レビュー

概要

『子どもの足がギュンッと速くなる キッズラントレ』は、運動会やスポーツで「もう少し速く走れたら」を叶えるために、子ども向けの“走りの土台”を作り直す本です。主張の芯はシンプルで、速く走るために必要なのは「テクニックの小手先」ではなく、正しい姿勢・力強い腕振り・脚の使い方という3要素をまとめて底上げすること、というもの。

タイトルの勢いはかなり強いのですが、内容は意外と地に足がついています。「走り方を“教える”」というよりも、「走れる身体を“育てる”」という方向に軸足がある。だから、運動が得意な子のタイムを数秒縮める話というより、フォームが崩れて力が逃げている子が“伸びしろ”を取り戻すための一冊、という印象でした。

本の長さは128ページとコンパクト。そのぶん、親が読み切って、家庭やクラブの練習に持ち込みやすい設計です。

読みどころ

1) 「速さ=フォーム」だけに寄らない

短距離が速くなる本はフォーム解説が中心になりがちですが、本書は「姿勢・腕・脚」をセットで扱います。速く走る動きは連動なので、腕振りだけ直しても脚が追いつかない、脚だけ鍛えても姿勢が潰れて力が伝わらない、という“よくある空振り”を避けやすいです。

2) 親が“コーチ化”しすぎなくていい

子どもの走りは、言葉で細かく直そうとすると反発が出たり、本人が窮屈になったりします。本書は、動きの改善を「身体づくり」と「練習の組み方」に寄せているので、親が技術指導で消耗しにくい。公園や広場で取り組める前提なのも続けやすさにつながります。

3) “夢”に接続している

「運動会で1等賞を取りたい」「スポーツで活躍したい」といった動機から入って、そこに必要な要素を分解していく流れなので、子ども側の納得感を作りやすいです。練習の目的がぼやけにくいのは地味に大きいポイントでした。

本の具体的な内容

本書は、速さを決める要素を「正しい姿勢」「力強い腕振り」「脚の使い方」の3点に整理し、それぞれを“レベルアップ”させることで走力を上げていく構成です。ここで良いのは、3つが独立したチェックリストではなく、つながった一本のラインとして説明されているところ。姿勢が崩れると腕振りの軌道が乱れ、腕が乱れると脚の接地が遅れ、接地が遅れるとさらに姿勢が潰れる――という悪循環が起きる。逆に言えば、どこか1つを起点にして連鎖を良くできる、という捉え方ができます。

また、速く走るための“子ども専用フィジカルトレーニング”を掲げているのも特徴です。大人の筋トレをそのまま縮小するのではなく、運動能力を伸ばす方向の土台(動きのキレ、身体の使い方)を作る発想。写真つきで説明されていて、素人の保護者でも取り組ませやすい、というレビューが多いのも納得でした。

さらに、親子で実践しやすい点が強く意識されています。習い事の練習に“追加でやる”というより、週末の短い時間で「一緒に動く」形に落とし込みやすい。運動が得意な子ほど自己流が固まりやすく、苦手な子ほど動きのパターンが少ないので、親子で動きの経験値を増やす狙いは合理的だと思います。

類書との比較

「かけっこが速くなる」系の本には、フォームの型を提示して反復させるタイプと、身体づくり(体幹・ジャンプ・敏捷性など)に寄せるタイプがあります。本書は後者寄りで、フォームの“見た目”よりも、フォームが良くなるための要素(姿勢・腕・脚の連動)を整える方向。だから、動画でフォームを研究するのが好きな子には物足りないかもしれませんが、フォーム指導がうまくいかない家庭には刺さりやすいはずです。

こんな人におすすめ

  • 運動会やクラブ活動で「あと少し速く」を狙いたい小学生〜中学生
  • 走り方を言葉で直すと親子で揉めやすい家庭
  • 体力や筋力以前に、走りが“ぎこちない”子
  • 習い事の練習に、短時間で足せるメニューがほしい人

注意点

タイトルにある「100%速くなる」のような断定表現は、そのまま受け取ると期待値が上がりすぎます。現実には、伸び幅は初期状態や成長段階で大きく変わります。大事なのは、数字より「何を直すと速さが出るのか」を理解して、継続できる形に落とすことです。

感想

この本を読んで一番良いと感じたのは、「速く走る」を“技術の才能”から“改善可能な要素”へ引き戻してくれるところでした。姿勢・腕・脚に分けると、子ども自身も「今日は腕を大きく振ってみる」「姿勢が潰れないようにする」と目標を持てる。親も「速く走れ」ではなく「3要素のどこが崩れてる?」という観察に変わるので、コミュニケーションが前向きになります。

運動は、結果が出ると自信がつき、行動が増え、さらに上達するという“良い循環”が起きやすい領域です。本書は、その最初の循環を作るための、実装寄りのガイドとして使える一冊でした。

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    佐々木 健太

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