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レビュー

概要

『理系が恋に落ちたので証明してみた。』1巻は、大学院の研究室を舞台にした理系ラブコメです。氷室菖蒲が雪村心夜に告白した瞬間から物語は始まりますが、普通の恋愛漫画のようにそこから甘く距離が縮まるわけではありません。二人とも研究者気質が強すぎるため、「好きとは何か」「この感情は証明できるのか」を本気で実験し始めます。心拍数、視線、距離、会話の変化などを観測し、恋愛感情を論理で扱おうとするのが、この作品の基本の面白さです。

この1巻が成立しているのは、二人がふざけているのではなく本気だからです。恋愛を軽くからかうのではなく、理屈で説明できない現象に真面目に向き合おうとしている。その姿勢がギャグになり、同時に「分からないからこそ証明したい」という理系らしい欲望まで見えてきます。設定の出オチで終わらず、きちんとラブコメとして走り出す1巻です。

読みどころ

  • 最大の見どころは、告白のあとに返事をする代わりに、実験計画へ進むことです。普通なら恋の進展になるはずの場面が、そのまま仮説検証のスタートになる。このズレだけでかなり笑えますし、二人が本気だからこそ、コメディとして強いです。
  • 研究室メンバーの存在も効いています。本人たちは理論武装しているつもりでも、周囲から見れば明らかに両思いです。第三者のツッコミが入ることで、専門用語の濃さが和らぎ、読者も置いていかれにくいです。理系トークの面白さと、外から見た恋愛の滑稽さがうまく両立しています。
  • 氷室と雪村の不器用さも魅力です。感情が薄いのではなく、むしろしっかりあるのに、そのまま受け止めず測定したくなってしまう。恋愛の高揚を素直に楽しめないので、甘さと理屈っぽさが同時に進みます。このもどかしさが、ただのギャグ漫画ではない可愛さにつながっています。
  • 1巻の段階で、設定だけに頼っていないことも分かります。研究室コメディ、オタクっぽい会話、実験ネタ、恋愛のすれ違いがきれいに重なっていて、次巻以降いくらでも広げられる土台ができています。発想の勝利だけでなく、人物同士のテンポでも読ませます。

類書との比較

恋愛頭脳戦という意味では『かぐや様は告らせたい』に近い面白さがあります。ただ、あちらが駆け引きの勝敗を前に出すのに対し、本作は「感情を論文化したい人たち」が本気で恋に向き合うところが違います。勝ち負けより検証が先に来るぶん、笑いの質もかなり独特です。

また、理系ネタ漫画は専門用語を並べるだけで満足してしまうことがありますが、本作はきちんと恋愛漫画として進みます。数式の面白さより、理屈っぽさのせいで素直になれない二人のもどかしさが中心にあるので、理系でなくても十分楽しめます。

こんな人におすすめ

  • 理系ネタとラブコメを両方楽しみたい人
  • 不器用な天才同士の掛け合いが好きな人
  • 告白後から始まる変化球の恋愛漫画を読みたい人
  • 数式や実験のノリを笑いへ変える作品が好きな人

感想

読み直して面白かったのは、二人とも感情を否定しているわけではないことです。むしろ感情が大きいからこそ、その正体を確かめたくて仕方がない。好きという言葉を簡単に受け取れない不器用さが、そのままキャラクターの魅力になっています。理屈っぽいのに、結局かなりかわいいです。

研究室コメディとしての配置も1巻でしっかり決まっています。主役二人の暴走を、周囲があきれつつ観測している構図があるので、次巻以降の広がりも自然に見えます。飛び道具の設定に見えて、実際には人物同士のテンポで引っ張る力が強い。変化球ラブコメの1巻としてかなり成功していると思います。

この作品が読みやすいのは、専門用語や実験の体裁があっても、根っこにある感情がとても素直だからです。相手が気になる、近づきたい、でも失敗したくない。その誰でも知っている感情を、理系的な手順に乗せて遠回りさせるから笑えるし、ちゃんと応援したくもなります。設定の奇抜さだけで読ませる漫画ではなく、恋愛の初期衝動を別の角度から照らしている作品だと感じました。

恋愛漫画として見ると、告白がゴールではなくスタートになる構図も新鮮です。返事を保留して駆け引きするのではなく、返事の代わりに検証が始まるので、読者は常に一歩引いた位置から二人の空回りを楽しめます。その距離感があるおかげで甘すぎず、理系ネタに寄りすぎず、どちらの読者にも届くバランスになっています。ラブコメの変化球を探している人にはかなり相性がいいはずです。

理系ネタを知らなくても笑えるのは、結局やっていることが「好きな人の前で平静を装えない」という王道だからです。数式や統計はその不器用さを増幅する装置にすぎず、恋愛の恥ずかしさそのものはとても素直です。

そのため、読み味は意外と広く、研究室ものが好きな人にも、変化球ラブコメを探している人にも届きます。理屈っぽさと初々しさが同居する。その感触こそ、この作品ならではの魅力です。

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