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レビュー

概要

『ChatGPT API×Excel VBA 自動化仕事術』は、ブラウザーでChatGPTを使う段階から一歩進み、Excelの中にAIを組み込んで業務フローそのものを変えるための本です。単に「AIに質問して答えをもらう」ではなく、ワークシート上のデータ、VBAの処理、API経由の生成をつなぎ、日々の定型作業を自動化するところまで射程に入れています。

本書の強みは、プロンプト集ではなく、仕組みとしての自動化を教える点にあります。著者はChapter1でChatGPTの基礎と事前準備を整理し、Chapter2でExcel VBAとChatGPT APIの連携、Chapter3でExcelとの基本テクニック、Chapter4で業務適用の実践テクニックへ進みます。つまり、思いつきの便利ワザではなく、「APIを理解し、VBAから呼び出し、業務に乗せる」までを順番に学べる構成です。

本の具体的な内容

まず序盤では、ChatGPTをWeb画面で使う場合とAPIとして使う場合の違いが整理されます。ここがこの本の土台です。ブラウザー版は対話しやすい反面、生成結果をコピペしたり、同じ作業を何度も繰り返したりするとすぐに手作業が増えます。一方でAPIを使えば、Excelに入っているデータをそのまま入力に回し、回答もセルやシートに戻せる。この違いをつかむだけでも、本書が単なるAI活用本ではなく、自動化の設計書だと分かります。

Chapter1では、その前提となるChatGPTの基礎と事前準備が扱われます。ここではAPIの考え方をいきなり高度な開発用語で押し切らず、「あるプログラムの機能を別のプログラムから使う」という水準までいったん平たく下ろしてくれるのが親切です。Excelしか触ってこなかった人にとって、VBAから外部サービスを呼ぶという発想自体が壁になりやすいので、この助走はかなり重要です。技術書としては地味ですが、ここを省かないから後半の実装が読みやすくなっています。

Chapter2では、いよいよExcel VBAとChatGPT APIを接続していきます。VBAからリクエストを送り、返ってきた生成結果をExcelに反映する流れが本格的に登場し、Excelが単なる表計算ソフトではなく、AIを外部機能として呼び出すハブになる感覚が見えてきます。ここで価値があるのは、VBAに慣れている人なら「既存のExcel業務の延長でAIを入れられる」と理解できることです。新しいSaaSへ全面移行する話ではなく、今ある業務資産の上にAIを足す発想なので、現場導入のハードルが低いのです。

Chapter3の「Excelと組み合わせる基本テクニック」は、本書の読みどころの1つです。単発の対話ではなく、シートに並んだ複数行のデータをまとめて処理したり、ChatGPTをワークシート関数のように扱ったりする発想が出てきます。ここまで来ると、AI活用が「たまに便利」から「処理の一部として常時動く」へ変わります。Excelにある文字列を整形する、表形式の情報を別の見せ方に変換する、判断の補助を得るといった用途が見えやすく、API連携の面白さが最も実感しやすい章です。

Chapter4の実践パートでは、より業務寄りの使い方が示されます。たとえば問い合わせを分類し、その内容に応じて商品在庫確認のような後続処理につなげる例や、複数のWebページの情報を要約してワークシートに転記する例、製品比較表を自動生成する例などが紹介されます。ここで重要なのは、ChatGPTを万能判定機として持ち上げるのではなく、Excelが持つ集計・蓄積・後処理の強みと組み合わせて使うことです。生成AIだけで完結しない処理もあれば、Excelだけでは足りない処理もあります。両者の得意分野で分担させる考え方は今でも十分実用的です。

また、本書を読んでいて感じるのは、「自動化の単位」が現実的だということです。企業システム全体を再構築するような話ではなく、現場担当者が毎日やっている転記、分類、要約、比較表作成のような作業から着手する。そのため、壮大なAI戦略よりも、まず1つの業務を10分短縮するような改善に向いています。こうした粒度感は、実務書としてかなり信頼できます。

一方で、本書は2023年刊行のため、API画面や利用時の細かな設定、モデル名の最新事情は現在の環境に合わせて読み替える必要があります。ただし、それでも価値が落ちにくいのは、中心にあるのが製品仕様ではなく、Excel業務へAIをどう埋め込むかという設計思想だからです。技術書の寿命を決めるのはUIではなく考え方だと、改めて感じました。

類書との比較

ChatGPT本には、プロンプトの工夫を集めた本や、ブラウザー上での使い方にとどまる本が多くあります。それらは導入には向いていますが、処理の自動化まで進めたいときには一段物足りません。本書はそこを埋めてくれる一冊です。特に、Excel VBAという多くの現場に残っている道具を使うため、ノーコード礼賛の本より現実的です。

また、VBA本として見ても、単なる文法書ではなく「外部AIをどう業務に接続するか」を扱う点が新しいです。Excelを使い続ける現場の事情を踏まえたうえで、生成AIを追加レイヤーとして活用する発想は、実務向け技術書としてかなり強いと思います。

こんな人におすすめ

  • Excel中心の業務で、要約、分類、転記、比較表作成を少しでも自動化したい人
  • VBAは触れるが、生成AIをどう業務フローに入れればよいか分からない人
  • AI活用を単発の対話で終わらせず、仕組みとして運用したい現場担当者や管理者

感想

この本のよさは、ChatGPTを魔法の箱として扱わないことです。あくまでExcel VBAの流れの中に置き、どの入力を渡し、どの出力を受け取り、どこで人間が確認するかまで考えさせます。そのため、読後に残るのは「すごそう」という印象ではなく、「この作業なら明日から置き換えられる」という具体像です。

特に印象に残ったのは、問い合わせ分類や複数Webページ要約のような、現場で本当に起こるタスクを扱っている点でした。生成AIは抽象的に語ると何でもできそうに見えますが、実際に効くのはこうした反復的で構造化しやすい仕事です。本書は、その見極めを自然に身につけさせてくれます。Excelに依存した業務がまだ多い職場ほど、読んだあとに試したくなる本でした。

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    佐々木 健太

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