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レビュー

概要

『こども六法 第2版』は、法律の条文をそのまま教える本ではありません。子どもが学校や家庭で直面しやすい場面を入口にして、「何が権利なのか」「どこからが傷つける行為なのか」「困ったときに社会はどう助けるのか」を、かなり分かりやすく言い換えてくれる本です。六法という題名だと堅い本に見えますが、実際の読み味は「子どもが自分を守るための言葉を持つ本」に近いです。

本書が強いのは、自由、契約、いじめ、暴力、働くこと、性や尊厳といったテーマを、いきなり抽象論で扱わないところです。たとえば学校でのからかい、友だち同士のお金の貸し借り、SNSや写真の扱い、家の中で我慢し続けることなど、子どもにとって現実感のある場面から説明が始まるので、「法律は遠い世界の話ではない」と自然に分かります。

第2版では、こども基本法の追加や法改正の反映も入っていて、初版の価値を保ちつつ内容がきちんと更新されています。とくに、子どもを守る側の大人が読んでも、「善意だけでは足りない」「権利の言葉が必要だ」と実感しやすい構成です。

読みどころ

1. いじめや理不尽を「つらい」で終わらせない

この本のいちばん大きな役割は明確です。子どもが受けている理不尽を「ただ嫌だった」で終わらせず、「それは権利の侵害かもしれない」と言葉で捉え直せるようにすることです。いじめや暴力の説明も、道徳の話だけではなく、どういう法律や制度が関わるのかまで示すので、自分を守る視点が育ちます。

子ども向けの本ですが、大人が読むと「被害を受けている子に、気持ちの整理だけ求めても足りない」と分かります。ルールではなく権利の話として捉え直せるのが強いです。

2. 憲法・民法・刑法を生活の言葉に落としている

法律の入門書は、どうしても条文や概念の説明に寄りがちです。本書はそこをぐっと下げて、子どもの日常に接続します。自由って何か、約束って何か、相手を傷つける行為はどこで線を越えるのか。こうした話が、学校や家庭で起こる具体例に沿って示されるので、法律が急に理解しやすくなります。

「ルールを守ろう」という教え方よりも、「なぜそういうルールが必要なのか」が見えやすいので、押しつけ感が少ないのも良いところです。

3. 子どもだけでなく保護者や先生にも効く

この本は子ども向けですが、実際には大人が先に読んだほうが良い場面も多いです。学校でのトラブル、家庭内のしんどさ、働くことや性の問題などは、大人が曖昧に済ませてしまうと子どもは言葉を持てません。本書はそこを平易に整理してくれるので、親子の会話や学校現場での共有にも使いやすいです。

「どう説明したらいいか分からない」テーマを、大人の側が言いよどまずに話すための補助線になります。

4. 第2版としての更新がきちんと意味を持っている

新版の価値は、単なる増補ではなく、社会が変わった分だけ子どもを守る言葉も更新しているところにあります。こども基本法の追加や性的同意年齢引き上げの反映は、その象徴です。法改正が子どもの生活感覚とどう関わるかまで含めて読めるので、古びた法律紹介本になっていません。

類書との比較

子ども向け法律本や学習まんがは他にもありますが、『こども六法』は「法律を知る」より先に「助けを求める言葉を持つ」ことへ重心があります。制度の仕組みを広く学ぶ本よりも、自分の権利や境界線を知る本としての切れ味が強いです。

また、マンガ中心の軽い入門書と比べると、やさしく読める一方で扱う論点は軽くありません。いじめ、虐待、性、労働などを曖昧にせず、でも子どもを置いていかない。このバランスが本書の価値だと思います。

こんな人におすすめ

  • 小学校高学年から中学生に入る前後で、権利や法律を言葉にしたい家庭
  • いじめやトラブルを「我慢」で済ませたくない人
  • 子どもに社会のルールを説教ではなく説明したい保護者
  • 学校や支援現場で、子ども向けの導入本を探している人

感想

この本を読むと、法律は怖い罰則の集まりではなく、弱い立場の人を守るための言葉でもあるのだとよく分かります。子ども向けにここまで平易にしながら、内容を薄めすぎていないのが見事です。とくに学校生活や家庭内で起こりうる具体例が多いので、「これは自分には関係ない」となりにくいです。

良かったのは、子どもに正しい行動を押しつける本ではなく、「困ったときにどう考え、どこへ助けを求めればいいか」を支える本になっているところです。いじめや暴力の話も、精神論ではなく権利の問題として扱うので、読後の重みが違います。被害を受けた側に努力を求めすぎない姿勢も信頼できます。

また、大人が読む意味もかなり大きいです。子どもに法律を教えるつもりで開いても、むしろ大人の側が曖昧にしてきたことを言い直される感覚があります。家庭や学校で使う言葉を整える本としても優秀です。

『こども六法 第2版』は、子ども向けの実用書でありながら、社会が子どもをどう守るかを問い返す本でもありました。法律の世界への入口としてだけでなく、子どもが「自分は守られていい存在だ」と知るための一冊として、長く残る価値があると思います。

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    佐々木 健太

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