レビュー
概要
元プロ総合格闘家の著者が、曖昧な人間関係に疲れる現代人に向けて「距離を置く」ことの意味とコツを独自にまとめた一冊。スポーツや格闘技で培ったフィジカル的感覚を人間関係に転用し、「近すぎるときの違和感」「距離を測るメソッド」を豊富な体験談とともに解説します。
読みどころ
各章に格闘技のエピソードを織り込みつつ、たとえば「パンチと距離の取り方」を人付き合いに読み替えるなどのメタファーが中心。第1章では「近づきすぎて息苦しい人」との距離の再調整、第2章では「距離の取り方を数値化する」「自分の感覚器官を鍛える」ためのワークを紹介します。また、互いに距離を保つ関係がうまく回るさまを事例ごとに紐解き、読者が実践できる「呼吸するように関係を保つ」コツを蓄積します。
類書との比較
『嫌われる勇気』が心理的な自立を叫ぶのに対し、本書は「距離感の認識」を実践的なグラップリング的感性で鍛える点に特色があります。『モノの距離を整える』などの物理的な整理本とは違い、心と体をつなげて「距離感」と「呼吸」をセットで整える独自性があり、依存と独立の両方を使い分けるアプローチを補完します。
こんな人におすすめ
- 人間関係の距離感に敏感で、感情が翻弄されやすいタイプ
- リモートワークとリアルな人間関係の両方を行き来して、距離調節が難しくなった人
- 心理的な距離感を体感的に捉えたい人や、トレーニングを通じて感覚を鍛える姿勢を持つ方
感想
「距離=呼吸」のような表現が表す通り、著者の身体経験が随所に漂い、読者は自分の感覚をチェックし直すきっかけを得ます。格闘技的なメタファーは格段に筋がよく、半分運動のトレーニング、半分心理の自己観察のような感覚で読み進められます。読後は、相手との距離をあいまいに置くことが勇気としてではなく、自然に行える「距離思考」になっていました。