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レビュー

概要

『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』第1巻は、2024年10月29日にヤングアニマル系列で連載中のグルメギャグマンガを単行本化した作品。主人公の望月美琴は21歳の営業事務。おっとりした雰囲気ながら、恋人でもないほどの集中力で大量の食事に突入する“ドカ食い”を己の幸せとし、山盛りの料理を食べて「至る」様子が描かれる。『Next Manga Award 2024』の特別賞「冷凍食品はニチレイ賞」を受賞し、X(旧Twitter)トレンド1位を記録した話題作で、連載ペースも隔月から月刊へと前倒しになったほどの勢いがある。『白泉社』のプレスリリースではCoCo壱やセブン-イレブンとのコラボも発表され、単行本化を契機にタイアップや描き下ろしが積み重なっている。

読みどころ

  • 望月さんの食べっぷりが一番のエンタメ。彼女はトンカツ・カレー・ラーメンなどのボリューム料理を目の前にすると、ゆるやかに表情が変化し、静かに舌鼓を打つ。そこから一気にペースを上げ、脳内で“至る”状態に至るまでをモノローグ入りで俳句のごとく描き、ただの大食い描写に留まらない快楽描写になっている。
  • 仕事終わりのサラリーマンあるあるを背景に置き、立ち寄ったコンビニ・ラーメン屋・カレー店などで展開される“ドカ食い”の一連の流れを細かく追う。ニチレイやセブン-イレブンとのコラボ回では冷凍食品やコンビニ飯のアレンジが紹介されるため、読者も実際に同じメニューを試したくなるような描写が多い。
  • 連載開始時点でXトレンド1位を取ったという話題をストーリーにも生かし、社会的な「暴食」というテーマをギャグとして立て直す力がある。例えば、CoCo壱とのタイアップ回では「肉塊LEVEL」など複数の重量感あるメニューを階層化して紹介し、読者側も食欲と笑いの両方を楽しめる。
  • 表現方法として、食べるタイミングを細かくコマ割りし、噛む、のどを通す、汗が流れる、といった身体反応を写実的に描いている。重力を感じるほどのコンビニ飯回では、食べた後の身体の重さもまるで装飾になるような線で描かれており、「食いすぎ」の感覚そのものが画面の特徴になっている。
  • 職場の同僚や先輩もツッコミ役として頻繁に登場し、望月さんへの「それ食べるの?」という反応があるたびに、読者側も“これが許される空間”に引き込まれていく。

類書との比較

『食戟のソーマ』や『クッキングパパ』と比べると、本作は料理対決や調理描写ではなく“食べること”そのものにフォーカスしている。前者は料理をテーマにした戦いの構造が中心だが、もちづきさんは自分にとっての“至り”を追い求める常人離れした食欲を軸にしており、日常系×変異体のハイブリッドが特色だ。『デブと呼ばないで!』のような大食い系作品よりもギャグのテンポが早く、Xトレンドを起点にした社会性も漂わせている。食べ物そのものを人物化する作風は、同じく食を題材にした『飲食店で働く彼女〜』系のリアルの感覚よりも、虚実の間をふわふわと漂うカーニバル的な雰囲気が強い。

こんな人におすすめ

  • ストレスや疲れを一気に発散する笑いと、食べるモチベーションを同時に味わいたいオタク。
  • 少女漫画の甘さよりも、食の暴走を笑いに転換する尖ったユーモアを求める成人読者。
  • コンビニ飯、冷凍食品、カレー屋などのリアルな食体験から元気をもらいたい社会人。
  • 「食べてもいいんだ」と感じられる許容感が欲しい読者。胃袋が主役になれる特殊な瞬間を探している人。

感想

  • 見開きで12段階の食事ステップを描き、食べる前から「至る」過程を丁寧に追っていく構成が斬新。大食い自体をストーリーの起爆剤とする点が癖になる。
  • コラボ回が単行本に混ざることで、実在のメニューを使ったギャグがリアルさを帯びており、読後すぐにセブン-イレブンやCoCo壱のメニューを制覇したくなる。
  • 日本トレンド1位の結果に応じて連載ペースを月刊化したという話は、この作品が読者のリアクションをストレートに反映している証拠だ。
  • 大きな山盛り食が続いても、望月さんが太る描写がほぼなく、むしろその後の“至る”表情をリソースにしたギャグにする韻がとれる。
  • 21歳の女性主人公が自分の体と向き合いながら食べる姿には、「食べること=自己表現」というニュアンスがあって、単なる大食い描写を超えた喜びがある。
  • 毎回の食事が彼女の気分や人間関係と交差しており、食べることが喉を通る前に心を通過する構造になっている点もいとおしい。

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    高橋 啓介

    大手出版社で書籍編集を10年経験後、独立してブロガーとして活動。科学論文と書籍を融合させた知識発信で注目を集める。
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    佐々木 健太

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