レビュー
概要
池田書店のマンガでわかるシリーズらしく、心理学の基本概念を4コママンガと図解で噛み砕いて説明する入門書です。「他人の心」「自分の心」「集団の心理」「こころのしくみ」という4つの柱を立てて、どこにいちばん困っているかに応じて読み進められる構成です。博士号を持ち、非言語コミュニケーション研究を続けている著者らしい観察眼が、マンガの掛け合いの合間に静かに顔を出します。
読みどころ
たとえば「他人のこころ」パートでは、視線や表情のニュアンスをコマで示しながら、どの程度の距離感や問いかけが親密さを生むかをマンガ的演出で描写。自分の気持ちを立ち止まって振り返る章では、「感情」の構成要素を円グラフや球体で可視化し、読者が自分の反応を図に写すワークを紹介します。集団の心理では、同調圧力・帰属・スケープゴート現象をミニドラマに仕立て、「分断」と「共鳴」の間で何を選ぶべきかを問います。
後半の「こころのしくみ」では、心をケアするためのセルフモニタリング術が具体的で、読者が日記を書く時間や〈本当に感じていること〉を書き出すワークシートを伴って提示されます。マンガだけに頼らず、短文のコラムや図版も挿入し、「読んで終わり」にならない実務的な構成が魅力です。
類書との比較
『マンガでわかる心理学』シリーズの他の巻や、同じくマンガフォーマットの『心理学使いこなしノート』と比べると、この一冊は「非言語」と「自分の内面」の観察に比重を置いています。よりアカデミックな『心理学入門』が理論を順序だてて解説するのに対し、本書は「なぜ困っているのか」を4コマで再現し、読者が我が事として状況を再体験できるようなデザインです。『図解 社会心理学』のような図版重視の本よりも、マンガが主軸となることで、日常の具体的なシーンに沿って心理学を翻訳してくれる点で差別化されています。
こんな人におすすめ
- 人間関係に疲れて「何が正しいのかわからない」と感じている人
- 心理学をちょっと試してみたいが、堅苦しい本に手を伸ばせない人
- マンガやイラストで自分の心の動きを整理したいビジネスパーソンや教育者
感想
目で見て理解できるマンガだから、「心理学って難しそう」と敬遠していた読者を自然に引き込むリズムがあるのが一番の利点です。章ごとに行動を観察する視点が入るので、「先に他人を変えよう」と思うのではなく、まず自分の行動を丁寧に見返す習慣が生まれます。読了後には、マンガのキャラクターたちがふと現実の知り合いの顔に重なり、距離感や応対の仕方を静かに考え直す時間が生まれました。