Kindleセール開催中

297冊 がお得に購入可能 最大 95%OFF

レビュー

概要

脱炭素(カーボンニュートラル)は、必要性は分かるのに、話が難しくなりやすい。温室効果ガス、エネルギー、産業構造、国際交渉。スケールが大きく、数字も多い。だから「大事だよね」で止まりがちだ。

本書は、その止まりをほどくための入口として良いと感じた。マンガ形式で、基本概念(なぜ二酸化炭素が問題か、どこで排出が生まれるか、何が対策になるか)をテンポよく整理してくれる。専門書の前に「地図」を作るタイプの入門だ。

読みどころ

1) 「脱炭素=我慢」だけで終わらない

脱炭素という言葉は、節約や我慢のイメージで語られやすい。でも実際は、技術と制度と投資の話でもある。どこを変えれば排出が減り、どこでコストが増え、どこで新しい産業が生まれるのか。

本書は、生活の小さな工夫から、エネルギー供給の大きな転換まで、視野を往復させてくれる。だから「個人の努力」だけにも「国が何とかして」だけにも偏りにくい。

2) 数字や用語の“怖さ”が下がる

カーボンニュートラルは、単位やグラフが出るだけで身構えてしまう人が多い。本書は、用語を一つずつ“日本語の意味”に戻しながら進むので、怖さが減る。

興味深いことに、怖さが減ると「次の一冊」が選べるようになる。入門書の価値はここにあると思う。

3) 脱炭素の論点が「トレードオフ」として見える

脱炭素は、正しさの主張だけでは進まない。コスト、雇用、電力の安定供給、地域差。利害がぶつかる領域だからだ。

本書は、対立を煽るというより、論点を整理する方向に寄っている。脱炭素を「倫理」だけでなく「設計」として考えるための入口になる。

類書との比較

脱炭素の入門書には、政策を中心にした文字ベースの解説書が多い。本書はマンガ形式で認知負荷を下げ、まず全体像を掴ませる点に強みがある。初学者が用語の壁を越える導入として有効だ。

一方で、定量分析や技術詳細は簡略化されているため、実務で制度設計まで扱う場合は専門書の補完が必要になる。とはいえ、議論の前提を揃える最初の一冊としては十分に機能する。

こんな人におすすめ

  • 脱炭素を学びたいが、専門書はハードルが高い人
  • ニュースで出てくる用語(再エネ、排出量取引など)を整理したい人
  • “賛成/反対”の空中戦ではなく、論点として理解したい人

読み方のコツ

おすすめは、読みながら「自分の生活に近い排出源」を1つだけ選ぶことだ。電気、移動、食、買い物。どれでもいい。その領域で「何が排出につながり、どこに選択肢があるか」をメモすると、学びが残りやすい。

脱炭素で混線しやすいポイント(3つ)

脱炭素は、言葉が似ていて混線しやすい。入門の段階では、次の3点を分けて考えるだけで理解が安定する。

  1. 排出量の話:どこからどれだけ出ているか(現状把握)
  2. 削減手段の話:技術・制度・行動のどれで減らすか(手段)
  3. 負担と配分の話:誰がコストを負い、誰が利益を得るか(公平性)

この3つが混ざると、議論は感情のぶつかり合いになりやすい。本書は入門として、まず論点を分けるのに向いている。

次に読むなら(深掘りの方向)

地図ができたら、関心に応じて次の方向へ進むと良い。

  • 政策・経済の視点で理解したい:外部性、課税、排出量取引などの入門へ
  • 技術の視点で理解したい:電力、蓄電、再エネ、産業プロセスの解説へ
  • 生活に落としたい:家庭・自治体レベルの実践と評価(何がどれだけ効くか)へ

脱炭素は、正しさの議論より「設計と評価」が重要になる領域だ。本書は、その設計の入口を作ってくれる。

誤情報に強くなる:脱炭素の数字を読む3つの視点

脱炭素の話題は、SNSで数字が独り歩きしやすい。だから入門の段階で、次の3視点だけ持っておくと安全だ。

  1. 分母は何か:国全体なのか、家庭部門なのか、電力だけなのか
  2. 期間はいつか:単年の変化か、長期のトレンドか
  3. 代替案との比較か:何と比べて高い/安い/効くと言っているか

本書はこの視点を作るための材料になる。脱炭素は気分で語ると壊れる。数字の読み方があるだけで、議論の質が上がる。

読後に効くミニ実践

本を閉じたあと、ニュースを一つだけ選び、「分母」「期間」「比較」の3点をメモしてみる。たったそれだけで、脱炭素の話題が“主張”ではなく“論点”として読めるようになる。入門書は、読み終えた瞬間より、読み終えた後の一回で効く。

注意点

マンガ形式なので、深い数理や最新の研究動向まで一気に掘るタイプではない。政策設計や技術の詳細に踏み込みたい人は、別の本が必要になる。

ただ、入口でつまずくより、まず地図を作ったほうが速い。本書はその地図として役立つと思う。

感想

脱炭素の議論は、気持ちだけでも、数字だけでも空回りしやすい。本書はその間に橋をかける。読み終えたあと、「何が論点か」を言えるようになるのがいちばんの収穫だった。

難しいテーマほど、入口の一冊が重要になる。脱炭素の入口として、かなり良いマンガ入門だった。

本の虫達

要約・書評・レビューから学術的考察まで、今話題の本から知識を深めるための情報メディア

検索

ライター一覧

  • 高橋 啓介

    高橋 啓介

    大手出版社で書籍編集を10年経験後、独立してブロガーとして活動。科学論文と書籍を融合させた知識発信で注目を集める。
  • 森田 美優

    森田 美優

    出版社勤務を経てフリーライターに。小説からビジネス書、漫画まで幅広く読む雑食系読書家。Z世代の視点から現代的な読書の楽しみ方を発信。
  • 西村 陸

    西村 陸

    京都大学大学院で認知科学を研究する博士課程学生。理系でありながら文学への造詣も深く、科学と文学の交差点で新たな知の可能性を探求。
  • 佐々木 健太

    佐々木 健太

    元外資系コンサルタントから転身したライター。経済学の知識を活かしながら、健康・お金・人間関係の最適化を追求。エビデンスベースの実践的な知識発信を心がける。

Social Links

このサイトについて

※ 当サイトはアフィリエイトプログラムに参加しています。