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レビュー

概要

『マンガでわかる行動経済学 お金のコンパス』は、「損するって分かってるのにやめられない」「数字の見せ方で気持ちが動く」みたいな日常のモヤモヤを、行動経済学の言葉で“地図化”してくれる本です。

説明文に並ぶ例がすでに具体的で、カプセルトイにハマる理由、1000mg表記が魅力的に見える理由、失くした500円が忘れられない理由、松竹梅のうな重で竹が選ばれがちな理由、成功率と失敗率の言い換えで印象が変わる理由、試食で買ってしまう理由…など、あるあるを入口にして理論へつなげます。読後に残るのは「自分がダメ」ではなく「人間のクセがこう働く」という説明で、そこが救いになります。

読みどころ

1) “お金の話”なのに、心の動きが見える

行動経済学はお金の学問というより、選択の学問です。本書は「お金のコンパス」として、買い物、寄付、投資、日常の判断のクセを扱います。お金を通して、自分の思い込みが見えてくるのが面白いです。

2) 章立てが「クセの種類」になっていて、整理しやすい

サンクコスト効果、フレーミング効果、アンカリング効果、損失回避性、現状維持バイアス、確証バイアス…といった概念が、章ごとにまとまっています。ネットで断片的に聞いた言葉が、ちゃんと“使える形”になります。

3) ナッジやデフォルトの話が、日常の「操られ感」を言語化する

「人を操る身近な魔法」という章があるのが象徴的で、ナッジ理論、バンドワゴン効果、デフォルト、ヴェブレン効果などが扱われます。情報社会で疲れる理由の1つは、選ばされている感じ。本書はその仕組みを見せてくれます。

本の具体的な内容

本書は、行動経済学の主要概念を、マンガと具体例で学べる構成です。

  • 第1章:サンクコスト効果(コンコルド効果、経済のメカニズム)
  • 第2章:数字のマジック(フレーミング効果、アンカリング効果、端数効果)
  • 第3章:利他性と互恵性(クラウドファンディング、フェアトレード、エシカル消費)
  • 第4章:人を操る身近な魔法(ナッジ理論、バンドワゴン効果、デフォルト、ヴェブレン効果)
  • 第5章:「損」と「得」(損失回避性、現状維持バイアス、プロスペクト理論)
  • 第6章:思いこみのわな(確証バイアス、カクテルパーティー効果、ハロー効果)
  • 第7章:選択とは?(ジャムの法則、松竹梅効果、決定回避の法則、極端性回避の法則)

さらに、コラムとして「身近なサンクコスト効果を見直そう」「マンダラチャートで目標を達成しよう」「行動経済学でノーベル賞を受賞した学者」が入ります。行動経済学を“知識”で終わらせず、生活の見直しや目標達成へつなげる意図があるのが分かります。

冒頭には池上彰による「はじめに」もあり、入口の安心感を作ってくれます。難しい話を難しいままにしない、という編集の姿勢が強いです。

類書との比較

行動経済学の入門書は、文章中心だと抽象で眠くなりがちです。本書は“あるある”とマンガを入口にして、概念を体に落とすタイプ。だから、知識ゼロでも入りやすいし、「あ、これ私のことだ」と思った瞬間に理解が進みます。

一方で、厳密な数式や研究史を深掘りしたい人には物足りない可能性があります。目的は、日常の意思決定の精度を上げること。専門的に学ぶ前のコンパスとして使うのが向いています。

こんな人におすすめ

  • つい無駄遣いして後悔するパターンを減らしたい人
  • 数字や言い方に振り回されやすい自覚がある人
  • ナッジや広告、SNSの「選ばされてる感じ」に疲れている人
  • 行動経済学を、生活に使える形で学びたい人

感想

行動経済学を学ぶと、「自分が弱いから損した」ではなく、「人間の脳はこういうふうにできている」と分かって、少し優しくなれます。本書はその優しさを、具体例でちゃんと体感させてくれるのが良かったです。

特に、損失回避性や現状維持バイアスの話は、節約や投資だけでなく、仕事や人間関係の選択にも当てはまります。「選択」を扱う学問だからこそ、お金を超えて効く。読み終えると、日常の“引っかかり”に名前がついて、余計な自己否定が減る。そういう意味で、本当にコンパスになる一冊でした。

読み終えたあとに一番変わるのは、買い物の後悔の質だと思います。「またやっちゃった」ではなく、「これは端数効果に引っかかったな」「これはサンクコストで引き返せなかったな」と、原因が分かる。原因が分かると、次の一手が選べる。行動経済学の良さは、反省を“改善”に変えられるところなので、本書の「あるある→名前→対処」の流れはすごく相性が良いと感じました。

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