レビュー
概要
クラスの「映像研」を立ち上げた浅草みどり・金森さやか・水崎ツバメの3人が、日本のアニメ文化を「自分たちで作る」ためにロケハン・スクリプト・アニメーションの全工程に挑む。第一巻では、浅草が周囲の会話をすべて映像に翻訳するクセ、金森が設定だけで世界を組み上げられる想像力、水崎が陸上部から転向した画力で3Dモーションクリップを描くところまで描写される。夏休みを控えて学校の空き教室を使い、アニメのコンセプトアートとストーリーボードを描く中で、彼女たちは洗濯機の音や自転車の陰影を使って迫力ある画面を構成しようと試行錯誤する。
読みどころ
本作は映像研メンバーの「脳内動画」をそのまま紙のコマに移す演出が印象的で、たとえば浅草が「世界のトップアニメスタジオに勝つローアングル」を思いつくたびに背景画が一瞬で展開される。金森が「アニメの世界は設定と常識の連動」と語った直後に、舞台となる隔離された都市の交通制度を細かく明示し、登場人物の動機を常識と照らし合わせることで、リアリティの高さが担保される。水崎は実際の撮影での陰影の拾い方を、線の濃淡とボリュームで説明し、「ルールさえ共有できれば手書きでも重厚な映像が生まれる」と証明する。第1巻のラストでは、「ぼくの手には10年分のアイデアが貯まってる」と浅草が宣言し、映像研の活動を「作画と音の実験室」に押し上げる。
類書との比較
『けものフレンズ』を思わせるような二次創作的情熱はあるものの、本作はアニメ制作の最前線を描いており、きらら系のほのぼの路線よりも『SHIROBAKO』のエッセンスを凝縮している。『SHIROBAKO』がプロダクション全体の工程に視点を飛ばすのに対し、映像研は3人の少女が倒立してでも新しい視点を見出すメイキングに集中する。『映像研』の魅力は、作り手が幼稚園児の頃の「映像の夢」をそのまま空想しながらも、社会性やコスト・時間も同時に立ち上がる点で、同じ制作現場ものでも『アオイホノオ』(火浦功)よりも前線の制作手法と細密な画面構築が強調されている。
こんな人におすすめ
- アニメ・映像制作に飛び込みたいが、現場の構造がわからない人
- 演出や背景に生きた質量を求めるフィルムワーカー
- 手描きアニメの重量感を紙に描き写す仕事をしている人
- ストーリーよりも「どうやって作るか」にモチベーションがあるクリエイター志望者
感想
浅草が「アオイホノオのモノローグ並みに騒がしく」語る頭の中のカットを、背景画のタッチで復元するプロットが素晴らしい。水崎の描く線はこちらもペン先の振動が聞こえるほど震えていて、まるで映像が手から生まれる瞬間を目撃できる。ラストで「予算も時間もないが、それこそが原動力」という台詞が出ると、制作現場の緊張感と、“作らぬ”ことを拒絶する態度の両方を同時に感じ取る。特に、空想した構図を淡々とプレゼンするシーンでは、描いているのではなく「映像を見せている」錯覚に陥るほどで、読み終えた後すぐに友人にトリオの勧誘をしたくなる。