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レビュー

概要

『実はオレ、ED治療中。』は、勃起不全というきわめて個人的な悩みを、当事者の視点からかなり率直に書いた体験談です。医師が症状や治療法を体系立てて解説する医学書ではなく、「誰にも言えない」「検索はするが受診は怖い」「パートナーとの関係までぎくしゃくしてしまう」といった、悩みの入り口そのものを言葉にしてくれる本として読むのが近いです。

タイトルだけ見ると勢いの強い告白本にも見えますが、実際に読んでみると、中心にあるのは刺激よりも整理です。症状に気づいた時の動揺、男らしさと結びついた自尊心の傷つき方、パートナーにどう話すか、病院へ行くまでの迷い、治療を始めた後に気持ちがどう変化したかが順を追って語られるので、同じ問題を抱えている人ほど「自分だけの異常ではない」と感じやすい構成になっています。

読みどころ

本書がいいのは、EDを単なる性機能の問題として片づけない点です。

仕事の疲れ、睡眠不足、食生活、ストレス、年齢への焦り、夫婦関係や恋人関係の距離感など、背景にある負荷がどう重なっていくかが見えてきます。

読めば、原因が1つではないと理解しやすいです。

だから、ただ恥ずかしい体験を打ち明けるだけで終わる内容ではありません。

また、受診へのハードルを下げる語り口もよくできています。EDについての情報はネット上にたくさんあります。とはいえ、実際には「病院で何を聞かれるのか」「診察でどこまで話すのか」「薬をどう受け止めればいいのか」と不安になる人が多いはずです。そのせいで最初の一歩が踏み出せない。本書はそこをかなり具体的に拾っていて、治療の前に心が折れないように支える役割を果たしています。

さらに、パートナーとの関係について書かれている部分も重要です。EDは本人だけの問題に見えますが、実際には沈黙や遠慮が関係全体を悪化させやすいテーマです。本書はそこを理想化せず、気まずさやすれ違い、話し合いの難しさまで含めて語ります。だからこそ、同じ悩みを持つ人だけでなく、相手の変化に戸惑っている側にとっても参考になる部分があります。

類書との比較

EDやセックスレスを扱う本には、大きく分けて医学的な解説書と、夫婦関係・男女関係の本があります。本書はその中間というより、もっと当事者寄りです。症状や治療法を客観的に整理することより、「悩んでいる本人の頭の中はこうなりやすい」という流れを見せることに力点があります。医学的な情報を網羅したい人には別の本が必要です。その一方で、すでに知識は調べたのに動けずにいる読者には、むしろこちらの方が届きやすいと思います。

同種の体験談と比べても、本書は悲壮感を過度に強調しすぎません。

深刻な問題ではあります。

それでも、「終わりだ」と煽るより、「まずは状況を認めてみる」「相談してみる」「生活全体を整えてみる」という順番を重視しています。

だから、読む側も過度に追い詰められず済みます。

こんな人におすすめ

  • EDやセックスレスの悩みを抱えつつ、病院や相談窓口へ踏み出せずにいる人
  • 医学的な知識だけではなく、当事者がどう迷い、どう動いたかを知りたい人
  • パートナーの変化に戸惑いながら、どう向き合うべきか考えたい人

感想

この本を読んでいちばん強く感じたのは、性の悩みに必要なのは正しさだけではなく、「話してもいい」と思える空気なのだということです。情報だけなら検索すれば見つかりますが、自分のこととして受け止めた瞬間に、羞恥心や敗北感が先に立ってしまう。本書はその感情を先回りして受け止めるので、読者はようやく知識や行動に手を伸ばせるようになります。

もうひとつ良いのは、読者を必要以上に煽らないことです。男性の悩みを扱う本には、不安を刺激して商品や治療へ誘導するものもありますが、本書はあくまで「困っているなら一人で抱え込まない方がいい」という線を守っています。この落ち着きがあるので、読後に変な焦りだけが残ることもありません。

もちろん、この一冊だけで医学的な判断まで済ませるべきではありません。それでも、沈黙と自己否定のなかで悩みをこじらせるより、自分の状態を認めて動き出す方がいいと背中を押してくれる力は確かです。テーマの重さに対して語り口が過度に深刻すぎず、それでいて軽薄でもない。体験談としての役割をきちんと果たしている一冊だと思いました。

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    佐々木 健太

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