコミックエッセイ

自己肯定感という言葉は広まりましたが、ふわっとした“気分の問題”として消費されがちです。
でも本当に苦しいのは、頭では理解しているのに、自分だけがずっと「自分が嫌い」から抜け出せないときだと思います。

『自分を好きになりたい。 自己肯定感を上げるためにやってみたこと』は、その苦しさを抽象論ではなく、生活の中の出来事として描くコミックエッセイです。
幼少期のしんどい母子関係から自己肯定感が低くなり、「自分が嫌い」という気持ちを抱えた著者が、その感情を手放すために「小さい頃の自分が親にして欲しかったこと」を1つずつ実践していく、という筋書きが核になります。

プロローグ「スマホを心の盾にして」から始まる現代性

印象的なのが、プロローグに「スマホを心の盾にして」という言葉が置かれていることです。
しんどいとき、スマホへ逃げるのは、サボりではなく“防御”でもあります。

ただ、その盾があるほど、現実の痛みが消えるわけではありません。
この作品は、逃げる自分を責めるのではなく、なぜ盾が必要だったのかを見つめ直す導入になっていて、読んでいて置いていかれません。

「つらい記憶」と向き合うのは、正しさのためではなく生きやすさのため

目次には「つらい記憶」「今からでも、変われる?」といった項目が並びます。
ここで描かれるのは、過去の出来事を“美談”にする作業ではなく、今の自分が生きづらい理由をほどく作業です。

自己肯定感が低い状態は、気合で変わりません。
変えようとするほど自分を責めてしまい、むしろ悪化することさえあります。だから、まずは「小さい頃の自分」が何を欲しかったのかを丁寧に拾う、という方針が現実的に感じました。

「大人になってからの逆上がり」が象徴する、“やり直し”の意味

中盤には「大人になってからの逆上がり」という項目があります。
この題名だけで、読者は分かると思います。できなかったことを、今やり直すことには意味がある。

それは過去を消すためではなく、できなかった自分を「当時の事情込みで」認め直すためです。
子どもの頃の傷は、長い間、心の中で勝手に“判定”を続けます。私はダメ、私は愛されない、私はどうせ。そういう判定を、別の経験で上書きする。逆上がりは、その象徴として分かりやすいです。

「ほめられたことを信じてみよう」は、いちばん難しいから効く

自己肯定感が低い人ほど、ほめ言葉を受け取れません。
「たまたま」「相手が優しいだけ」「勘違い」といった形で、全部を無効化してしまう。

だから「ほめられたことを信じてみよう」は、簡単そうで一番難しい課題です。
本書がこのテーマを扱うのは、自己肯定感の“実務”がここにあるからだと思います。受け取れるようになると、世界の見え方が変わります。

「誰かを許せなくても幸せになっていい」という線引き

目次には「誰かを許せなくても幸せになっていい」があります。
自己肯定感の話は、ときどき「許し」や「感謝」の強制にすり替わります。でも、許せないものは許せないままでいい。

この線引きがあることで、読者は無理をしなくて済みます。
心をほぐす作業は、優等生になることではありません。自分が生きやすくなる方向に、少しずつ動くこと。そのための言葉として、この項目はすごく効くと思いました。

エピローグ「自分が好きということ」がゴールになるまで

最後に置かれているのは「良い思い出を思い出せた」からの、エピローグ「自分が好きということ」。
自己肯定感は、いきなり大ジャンプするものではなく、小さな“体験の積み上げ”で変わっていく。

この本は、その積み上げをコミックエッセイとして見せてくれるので、読者が自分の生活にも転用しやすいです。
「こういうことなら、自分も試せるかも」と思えるサイズに落ちているのが、いちばんの強さだと思います。

読み方のおすすめ:1テーマだけ選んで、小さく試す

この本は、やるべきことを大量に増やすタイプではありません。
「子どもの頃にして欲しかったこと」を、ひとつずつ試す。そこが肝です。

最初は、ほめ言葉を受け取る練習でもいいし、できなかったことをやり直すでもいい。
1つだけ決めて試してみると、読書が“感想”ではなく“変化”につながりやすくなります。

こんな人におすすめ

  • 自己肯定感の話を、理屈ではなく体験として読みたい人
  • 過去のつらさを抱えたまま、今を生きるのがしんどい人
  • 「小さい頃の自分」を少しずつ救い直す発想に惹かれる人
  • 許せない気持ちを抱えたままでも、前に進みたい人

まとめ

『自分を好きになりたい。 自己肯定感を上げるためにやってみたこと』は、自己肯定感を“感情の気合”ではなく、生活の中の実践として描くコミックエッセイです。
スマホを盾にしてしまう現代的なしんどさから始まり、過去の痛みをほどき、できなかったことをやり直し、ほめ言葉を受け取り、許せないままでも幸せを選ぶ。自分を少しずつ好きになっていく過程が、具体的に読める一冊だと思いました。

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    佐々木 健太

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