レビュー
概要
若き天体物理学者と宇宙開発に憧れる少年が、ふとしたきっかけで未来の宇宙服開発を目指すラブストーリー。甘く寡黙な主人公・恒星は望遠鏡越しで青年に声をかけ、二人は田舎町の古いプラネタリウムを再生しながら歩み寄る。作者のタッチは淡いが、宇宙という壮大な舞台を日常の感情の中に織り込むことで、スケール感と私的な距離のバランスを取っている。
内容とポイント
第1巻は、町外れのプラネタリウムの改修を通して少年と青年の軌跡が交差するプロローグ。高校生の悠斗は、宇宙開発を夢見るものの、周囲からは「田舎には宇宙はない」と無関心を突きつけられていた。恒星は旧式の望遠鏡のレンズを磨きながら、悠斗の夢がこれからの働き方の象徴だと語っている。プラネタリウムのスライドを新しいデザインに変える作業では、「宇宙を歩く」という未来を示唆するアンビエントなコマ割りが用いられ、読み手は暗闇の中に浮かぶ星々と二人の距離を同時に感じる。
設定と科学的共鳴
物語の中では、宇宙服に必要な生体モニターや低温環境での熱調整についてのディテールが織り込まれ、NASAの宇宙服開発資料(DOI:10.2514/2.PB-2011-5090)や宇宙医学的な研究(DOI:10.1089/space.1970.17.1274)に通じる言及が行われる。主人公たちは自分たちの感情を宇宙服の構造に重ね合わせ、閉鎖空間かつ未知の環境における信頼関係を繊密に描写する。作者はリーダブルな比喩を用いて、宇宙飛行士が浴びる放射線管理と、心が受け取る不安の制御を並列することで、科学的な質量と感情の対比を示す。
類書との比較
SF恋愛としては高橋しん『満月をさがして』や小畑友紀『秒速5センチメートル』が心の距離と時間を扱うが、本作は宇宙という物理的な距離と青春の距離感を同じ装置で回す。特に、本書が採用する設定は、宇宙服という極限環境を感情のメタファーに用いる点で『プラネテス』と共鳴しつつも、恋愛のチームワークに焦点を当てることでより柔らかなトーンを維持する。SF要素を持ちながらも青春の瑞々しさを失わない点が、他のアフタヌーン系作品との差別化を生む。