レビュー
概要
『中塚翠涛の30日できれいな字が書けるペン字練習帳』は、くせ字を一気に直そうとするのではなく、30日間かけて少しずつ「読みやすく整った字」に近づけていく練習帳です。付録の美文字ペンが付いているので、道具を別に揃えなくても始められます。テレビでも知られる中塚翠涛さんの本だけあって、説明はやわらかいのに、指摘はかなり具体的です。
本書が扱うのは、単なるお手本のなぞり書きではありません。線の方向、余白の取り方、文字の重心、筆圧のかけ方といった「字が整って見える理由」を分けて説明してくれるので、自分の字がなぜ崩れて見えるのかを理解しながら進められます。きれいな字の本はたくさんありますが、根性論ではなく、再現しやすいコツに落としている点が本書の強みです。
読みどころ
まず使いやすいのは、30日という区切りがはっきりしているところです。美文字の練習は、やる気のある初日に詰め込みすぎると続きません。本書は1日あたりの分量が多すぎず、数ページずつ進められるので、忙しい人でも朝や寝る前に取り組みやすいです。長く続けること自体が難しい分野だからこそ、この分量設計はかなり重要だと感じます。
内容の流れもよくできています。いきなり文章や手紙を書かせるのではなく、最初は横線、縦線、はらい、はねといった基本から入り、そこからひらがな、よく使う漢字、名前や住所、実用文へと進みます。順番に追うだけで、「一文字は書けても続けて書くと崩れる」といった悩みに自然に向き合える構成です。
特に役立つのは、字の形だけでなく余白とバランスを意識させる点です。字が汚く見える原因は、線そのものより、上下左右の詰まり方や重心の偏りであることが多いです。本書はその点を繰り返し意識させるので、ただお手本を真似るよりも上達の理由が分かります。自分の字のどこが惜しいのかを言語化できるようになるのは大きいです。
また、実用に寄せた練習が多いのも嬉しいところです。名前、住所、封筒、ひとことメモなど、実際によく書く場面に直結する内容が入っています。美文字本は芸術的な字の見本に寄りすぎることもありますが、本書は日常生活で「この字なら感じがいい」と思われるラインを狙っています。仕事でも家庭でも使いやすい字にしたい人にはちょうどいいです。
類書との比較
ペン字の本には、ひたすらなぞる練習帳と、理論を中心に説明する本があります。本書はその中間で、理屈が分かるのに難しくなりすぎません。付録のペン付きという入りやすさもあり、最初の一冊としてかなり手に取りやすいです。練習帳を開いた瞬間に始められるのは、想像以上に大きな利点です。
また、上級者向けの美文字本のように「作品としての字」を目指すのではなく、あくまで日常で使う文字を整える方向に軸があります。履歴書、メッセージカード、子どもの連絡帳、宛名書きなど、生活の中で字を少し良くしたい人には、本書くらいの現実的な目標設定が続けやすいと思います。
こんな人におすすめ
字にコンプレックスはあるけれど、書道教室まで通うつもりはない人にぴったりです。名前や住所を書くたび気になる人にも向いています。仕事で手書きのメモや署名が多い人にも実感しやすいはずです。練習時間が長く取れない人でも、30日という目安があるので続けやすいです。年賀状や連絡帳、申込書の記入など、字が目立つ場面を控えている人ほど効果を感じやすいと思います。面接や手続き書類の記入前に整えたい人にも相性がいいです。
また、何から始めればいいか分からないペン字初心者にも向いています。ペンが付いていることでスタートが簡単になり、進む順番も決まっているので迷いません。大人になってから字を直したいと思ったとき、最初の一冊としてかなり選びやすい本です。
感想
この本を読んで感じたのは、字は才能よりも観察と反復でかなり変わるということでした。もちろん30日で別人のような字になるわけではありませんが、少なくとも「どこを直せば読みやすくなるか」ははっきりします。その感覚がつかめるだけでも、手書きへの苦手意識はかなり薄れます。
美文字本の中には、お手本がきれいすぎて挫折しやすいものもありますが、本書は日常で役立つ到達点を示してくれるのが良いところです。完璧を目指すというより、少し整って見える字を増やしていく本。手書きの印象を今より良くしたい人には、無理なく続けやすい練習帳だと感じました。