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レビュー

概要

『ブラック・ジャック (1)』は、無免許の天才外科医ブラック・ジャックが、常識外れの条件と腕前で命を救っていく医療漫画です。 短編の連作として進みます。 毎話ごとに患者がいて、家庭があって、事情があります。 そして治療の“正しさ”が、倫理やお金の問題とぶつかります。

第1巻は、ブラック・ジャックというキャラクターの輪郭を一気に作る導入です。 法の外にいる医者が、なぜ医療をするのか。 大金を要求しながら、なぜ弱者の側に立つことがあるのか。 その矛盾が、むしろ物語の燃料になります。

読みどころ

1) 「医療の技術」と「人間の弱さ」を同じ強度で描く

手術の迫力は、職人芸として気持ちいいです。 でも本作の怖さは、技術の外側にあります。 患者も家族も医者も、全員が弱い。 善意が足りないのではなく、現実が足りない。 そういう場面が、短編の中で何度も立ち上がります。

2) ブラック・ジャックの“高額請求”が、単なる悪趣味では終わらない

ブラック・ジャックは法外な手術料を提示します。 読み始めた直後は反感も出ます。 けれど話が進むと、その金額が「命の値段」ではなく「覚悟の値段」として機能していくのが分かります。 誰が痛みを引き受けるのか。 誰が責任を負うのか。 お金は、その問いを可視化します。

3) 1話完結でも、後味が長く残る

短編なのでテンポはいいです。 一方で、結末は単純にスカッとしません。 助かった命と、救えない関係が同時に描かれることもあります。 この“ねじれ”が、第1巻の読後感を濃くします。

4) 助手ピノコの存在が、冷たさを中和する

ブラック・ジャックの世界は基本的に厳しいです。 そこにピノコの存在が入ることで、温度が変わります。 可愛さとして消費されるのではなく、医療現場の異物として効いている。 読者の呼吸を作る役割もあります。

5) 1巻から「医療の外側」が描かれる

病気は手術で終わりません。 治っても、生活が壊れていることがあります。 逆に、救えないのに救われる関係もあります。 本作はそういう“医療の外側”を、短編の中に差し込みます。 第1巻の時点で、医療漫画の枠を越えてきます。

本の具体的な内容

第1巻は、「無免許の医者」という設定が最初から突きつけられます。 病院の体制では救えない患者が出てきます。 そこで登場するのがブラック・ジャックです。 外科医としての腕前は圧倒的です。 ただし、彼は制度の中の医者ではありません。 だからこそ、治療は“医療行為”であると同時に、交渉になり、取引になります。

印象的なのは、話ごとに「誰が一番困っているか」が入れ替わる点です。 患者が弱者の回もあります。 家族が判断できずに潰れる回もあります。 病院側の論理が先に立ってしまう回もあります。 ブラック・ジャックは基本的に孤立しています。 その孤立が、むしろ患者の現実を見える形にします。

また第1巻の序盤には、ピノコの存在につながるエピソードも置かれています。 人体の異常が、医療の“対象”である前に、一人の人生の条件になってしまう。 この視点があるからこそ、本作は単なるスーパードクター物語になりません。 切実さが残ります。

この巻のエピソードは、読者の予想をよく外してきます。 「助かってよかった」で終わる話ばかりではありません。 ある患者を救うことで、別の誰かの選択が露わになることもあります。 ブラック・ジャックは裁けません。 でも見逃しもしない。 その立ち位置が、読後に残る痛みを作ります。

たとえばピノコが生まれる流れに関わる話では、身体の中に抱えた異常が、当人の人生の形を変えてしまいます。 医療の奇跡だけを見せるのではなく、奇跡のあとに残る現実も置く。 この冷静さが、作品全体の信頼感になっています。

こんな人におすすめ

  • 1話完結で読めるが、読み応えのある漫画を探している人
  • 医療を「正しさ」だけで語れない物語が好きな人
  • 倫理・制度・お金が絡むドラマに興味がある人
  • 手塚治虫作品の入口として、強い一冊を読みたい人

感想

第1巻を読むと、ブラック・ジャックのかっこよさより先に、世界の理不尽さが迫ってきます。 助けたいのに助けられない。 助かるのに、誰かが壊れる。 その現実を“エンタメの速度”で読ませるのがすごいです。

そして何より、ブラック・ジャックが完全な正義ではないところが効きます。 冷たい。 でも冷たいからこそ、救える命がある。 正しくない。 そのため正しくないからこそ、制度の穴を埋められる。 この矛盾を抱えたまま進む作品として、第1巻は導入以上の強度がありました。

医療ものとして読むと、技術の凄さに目を奪われます。 人間ドラマとして読むと、患者側の事情や医療側の限界が刺さります。 社会の物語として読むと、お金と制度が露骨に見えてきます。 第1巻は、その入口を全部用意している巻です。 だから読み返すたびに、違う話が刺さる。 名作の導入が名作である、という納得が残りました。

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    大手出版社で書籍編集を10年経験後、独立してブロガーとして活動。科学論文と書籍を融合させた知識発信で注目を集める。
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