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レビュー

概要

『僕等がいた』1巻は、傷ついた過去を抱える高校生たちが、互いの感情を透明にすることで関係を再構築していく青春群像である。主人公・矢野元晴が、先輩・高橋七美と出会い、その距離を向き合うなかで「時間の節目」を再設定する。彼女の描写は静的な余白で描かれ、「話しかける」よりも「聴く」ことが強調される。恋愛というよりも、「分断された記憶」を繋ぎ直す行為として線を引いているのが特徴だ。

読みどころ

  • 初期のエピソードでは、七美の“不在”に兄弟姉妹のような感覚が残り、矢野の脳内には過去の心拍と現在のリズムが同居する。作者はそれを背景の空白とコマの余白を使って表現し、感情の振れ幅を視覚化する。
  • ダンス大会の準備を通じて登場人物たちが互いの「言葉の距離」を測り直す場面では、音のリズムや間合いを身体的に捉える描写が目立ち、接触する瞬間にある緊張と解放の連鎖が重なる。
  • 第1巻の後半には、記憶の断片を再構成する儀式(七美が過去の事故について話す)がありますが、そこでは認知の再構造化がまるで心理療法のように展開。読者がその場面を体感するために、ページレイアウトが余白と文字の配置で淡い期待を作る。

類書との比較

少女漫画としての感情の再起動を扱う作品に『君に届け』や『青空エール』があるが、『僕等がいた』はより強く「記憶の修復」をモチーフにしている。そのため、恋愛を通じて生じるドラマの中に、社会的な時間軸(卒業、別れ、再会)が強く絡み、感情がどのように元のリズムに戻るかが焦点になる。叙情性よりも構造的な再編を重視する点では、『ストロボ・エッジ』に親近感がある。

こんな人におすすめ

  • 自分の過去との距離を再調整する物語を求めている読者。
  • 心理的な時間のズレを描く絵の作りに目が肥えた人。
  • ある種の喪失感と再会のプロセスを丁寧に追いたい人。

感想

1巻を通じて、七美と矢野が互いに「自分の感情の場」を共有する作業が描かれる。距離を縮めるために彼らが輪郭を直すような視線の交換が生まれ、繊細なタッチで描かれた瞳がその過程を示す。恋愛のストーリーよりむしろ、静かな再起動の技術が心を揺らす。読後、誰かとの約束を信頼して再設定する時間の大切さを再認識した。

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    佐々木 健太

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