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レビュー

概要

『井原さんちの英語で子育て』は、家庭の中で子どもに英語を使ってみたい親のための、かなり実践寄りのフレーズ集です。英語育児というと、教材選びや発音の不安から入ってしまいがちですが、この本がやっているのはもっと現実的です。朝起こす、着替えさせる、ごはんを食べる、お風呂に入る、片づける、寝かしつける。そうした日常の場面で「まず何を言えばいいか」を具体的に示してくれます。

つまり本書は、英語教育の理論書というより、家庭の生活へ英語を混ぜるための実用書です。完璧な英文を話すことより、親が気負わず口に出せることを重視しているので、おうち英語の最初の一冊としてかなり使いやすいです。

読みどころ

本書の強みは、場面別の整理が徹底しているところです。朝のあいさつ、歯みがき、食事、外出、ほめるとき、注意するとき、寝る前の声かけなど、親が実際によく使う場面ごとにフレーズが並んでいます。だから「英語育児をやろう」と意気込むより、「この場面だけ英語にしてみよう」と始めやすいです。

特に良いのは、教材の英語ではなく、家庭の会話として成り立つ表現が中心になっていることです。子どもに英語を教えるというより、親子のやり取りを少しだけ英語で置き換える感覚に近い。これなら英語が苦手な親でも負担が小さく、続けやすいです。

また、本書は「完璧な発音で流暢に話すこと」を前提にしていません。まずは短いフレーズを繰り返すこと、同じ場面で何度も使うことが大事だとわかります。おうち英語で本当に難しいのは、難解な文法ではなく、毎日少しでも口に出し続けることなので、この割り切りはかなり実践的です。

親目線で見ると、注意や励ましの言葉がまとまっているのも助かります。楽しい場面だけでなく、「急いで」「危ないよ」「もう終わりにしよう」「よくできたね」といった日常の温度がある英語を使えるようになると、英語がイベントではなく生活の一部になります。ここまで行くと、子どもにとって英語は“勉強の対象”ではなく“家で聞く言葉の1つ”になります。

本書は古い本ですが、そこはあまり弱点になっていません。家庭の声かけに必要な表現は今も大きく変わらないからです。アプリや動画教材が増えた今でも、親が実際に何を言うかで悩む構造は同じなので、こういう定番の表現集はまだ十分役に立ちます。

さらに、この本は「今日はどの場面で英語を使うか」を決めやすいのも利点です。朝の支度だけ、食卓だけ、寝る前だけ、と範囲を絞れば、家庭に無理なく導入できます。英語育児が続かない理由の多くは、親が最初から全部やろうとして疲れることなので、その失敗を避けやすい構成です。

こんな人におすすめ

  • 英語育児に興味はあるが、何から始めればいいかわからない家庭
  • 親自身は英語が得意ではないが、生活の中で少しずつ英語を使ってみたい人
  • 教材を増やす前に、まず日常の声かけを変えてみたい人
  • 0歳から未就学児くらいの時期に、おうち英語の土台を作りたい人

感想

この本を読んであらためて感じるのは、おうち英語で一番大事なのが教材の量より、親が無理なく続けられることだという点です。英語が生活へ溶け込む前に親が疲れてしまうと、どんな良い方法でも続きません。その意味で、本書のように「今日から1つ使える」本は強いです。

良かったのは、英語を特別な教育イベントにしないところでした。机に向かって勉強するのではなく、朝の「起きよう」、食卓の「おいしいね」、寝る前の「おやすみ」を英語でも言ってみる。その積み重ねなら、子どもも構えずに受け取れます。親子で一緒に慣れていける距離感がちょうどいいです。

また、この本は親の英語のリハビリにもなります。短いフレーズを毎日繰り返すだけでも、口が動きやすくなり、英語への抵抗感が下がります。子どものために始めたはずが、親のほうも少しずつ英語に慣れていく。この双方向性は、おうち英語本としてかなり大きな魅力です。

「英語ができる家庭」ではなく、「少しずつ英語が聞こえる家庭」を作りたい人には合う一冊です。完璧を求めず、小さく始めて、家の空気を変えていく。その現実的な第一歩として、今読んでも十分使える本だと思います。

特に、英語教育を早く始めたいけれど高価な教材や教室にいきなり踏み切れない家庭には相性がいいです。まずは親の口から出る英語の量を増やす。その小さな積み上げが、あとで絵本や音声教材を取り入れるときの土台になります。おうち英語を現実の生活に降ろすための、地に足のついた一冊です。

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    佐々木 健太

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