レビュー
概要
本作1巻は、料理漫画というより「食べ物で遊ぶ発明ギャグ」に近い作品です。主人公のコンブが、家にあるお菓子や調味料、加工食品を自由に組み合わせて、「リトルグルメ」と呼ばれる変わり種メニューを次々に作っていきます。高級料理の再現を目指す話ではありません。本格的な料理修業の物語でもありません。子どもの発想力と勢いで「それを混ぜるのか」と突っ走る。その無茶さが、この漫画の魅力です。
1巻の面白さは、味の説得力より先に、組み合わせのインパクトで笑わせてくるところにあります。冷蔵庫やお菓子箱の中身がそのまま遊び場になるので、読んでいると「自分なら絶対やらない」と思いながらも、なぜか最後まで見届けたくなります。90年代らしい明るいテンションと、食べることそのものを遊びへ変える発想が濃く詰まった導入巻です。
読みどころ
いちばんの読みどころは、料理漫画の常識をほとんど無視して進むところです。普通のグルメ漫画なら、素材の背景や職人技、食べた時の感動が軸になります。けれど本作では、「そんな材料を混ぜるのか」「本当にそれでおいしいのか」という驚きが先に来ます。その飛躍の大きさが笑いになっていて、結果として“食”を題材にした発明漫画のような読み味になっています。
また、コンブのキャラクターが作品の勢いを支えています。うまくいくかどうかを深刻に考え込まず、とにかく試してみる。子どもらしい無鉄砲さで料理に向かうので、リトルグルメの無茶苦茶さも嫌味になりません。大人が読むとかなり強引に見えるのに、子どもの遊びとして見ると妙に筋が通っている。このバランス感覚が独特です。
さらに、1巻はギャグのテンポがとても速いです。材料を思いつく、作る、食べる、驚く、という流れが短いスパンで回るため、発想の連打がそのまま作品のリズムになります。細かい理屈で止まらないので、ページをめくる手が止まりません。料理が主題でありながら、読後感はほとんどギャグ漫画です。
類書との比較
食漫画で比べるなら、『美味しんぼ』や『クッキングパパ』のような“ちゃんと食べ物をおいしそうに見せる作品”とはかなり方向が違います。本作は再現性や実用性より、発想の飛躍と笑いを優先しています。そのため、料理の参考書として読む本ではありません。食材の組み合わせそのものをネタに変えるギャグ漫画として読むほうが、ずっと面白さが伝わります。
また、近いのは発明系の児童漫画や、子どもの悪ノリを肯定するタイプのコメディかもしれません。食べ物を題材にしているからこそ身近で、誰でも「これはありなのか」と反応できる。料理漫画の姿を借りた遊びの漫画、という位置づけがしっくりきます。
しかも本作は、子どもの世界のスケール感を大事にしています。大人から見れば小さな台所遊びでも、本人たちには一大イベントです。その誇張の仕方がまっすぐなので、読み手も「くだらない」で切り捨てにくい。真面目な料理漫画とは別の方向で、食べ物へのわくわくをちゃんと引き出してくれます。
こんな人におすすめ
- 90年代の子ども向け漫画の勢いを味わいたい人
- 料理の実用書ではなく、食べ物ネタのギャグ漫画を読みたい人
- 常識外れの組み合わせで笑わせる作品が好きな人
- 子どもの頃の「変な食べ方を試したい気持ち」を思い出したい人
感想
この1巻を読み返して強く感じるのは、「食べ物で遊ぶ」ことへの後ろめたさより先に、試してみたい気持ちの強さが出ている点です。もちろん大人の目で見ると無茶な組み合わせも多いのですが、それを真顔で押し切るからこそギャグとして成立しています。笑いの軸が「味の繊細さ」ではなく「発想の勢い」にあるので、今読んでも古びにくいところがあります。
もう1つ良いのは、コンブのアイデアが高価な材料に頼らないことです。家にありそうなものを混ぜるからこそ、読者も想像しやすいし、笑いも身近になります。真似するかどうかは別として、「子どもの頃に一度は考えた無茶」を漫画として真正面から肯定してくれる感じがある。その無責任な楽しさが、本作のいちばん強い魅力だと思いました。
読み終えると、料理漫画のうまさとは別の尺度を思い出します。おいしいかどうかだけでなく、作っている本人がどれだけ楽しそうか。その原点のようなものが、この1巻には詰まっています。子どもの悪ノリと創意工夫がそのまま作品のエネルギーになっていて、独特の読み味がしっかり残りました。
懐かしさだけでなく、発想の勢いそのものが今読んでも新鮮です。