Kindleセール開催中

297冊 がお得に購入可能 最大 99%OFF

レビュー

『ビジネス英語のコロケーション』は、英単語を「単体」で覚える学習から一段進んで、現場で通る“まとまり”としての英語を鍛える問題集だ。扱うのはコロケーション(連語)。たとえば紹介文に出てくる sales figures(売上高)や cash transaction(現金取引)のように、単語同士が結びついて初めて自然に聞こえる語句のかたまりがテーマになる。

本書の形式はシンプルで、日本語の会話文を英訳する。日本語文の下線部がコロケーションに当たり、そこを適切な英語に置き換える。問題数は全100問で、1問1答式。つまり、隙間時間に回せるように作られている。英語学習の本は「読むだけで分かった気になる」罠があるが、本書は書く(口に出す)方向へ強制的に寄せるので、知識が“使える形”で残りやすい。

具体的に良いところ:単語暗記の弱点を、問題設計で補う

ビジネス英語の学習でよくある壁は、「単語は知っているのに言えない」だ。原因は2つある。ひとつは、単語の意味だけ覚えても、どの単語と結びつくかが曖昧なこと。もうひとつは、日本語の発想から英語の語順へ切り替える場面で迷うこと。本書は、その両方に効く。

まず、下線部でコロケーションを狙い撃ちするので、「この場面ではこの組み合わせが定番」という感覚が育つ。次に、会話文の英訳を繰り返すことで、単語選びと同時に語順の癖も矯正される。単なる穴埋めより負荷が高いぶん、現場で出る確率が上がる。特に、メールや会議で“それっぽい英語”を避けたい人には、この反復が効く。

つまずきやすい点:答え合わせを「音」で補いたくなる

一方で、1問1答式の英訳は、正解の形を暗記する学習にもなりやすい。暗記自体は悪くないが、発音やイントネーションの手触りがないと、会話で出てこないこともある。だから本書を使うなら、解答を目で見るだけで終わらせず、声に出して口を慣らすのが良い。コロケーションは“見た目”より“音のまとまり”として定着したほうが強い。

回し方の提案:100問を「週2周」で回す

100問という数は、全部やろうとすると意外に重い。だから最初は完成度を求めず、回転数を上げたほうがいいと思う。たとえば次の回し方だ。

  1. 1周目はテンポ優先で解く(迷ったら仮で出す)
  2. 解答を見て、知らなかったコロケーションだけマークする
  3. 2周目はマークした問題だけを解き直す

これを週2回繰り返すと、「知らなかった表現」が短い周期で口に残る。会議前やメール作成前など、使う直前に1周目のテンポで解いておくと、“思い出す訓練”がそのまま本番に接続しやすい。

類書との比較

コロケーションの類書には、辞書のように組み合わせを網羅する本もある。網羅型は参照に強い一方で、実戦で出す筋力は別途必要になる。また、TOEICの頻出フレーズを集めた本は、試験には効くが、会話で自然に出るかは別問題になりやすい。

本書は問題集型で、参照より想起へ寄る。だから、手元に置いて「調べる」より、短時間で「反復する」使い方が合う。網羅型の類書を持っている人ほど、本書を“運用の練習”として追加すると役割分担がはっきりする。

辞書型を参照用に持っている人ほど、本書は「出す練習」の相棒になりやすい。

もう一点、ビジネス英語のコロケーションは分野で偏りが出やすい。財務なら数字と推移、営業なら提案と合意、総務なら手続きと規程といった具合に、定番の組み合わせが変わる。本書は問題集なので、まずは自分が使う場面で“出したい組み合わせ”が増えているかを見ながら回すと効率がいい。英語は正しさより、場面に合う自然さが信頼を作る。本書はその自然さを、短い反復で積み増せる。

メールで書ける表現が増えると、会議でも同じ表現が出やすくなる。書く→話すの順で定着する人も多いはずだ。本書は英訳タスクなので、その導線が自然にできる。会話の瞬発力を上げたい人でも、まずは文章として出せる状態を作ると伸びが早い。

補足:フレーズ集と比べて「思い出す訓練」に寄っている

ビジネス英語の類書は、フレーズ集や例文集が多い。そうした本は、正しい表現を“見せる”のが得意だ。ただ、見た表現を自分の場面で再現するには、もう一段の訓練が必要になる。

本書はそこを逆にしている。最初から英訳タスクを課し、思い出す筋力を作る。つまり、知識を増やす本というより、知識を引き出す本だ。コロケーションを辞書的に網羅するタイプではないが、反復に向いた設計なので、「知っているのに出ない」を縮めたい人ほど相性がいい。

こんな人におすすめ

  • ビジネス英語で、単語は出るが言い回しが自然にならない人
  • TOEICの点数より、会議・メールで使える英語を増やしたい人
  • コロケーションを“覚える”より“出す”方向で鍛えたい人

英語は単語の足し算ではなく、まとまりの運用だ。本書はその運用を、100問の反復に落とし込んでいる。派手さはないが、地味に効くタイプの問題集だ。

この本が登場する記事(1件)

本の虫達

要約・書評・レビューから学術的考察まで、今話題の本から知識を深めるための情報メディア

検索

ライター一覧

  • 高橋 啓介

    高橋 啓介

    大手出版社で書籍編集を10年経験後、独立してブロガーとして活動。科学論文と書籍を融合させた知識発信で注目を集める。
  • 森田 美優

    森田 美優

    出版社勤務を経てフリーライターに。小説からビジネス書、漫画まで幅広く読む雑食系読書家。Z世代の視点から現代的な読書の楽しみ方を発信。
  • 西村 陸

    西村 陸

    京都大学大学院で認知科学を研究する博士課程学生。理系でありながら文学への造詣も深く、科学と文学の交差点で新たな知の可能性を探求。
  • 佐々木 健太

    佐々木 健太

    元外資系コンサルタントから転身したライター。経済学の知識を活かしながら、健康・お金・人間関係の最適化を追求。エビデンスベースの実践的な知識発信を心がける。

Social Links

このサイトについて

※ 当サイトはアフィリエイトプログラムに参加しています。