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レビュー

概要

『山賊ダイアリー』1巻は、漫画家である作者自身が狩猟免許を取り、実際に山へ入って獲物を獲り、さばき、食べるまでを描いた実録系漫画です。山暮らしのスローライフではなく、もっと生々しいです。銃の扱い、法のルール、獲物を仕留める緊張、血と内臓の処理、そして食べるところまでが、妙に淡々と描かれます。この淡々さが逆に強いです。

読みどころ

  • 狩猟漫画なのに、英雄譚にはなりません。作者は最初から熟練の猟師ではなく、失敗もびびりもそのまま描きます。そのため、知識ものとして非常に親しみやすいです。
  • 獲るところだけで終わらず、解体して食べるところまで見せるのが本作の肝です。命を奪う行為と食べる行為が地続きになっています。
  • 銃や罠のルール、山へ入る準備、猟期の感覚など、現実の制度がかなり具体的です。趣味漫画でありながら、ちゃんと「免許のある世界」の話になっています。
  • 作者の語りが変に格好をつけないので、山の怖さと面白さがどちらも入ってきます。

本の具体的な内容

1巻では、作者が狩猟の世界へ入っていく流れと、実際に山で何をするのかがかなり具体的に描かれます。猟友会の人たちとのやり取り、銃を持つための手続き、山へ入る前の準備。そこを面倒くさがらずに見せるので、「狩りをする」とは引き金を引く瞬間だけではないとよくわかります。

さらに、獲物を見つけてから仕留めるまでの緊張もかなり生々しいです。うまくいくときだけでなく、思ったように当たらない、山の中で見失う、近づくのが怖いといった感覚も描かれる。そのため、狩猟がロマンだけで成り立つ趣味ではないことが自然に伝わります。

そして本作が面白いのは、そこから料理へつながることです。獲った鳥や獣をどう食べるかまで描くので、「いただきます」の重みが変わります。グルメ漫画の快楽はあるのに、その前段に処理の手間や葛藤がある。1巻だけでも、この作品が単なるアウトドア漫画ではないとはっきりわかります。

1巻を読んでいると、狩猟が「自然の中で自由に遊ぶ趣味」ではなく、かなり多くの前提の上に成り立っていることも見えてきます。山に入る季節や時間帯、誰と動くのか、撃ってよい条件は何か、持ち帰ったあとにどこまで処理するのか。そうした工程を省かず描くので、読者は獲物を前にした興奮だけでなく、その前後にある責任ごと理解できます。ここが本作をただ珍しい題材の漫画で終わらせない強さです。

加えて、作者が猟師として格好よく振る舞おうとしないのも重要です。山の中で足場に気を使うこと、獲物に近づくと気持ちが揺れること、解体の段階で平気なふりをできないことまで隠しません。だから「命をいただく」という言葉が説教ではなく具体的な感覚として入ってきます。きれいに消費する話ではなく、迷いや手間込みで食べる話として読めるのが、この作品の大きな価値です。

類書との比較

自然漫画やアウトドア漫画は多いですが、『山賊ダイアリー』は「自然に癒やされる話」ではありません。山は危険だし、獲物は簡単には取れないし、命をもらうことはきれいごとでは済まない。その現実を、説教臭くなく見せるのが独特です。

また、料理漫画として見ても、食材を買ってくるところから始まりません。獲物を仕留め、持ち帰り、さばき、食べるまでが一連です。この距離感の近さが、本作をかなり強い読み味にしています。

こんな人におすすめ

  • 狩猟やジビエに興味がある人
  • きれいごと抜きの自然漫画を読みたい読者
  • 食べることの前段まで見せる作品が好きな人
  • 実録系の趣味漫画に強い手応えを求める人

感想

1巻を読むと、狩猟の格好よさより先に、面倒さと怖さが入ってきます。それがまず良いです。免許、道具、同行者、ルール、山の条件。どれも軽く扱えません。その現実があるからこそ、獲物をしとめたときの達成感や、食べるときのありがたさが変に美化されません。

作者の視点も信頼できます。勇ましさを演出せず、怖いものは怖い、失敗は失敗とそのまま描く。その誠実さがあるので、狩猟という題材でも読み手が構えすぎずに入っていけます。

料理の場面も印象に残ります。単に「新鮮だからうまい」とはしゃぐだけでなく、獲った直後の処理が味に直結することや、手間をかけてようやく食卓に乗ることが描かれる。食のありがたさを教える本は多いですが、本作はそれを机上の話にしません。獲る、運ぶ、さばく、食べるという流れを一続きで見せるので、食卓の見え方そのものが少し変わります。

猟友会の人たちとの距離感もよく、初心者が一人前ぶらずに教わる空気が描かれるのも良かったです。個人の武勇伝ではなく、地域の知恵や先輩の経験に支えられて狩猟が成り立っていることまで見えるので、世界の厚みが増しています。

自然の中で生きることへの憧れをくすぐりながら、その裏側の手間と責任まで見せてくれる。趣味漫画、実録漫画、食漫画のどれとして読んでも面白く、1巻の時点でかなり独自性の強い作品でした。

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