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レビュー

概要

『やる気が上がる8つのスイッチ』は、モチベーションを根性論で語らず、「人によって効く刺激が違う」という前提から整理してくれる本です。やる気が出ないとき、私たちはつい「気合いが足りない」「目標設定が甘い」と考えがちです。本書は、そもそも自分や相手の動き方にはタイプ差があると見ます。そのうえで、どういう声かけや目標設定が効きやすいのかを8つのパターンに分けて説明していきます。

本書が面白いのは、「やる気を出す方法」を1つに決め打ちしないところです。褒められると動く人がいます。失敗したくない気持ちで動く人もいます。締切があるほうで頑張れる人もいれば、自由度の高い環境で伸びる人もいます。そうした差を前提にしているので、自分に使えます。相手への働きかけにも使えます。

読みどころ

最大の読みどころは、モチベーションを自己理解と他者理解の両方に使えるところです。自分はどんな条件だと動きやすいのか、逆にどんな言われ方をすると止まってしまうのかが見えてくるので、セルフマネジメントに直結します。同時に、部下、同僚、子ども、パートナーに対して「なぜこの励ましが効かないのか」も考えやすくなります。

また、本書はタイプ分類で終わらず、実際の言葉かけや進め方へ落としているのがよいです。前向きな成果を示したほうが動く相手なのか、損失回避を示したほうが動く相手なのか。まず小さな成功体験が必要なのか、具体的な締切が必要なのか。そうした違いを会話や段取りのレベルで扱うので、明日から試しやすいです。

さらに、やる気が出ない状態を「怠け」ではなく「設計ミス」として見直せるのも大きいです。目標の見せ方、進捗の区切り方、評価の受け止め方が合っていないだけで、人は驚くほど動けなくなります。本書を読むと、モチベーションの問題を性格のせいにしすぎなくなります。これは管理職にも、勉強や副業を続けたい個人にも役立つ視点です。

やる気が続かない理由を、意志の弱さだけへ還元しなくてよくなるのは大きいです。励ましが重荷になる人もいます。曖昧な指示では動けない人もいます。本書は、その違いを言葉にしてくれます。チームのすれ違いを減らすヒントにもなります。

類書との比較

モチベーション本には、夢や理念を語るタイプのものと、習慣化テクニックを列挙するタイプのものがあります。本書はその中間で、心理学の知見を使いながら「人に合わせて方法を変える」点に特徴があります。ひとつの正解を押しつけないので、現場で使いやすいです。

一方で、哲学的な生き方論を期待する人には少し実務寄りに感じるかもしれません。本書は内面の深掘りより、「どう働きかければ行動が起きるか」に重心があります。だからこそ、仕事や家庭ですぐ使える本になっています。

こんな人におすすめ

部下や後輩のやる気に悩むマネージャー、子どもや家族への声かけに迷う人、自分の勉強や副業を継続したい人に向いています。特に、「正論を言っているのに相手が動かない」と感じている人には相性がいいです。

逆に、やる気の源泉を人生観レベルで深く掘り下げたい人には少し即効性重視に見えるかもしれません。本書は思索の本というより、使う本です。

感想

この本を読んでよかったのは、「やる気が出ない」の中身を雑に扱わなくなったことです。以前は、やる気がないならもっと危機感を持てばいい、もっと小さく区切ればいい、と単純に考えがちでした。でも本書を読むと、同じ方法が全員に効くわけではないとよくわかります。

とくに役立ったのは、相手を動かす前に、自分がどのタイプの言葉に反応しやすいかを考える視点でした。成果を見せられると動きやすいのか、締切で追われるほうが集中できるのか。そこが見えるだけでも、目標設定の仕方がかなり変わります。チームマネジメントにも個人の習慣づくりにも効く、実用度の高い一冊でした。

仕事だけでなく、家での声かけにも応用しやすいのもよかったです。子どもやパートナーに対して、「正しいことを言っているのに伝わらない」と感じる場面は多いですが、それは相手のスイッチが違うだけかもしれません。人を雑に励まさないための本としても、かなり価値があると思います。

この本のよさは、小技集で終わらないところです。タイプ別の視点を持つと、こちらの正しさよりも、相手が動ける条件へ目が向きます。その視点だけでも、指導や会話の質はかなり変わると感じました。

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    佐々木 健太

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