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レビュー

概要

彩玉大学の大学院研究室を舞台に、研究に情熱を注ぐ理系女子・氷室菖蒲が同僚の雪村心夜に「私、あなたのこと好きみたい」と告白したところから始まる。雪村は「好き」の定義と証拠を理系的に検証しようとし、相手の心拍や行動ログ、共通研究の時間配分まで数学の証明に落とし込んでいくため、恋の進度が実験的に可視化されていく。第1巻では共同研究で問題解決中に協力が進化する様子を、線形代数のグラフや実験フローのイメージで表現し、恋愛経験ゼロの男女が「関数的に収束する好き」を模索する。

読みどころ

『理系が恋に落ちたので証明してみた。』の魅力は、高速道路を走る2人の会話さえも数式に落とし込むこだわりと、物理のゼミで「証明できたら100点」式の恋愛観がユーモラスに交互に現れる点だ。第1話の「好意の判定」は、サンプリングされた行動データを基に証明の仮定を立て、氷室の顔色が変わるたびに仮説が検証され、笑いが生まれる。気持ちを名詞化して定義式を構築した後、雪村が立てた仮説を「感情の共鳴」として再定義する回では、数式の前提条件を入れ替えることで等式が満たされる。キャラクターの発話で「二重盲検」や「分析対象のバイアス」といった研究用語が飛び交うため、理系の好奇心が刺激される。

類書との比較

『バクマン。』や『アオイホノオ』が創作の現場をリアルに描く一方、本作は「恋」を主題に研究室の乗数効果を意識している。『バクマン。』がチームの理念と脚本の噛み合わせに焦点を当てるとすれば、理系が恋では関数としての課題と解決策が並列に描かれるため理論的な対話が多い。『アオイホノオ』よりも実験データの提示が多く、主人公たちが「感情」という名の変数を扱うという点で『恋する小説家』的な恋愛心理描写とは距離を置いている。

こんな人におすすめ

  • 研究室で身体を動かすより思考実験を重ねたい理系学生
  • 恋愛を論理的に噛み砕いてきた経験がある社会人エンジニア
  • 数学の比喩で笑いを取りたいコメディ感覚を持つ読者
  • 実験・証明・仮説検証を遊びにできる恋愛を見たい人

感想

1つのフレームを示した後、検証を終えて証明の破綻が始まる過程は本書のリズムになっており、知的なジレンマを抱えたまま読み進めることになる。氷室は「ほんとうに自分が好きかどうか」という問いを指数関数の曲線に重ねた。雪村は心理学に頼らずシミュレーションの再現性を追うことで恋のスコアを揺さぶる。研究室の仲間から「仮説の設計図」を突きつけられ、「データに騙されるな」と言われつつ、2人の距離が少しずつ収束していく様子に、理系ならではの四捨五入できない甘さを感じる。

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