レビュー
概要
『じゃあじゃあびりびり』は、赤ちゃんが最初に出会う「ことば」と「世界」を、擬音語・擬態語でつないでくれる絵本です。車は「ぶーぶー」、犬は「わんわん」、水は「じゃあじゃあ」。説明の文章はほとんどなく、見開きごとに“音”と“絵”が対応しています。
赤ちゃん向けの本は、内容の豊かさより「繰り返しやすさ」が大事だと感じます。大人が同じ本を何度も読む前提で、短く、ズレにくく、気分が乗らない日でも開ける。本書は、その条件をきれいに満たしています。読むというより、生活の中で“鳴らす”本です。
もう1つの良さは、赤ちゃんの注意の向き方に合っていることです。細かい背景が少なく、目に入れる情報が整理されています。だから、指さしや「これ!」が起こりやすい。会話がまだできない時期でも、親子のやり取りが生まれます。
擬音語は、意味が分からなくても“気持ち”が伝わりやすい言葉です。例えば「びりびり」は、破れる音だけでなく、ちょっと怖い・ちょっと面白いという感情も含みます。赤ちゃんが言葉より先に感じている部分を、大人が音で代弁できる。そう考えると、本書は言語学習というより、感情の翻訳機に近い役割を持っていると思います。
読みどころ
1) 「名詞」より先に、「音」で世界とつながれる
赤ちゃんは最初から「車」「犬」といったラベルを持っていません。まずは、目の前の出来事のリズムや音から世界を切り分けていきます。本書は、そこに素直に寄り添っています。言葉を教えるというより、赤ちゃんが感じた世界を大人の声でなぞる。だから、押しつけになりにくいです。
2) 読み聞かせが“会話”に変わる導線がある
赤ちゃんとの時間は、どうしても一方通行になりがちです。反応が返ってこないように見えるから。でも、擬音語は反応を引き出しやすい。口の形も大げさにでき、声の高さも変えられます。赤ちゃんが笑う、目を見開く、手を伸ばす。その小さな返事を受け取って、また声を返す。この往復を作りやすい点が、本書の強みです。
3) 大人側の「読み方の迷い」を減らしてくれる
赤ちゃん向け絵本で意外に難しいのは、大人が“どう読めばいいか”迷うことです。物語がないぶん、間が持たないように感じてしまう。でも、本書は迷いません。書いてある通りに鳴らせば成立する。疲れている日でも、3分で親子の時間を作れます。継続しやすい設計です。
4) 生活の場面と自然に接続できる
この本の擬音語は、日常でそのまま使えます。蛇口から水が出るとき、車が通るとき、紙が破れるとき。絵本と現実がつながると、赤ちゃんは「同じだ」と気づけます。すると、絵本は“読むもの”から“世界の辞書”に変わっていきます。
5) 赤ちゃんの「まねしたい」を引き出せる
擬音語は短いので、赤ちゃんが口の動きを真似しやすいです。最初は音にならなくても、口を動かすだけで参加になります。参加できると楽しくなる。楽しいからまた開きたくなる。読み聞かせを習慣にするうえで、この小さな循環はかなり大事だと思います。
こんな人におすすめ
- 0〜2歳くらいの、最初の絵本を探している人
- 言葉を教えるより、親子のやり取りを増やしたい人
- 忙しくても、短時間で読み聞かせ習慣を作りたい人
- 祖父母や保育者など、赤ちゃんに何を読めばいいか迷っている人
感想
赤ちゃんとの読み聞かせは、教育というより「関係づくり」だと思います。意味が分かっていなくても、同じ音を同じリズムで繰り返すと、赤ちゃんは安心します。その安心が、次の好奇心につながる。本書を読むと、その順番が体感できます。
私がこの本で一番いいなと思うのは、赤ちゃんの反応が“正解”になるところです。ページをめくっても見ない日がある。途中で飽きる日もある。そこに罪悪感が生まれると、読み聞かせは続きません。でも本書は、赤ちゃんが好きなページだけを開いても成立します。今日は「じゃあじゃあ」だけでもいい。その柔らかさが、習慣を守ってくれます。
読むときのコツは、正確に読むことより、音を楽しむことです。少し誇張してもいいし、赤ちゃんが真似しようとしたら待ってもいい。指さしが出たら、ページから現実へつなげてみるのもおすすめです。「ほら、外もぶーぶーだね」と言って窓を指す。そういう小さな接続が、親子の共通言語を増やしていきます。
続け方の工夫としては、毎回ぜんぶ読まないこともおすすめです。朝は「ぶーぶー」だけ、夜は「じゃあじゃあ」だけ、と短く切っても十分価値があります。赤ちゃんの集中は短いので、集中が切れたら終わる。それを“失敗”にしない。本書は、そういう読書の作法を身につけさせてくれる絵本だと感じました。