『ペットロスは「克服」しなくていい!: ペットロス・カウンセラーが教える、今からできる5つのステップ』レビュー
著者: 福田綾子
出版社: ワンワールド出版
¥300 Kindle価格
著者: 福田綾子
出版社: ワンワールド出版
¥300 Kindle価格
『ペットロスは「克服」しなくていい!』は、ペットを失ったあとに生まれる深い悲しみを、「早く立ち直らなければならない問題」として扱わない本です。タイトルどおり、この本がまず伝えるのは、悲しみを無理に終わらせようとしなくていいという立場です。大切な存在を失ったあとに起きる心身の反応を自然なものとして認め、そのうえでどう付き合っていくかを整理していきます。
本書が実用的なのは、気持ちの話だけで終わらないところです。喪失直後の混乱、罪悪感、周囲に分かってもらえない苦しさ、生活リズムの崩れといった状態を段階的に見ながら、自分に何が起きているのかを言葉にしていきます。「悲しみを消す」より「悲しみと一緒に生きる」を目指す構えなので、励ましに傷ついてきた人ほど受け取りやすい一冊です。
一般的なグリーフケア本は、人の死別を広く扱うため、ペットとの関係特有の痛みに深く入らないことがあります。本書はペットロスに絞っているので、通院、介護、看取り、最期の判断、周囲に理解されにくい悲しみなど、当事者にとって切実な論点に届きやすいです。
また、単なる慰めの本とも違います。優しい言葉だけを並べるのではなく、感情をどう扱うか、生活をどう戻すかまで踏み込みます。そのため、寄り添いと実務のバランスがいいです。今すぐ泣きたい人にも、少し落ち着いて整理したい人にも、どちらにも使いやすいタイプの本だと感じます。
この本を読んでよかったのは、悲しみを未熟さや執着として扱わないところでした。大切にしていた存在を失ったのだから、つらくて当然です。その当たり前を丁寧に確認しながら進めてくれるので、読者はまず自分を責めなくてよくなります。そこが出発点になるのは大きいです。
もう1つ良かったのは、「忘れること」が回復ではないと示してくれる点です。思い出して泣く日があってもいいし、写真を見られない時期があってもいい。その揺れごと受け止めたうえで、どう日常へ戻るかを考えられるので、やさしいだけでなく現実的でした。ペットロスに関する本を一冊だけ選ぶなら、かなり手に取りやすい実用書だと思います。
ペットと暮らした時間が長いほど、生活の隅々に思い出が残ります。食器、散歩の時間、病院の記録、写真、空いた寝床。そうした日常の痕跡に触れるたび苦しくなるのは自然なことです。本書は、その自然さを何度も確認しながら、少しずつ生活を立て直す方向へ読者を導きます。だから、読んでいて無理に元気を装わなくていいのが大きいです。
また、悲しみを一人で抱え込んでいる人ほど、この本の「言葉にする」姿勢は助けになると思います。感情は整理できなくても、いま何がつらいかだけは書ける。写真を見られない、食欲がない、誰にも分かってもらえない。そこから始めていいと示してくれるので、悲しみの真ん中にいる人でも手を伸ばしやすい本になっています。
ペットを失ったあとの本を探している人にとって、強い励ましはときに逆効果です。その点、この本は急かさず、でも立ち止まったままにもさせません。やわらかさと実用性の両方があるので、長くそばに置ける本だと感じました。
再読にも向いています。 気持ちの波がある時期にも読み返しやすい一冊です。 悲しみの深さを否定しない姿勢もぶれません。 焦らなくていいと教えてくれます。