レビュー
概要
『最新ビジネスマナーと今さら聞けない仕事の超基本 ビジュアル版』は、社会人としてのふるまいを「一度体系立てて点検したい」ときに役立つ、図解中心の実用書です。名刺交換や席次のような定番から、メール・電話・オンライン会議、チャットツールでの言葉遣いまで、現場で迷いやすいポイントを“見れば思い出せる”形でまとめています。
ビジネスマナー本は、正解を暗記する方向に寄ると息苦しくなりがちですが、本書は「なぜその所作が必要か」「相手がどう感じるか」を挟みながら、行動に落とす工夫がされています。新人の最初の一冊としても、数年働いた後の“抜け漏れチェック”としても使えます。
読みどころ
1) マナーを「形式」ではなく「相手への配慮」として整理している
挨拶や身だしなみ、表情、声のトーンといった要素は、知っていても忙しいと崩れます。本書は、相手の立場から見た印象の変化を丁寧に言語化していて、「できているつもり」の穴を突いてきます。
たとえば、謝罪やクレーム対応は“手順”が重要です。すぐに結論へ飛ばず、事実確認→共感→対応の提示→再発防止という流れを崩さない。ここは現場で効く部分なので、読み物としても実用性が高いと感じました。
席次(上座・下座)や訪問時の動きのように、知っていないと咄嗟に困る領域も、図で整理されています。こういう知識は、会議室のドア前で検索するのが一番つらい。事前に一度“型”を入れておくと、現場で余計な緊張をせずに済みます。
2) メール・電話・会議の基本が、具体例で固められている
メールは件名、宛名、要点、締め、署名という型がありつつ、状況によって温度感を変える必要があります。本書は、敬語の細部だけでなく「相手が読みやすい構造」に焦点が当たっているのが良いところです。
電話応対も、取り次ぎの一言や保留の使い方、復唱の癖など、やってしまいがちな失敗を前提に書かれています。会議についても、事前準備(目的・議題・資料)、当日の進行、議事録の要点が一続きで整理され、実務としての“会議力”に接続しています。
名刺交換も、単なる所作ではなく「相手の名前と所属を確実に受け取る」ための儀式として説明されます。受け取った名刺の扱い(すぐしまわない、商談中は机上に置くなど)や、相手の呼び方に直結する点は、実務で刺さります。細部を丁寧に扱うほど、ミスが減ります。
3) 「仕事の超基本」が、マナーと地続きで語られる
本書が“マナー本”にとどまらないのは、報連相、優先順位、スケジュール管理、ミスの防ぎ方など、成果に直結する基本動作がまとまっている点です。マナーは表面の礼儀に見えますが、結局は「相手の時間を奪わない」「不安を増やさない」ための技術でもあります。
その意味で、言葉遣いの本というより、仕事の摩擦を減らすための総合点検表として読むと、効果が大きい一冊です。
現代っぽいところでは、チャットやオンライン会議での配慮も扱われます。スタンプや短文が当たり前の環境ほど、言葉の温度感がズレて誤解が起きやすい。「要件→期限→依頼」の順に書く、未読前提で結論を先に置く、相手の時間帯を意識して送る、といった小さなルールが、積み上がると信頼になります。マナーを“速度”と両立させる観点が入っているのは、今の働き方に合っています。
読み終えたあとに「明日から直す点」が具体的に残るのが、この手の本として大きな強みです。
類書との比較
古典的なビジネスマナー本は、冠婚葬祭や儀礼まで含めて分厚くなりがちです。本書は、日常の業務コミュニケーションに寄せているため、必要十分な範囲が掴みやすい。特に、オンライン・チャットのやり取りまで射程に入れている点は、現代の実務に合っています。
一方で、業界固有の慣習(金融・官公庁・医療など)までカバーする本ではありません。職場の文化が強い場合は、本書の“原則”を土台に、社内ルールで上書きする読み方が現実的です。
こんな人におすすめ
- 新人として「最低限の型」を早く身につけたい人
- 数年目で、自己流になった所作を総点検したい人
- メール・電話・会議が苦手で、具体例から学びたい人
- チャット中心の職場で、言葉の温度感に迷う人
感想
マナーは、間違えると恥ずかしいから学ぶ——という発想だと続きません。本書を読んで良いと感じたのは、マナーを「相手の負担を減らすための設計」として捉え直せるところです。メールの書き方1つでも、要点が先に出ているだけで相手の判断が速くなる。電話の取り次ぎが滑らかなだけで、相手の不安が減る。そういう“摩擦の総量”を減らす技術として見ると、学ぶ意味が腑に落ちます。
そして、ビジュアル中心の構成は、忙しい時に効きます。必要な場面で開けばすぐ確認できる。机の横に置いておける実用書として、ちょうどいい距離感の一冊でした。
読後に残す3つのメモ(行動につなげる)
読み終えた直後の余韻は、数日で薄れていきます。 次の3つだけメモしておくと、この本(この巻)の学びや刺さった感情を、日常に持ち帰りやすくなります。
- 刺さった一文/場面(どこが動いたか)
- それが刺さった理由(いまの自分の状況との接点)
- 明日から変える小さな行動(または、やめること)