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レビュー

概要

『何をやっても痩せないのは脳の使い方をまちがえていたから』は、食事制限や運動メニューの前に、「太る行動を繰り返してしまう頭の癖」を見直そうとするダイエット本です。著者の中野ジェームズ修一氏は、トレーナーとしての現場経験をもとに、痩せない原因を意志の弱さではなく、習慣設計と行動選択の失敗として整理します。

本書のポイントは、脳科学という言葉を派手な万能説明に使うのではなく、なぜ夜に食べ過ぎるのか、なぜ運動が三日坊主で終わるのか、なぜ一度崩れると連鎖するのかを説明する道具として使っていることです。ダイエットを根性論から切り離し、行動の組み立て直しとして考えたい人に向いています。

読みどころ

読みどころは、第1に「痩せない行動には再現性がある」と見抜かせてくれる点です。空腹でコンビニに入る、疲れた夜に甘い物へ手が伸びる、運動の予定を曖昧にする、といった失敗の型を先に把握することで、気合いではなく環境で防ぐ考え方が身につきます。これはダイエット本としてかなり実践的です。

第2に、食事と運動を別々に扱わず、1日の流れで組み立てているのもよいところです。朝に何を食べるか、仕事中にどう間食するか、帰宅後の疲労状態でどんな判断ミスが起きやすいかまで含めて考えるので、現実の生活へ落とし込みやすいです。忙しい人ほど、この「流れで考える」視点が効きます。

第3に、運動のハードル設定が現実的です。きついトレーニングを一時的に頑張るのでなく、続けられる強度と頻度を最初に作る発想なので、途中で折れにくいです。やる気が出た日に頑張るより、やる気がない日でも崩れない仕組みを作るほうが大事だとわかります。

また、体重だけを成果指標にしない点も好印象です。睡眠、食欲、集中力、気分の安定など、行動改善の副産物を見ようとするので、ダイエットの途中で自己否定に陥りにくいです。数字だけを追う本より長く付き合いやすいと思います。

本書は、食べ過ぎを意志力の不足として断罪しないので、失敗から立て直しやすいです。食欲のスイッチが入る条件、疲れている時の判断の荒さ、達成感がないと続かないことまで踏まえているため、ダイエット経験が長い人ほど「ああ、そこが崩れていたのか」と整理しやすいはずです。

類書との比較

一般的なダイエット本は、糖質制限、筋トレ、有酸素運動など方法論を前に出します。本書はそこより手前にある「なぜ続かないのか」を扱うので、方向性が少し違います。食事法やトレーニング法を増やす本ではなく、行動を続けられる人の考え方へ近づける本です。

一方で、医学的な減量治療や栄養学の専門書ではありません。減量の数値管理を厳密にやりたい人には物足りない部分もありますが、何度もリバウンドしている人にはむしろこちらの順番のほうが合うはずです。

こんな人におすすめ

ダイエットが続かない人、夜の食欲や間食で崩れやすい人、運動習慣を作れない人に向いています。厳しい制限より先に、続く仕組みを作りたい人とはとくに相性がいいです。

逆に、短期間で大きく体重を落とす競技的な減量法を探している人には少し穏やかに見えるかもしれません。けれど、日常生活の中で体型管理を続けたい人には、この現実的な温度感が合います。

仕事が忙しく、生活時間が不規則な人にも向いています。完璧な生活を要求せず、崩れたあとにどう戻すかまで視野に入っているので、続かなかった経験をやり直す時の再出発に使いやすいです。

感想

この本を読んでよかったのは、痩せない理由を自分の性格のせいにしなくて済むことです。失敗にはパターンがあり、そのパターンは工夫で減らせるとわかるだけで、ダイエットへの向き合い方がかなり変わります。食事制限で追い込むより、判断を誤りにくい環境を作るほうが結果的に効率がいい、という整理は納得感がありました。

また、脳という言葉が出てきても難しくなりすぎず、結局は「疲れている時に何を選ぶか」「習慣をどう固定するか」という話に戻ってくるので読みやすいです。運動や食事の方法論を増やす前に、続けるための土台を整えたい人が読むと価値の大きい一冊でした。

読み終えたあとに残るのは、特別な才能がなくても、行動の順番を変えれば体は反応するという感覚です。リバウンドを繰り返してきた人が、次は仕組みからやり直そうと思える本でした。

体重を減らすことだけでなく、日々の判断の質を上げる本としても読めます。運動と食事の知識を増やす前に、生活の流れを整えたい人へ勧めたい本でした。

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    佐々木 健太

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