レビュー

概要

『角川まんが学習シリーズ 世界の歴史 全20巻定番セット』は、世界史を「地域ごとの縦割り」だけでなく、時代のつながりとして理解することを目指したシリーズです。監修には、グローバル・ヒストリーの方法を提唱してきた研究者が関わっています。世界史を“横につなげて”捉える工夫が多く、そこが特徴です。

内容紹介では、角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』で培ったノウハウを土台にしつつ、世界史を新しい構成で届けることが強調されています。単に「国ごとの歴史」を並べるのではなく、地域同士の影響や同時代性が見えやすいように設計されています。世界史の暗記がしんどい人ほど、ここが救いになります。

セットとしての強みは、ボリュームの大きさだけではありません。古代から現代までを一気に通しで持てるので、「この出来事は同じ時期に別の地域で何が起きていたのか」という視点が作れます。世界史が苦手な人ほど、出来事が点で終わりがちです。このシリーズは、点を線にしやすい作りだと感じました。

また、まんがページ数の総量が非常に大きく、学習まんがとしては最大級のボリュームです。長いから良いというより、密度があるから「調べたいときに戻れる」のが強みです。近年の出来事も扱っているため、教科書の世界とニュースの世界をつなぎやすいのも利点です。知識を増やすというより、「世界を見る枠組み」を増やすシリーズだと思います。

読みどころ

1) 「グローバル・ヒストリー」的な構成で、関係が見える

世界史の理解が難しいのは、地域がバラバラに見えるからです。このシリーズは、国民国家の枠や「欧米対アジア」といった単純な図式に寄りかからず、交流や連鎖として世界を捉えようとします。同時代の出来事を並べて考える習慣がつくので、暗記より理解に寄ります。

2) まんがの読みやすさと、情報量の多さが両立している

セットはまんがページの総量が多く、読み進めるほど世界観が広がります。さらに、出来事の背景を補う解説や図解があるので、まんがで勢いよく掴みつつ、理解を補強できます。読む順番を自由にできるのも、学習シリーズとしての強さです。

「この巻はこの地域」という読み方もできますし、「同じ時代の別地域」を並行して読むこともできます。例えば、ある地域の王朝の変化を読んだあと、同時期の交易や宗教の広がりを別巻で確認する。こうした往復がしやすいのは、セットならではです。

3) 最新トピックが入っているので、現代史が「今」に触れる

世界史は近代以降、とくに現代史で急に解像度が落ちることもあります。新型コロナウイルス感染症やブラック・ライヴズ・マターのような話題まで触れているので、「歴史は終わっていない」という感覚が残ります。出来事を“他人事の過去”にしない効き方があります。

4) 使い方次第で、親子でも大人の学び直しでも回る

子どもはまんが部分を中心に読めますし、大人は解説や図解で補いながら読み直せます。通読が難しければ、気になる時代から入ってもいい。セットは「いつでも戻れる地図」を家に置ける感覚があるので、学びが継続しやすいです。

こんな人におすすめ

  • 世界史が点の暗記になりやすく、関係として理解したい人
  • 子どもの学習をきっかけに、親も一緒に学び直したい家庭
  • ニュースを読むときの背景知識を、体系的に持ちたい人
  • 一冊で完結せず、長期的に使える学習教材が欲しい人

感想

世界史を学ぶ価値は、年号を覚えることではなく、「いま見えている世界が、どう作られてきたか」を理解することだと思います。このセットは、その理解を“横のつながり”として作りやすいのが良かったです。例えば、ある地域の革命や産業の変化を読むとき、別の地域の植民地化や交易の変化も同じ地平で考えられるようになります。

もう1つ良かったのは、最新の出来事に触れている点です。現代史は、教科書だとどうしても薄くなります。このシリーズを読むと、歴史が「今の延長」に見えます。世界の見方が変わると、人間関係の見え方も変わります。国同士の対立や協力も、結局は利害と恐怖と希望の組み合わせです。その構図が見えると、ニュースに対して過剰に煽られにくくなります。

全巻を一気に読む必要はありません。むしろ、気になったところから読み、別の巻へ飛び、また戻る。そういう使い方ができるセットです。家に“世界を見る土台”を置きたい人にとって、長く効く投資になると思いました。

読むときは、最初から通読を目指すより、「この出来事は他の地域とどうつながるか」を1回だけ確認する読み方が合います。その1回が、世界史を点の暗記から外してくれます。セットは、そうした確認をすぐにできる。そこが最大の価値だと思います。

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    佐々木 健太

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