レビュー
概要
『オールラウンダー廻』1巻は、総合格闘技を題材にしながら、天才や怪物ではない普通の少年が、技術を1つずつ理解しながら強くなっていく過程を描いた作品です。主人公の廻は喧嘩の強さで押し切るタイプではなく、経験してきた打撃や体の使い方をもとに、「何が通用して、何が通用しないのか」を現実的に学んでいく。そこがかなり面白いです。
1巻の時点でわかるのは、この漫画が格闘技を精神論だけで描かないことです。相手との距離、寝技への対応、打撃の怖さ、ルールがあるからこその駆け引きまで、競技としての総合格闘技の面白さが前に出ます。そのうえで、廻がなぜ戦うのかという感情面も置き去りにしないので、読み味が乾きすぎません。
読みどころ
- 打撃だけでなく寝技や組みの怖さまで、読者が理解できる形で入ってくる。総合格闘技の入門漫画としてもかなり読みやすいです。
- 廻が最初から圧倒的に強いわけではなく、自分の得意と苦手を知りながら前へ進むので、成長ものとして気持ちよく読めます。
- 遠藤浩輝の絵が動きの重さをきちんと伝える。派手さより「本当に痛そう」「本当に極まりそう」という実感が強いです。
本の具体的な内容
1巻では、廻がこれまで身につけてきた格闘経験を土台にしながら、総合格闘技という別の競技へ足を踏み入れていく流れが描かれます。パンチや蹴りが出せても、それだけでは勝てない。寝かされればどうなるのか、組まれた時にどう崩れるのか、ルールが違えば戦い方そのものが変わる。その当たり前を、読者が納得できる形で見せてくれます。
また、廻の周囲にいる人たちも良いです。格闘漫画では師匠やライバルが記号的になりがちですが、本作は「教える側」「付き合う友人」「一緒に練習する相手」がちゃんと日常の人間として描かれています。そのため、試合だけで物語が動くのではなく、普段の会話や練習からも廻の変化が見えます。
さらに、1巻は競技の派手さより、格闘技へ向き合う姿勢の違いを描く巻でもあります。勝ちたいからやる人、強くなりたいからやる人、ただ楽しいから続ける人。その温度差があるから、廻がこの世界でどう立つのかも気になってくる。読み終えると、次の実戦で何が通用するのかを自然に見たくなります。
加えて、本作は「1つの得意技があれば勝てる」という単純な話にもしていません。打撃が良くても組みへ対応できなければ崩れるし、逆に組みができても距離を支配できなければ攻め切れない。総合格闘技という競技の複雑さが、主人公の未完成さときれいに噛み合っているので、試行錯誤そのものが読みどころになります。
類書との比較
格闘漫画には超人的な肉体や誇張された必殺技で読ませる作品も多いですが、本作はかなり現実寄りです。何が危険で、なぜその技が効くのかを丁寧に積み上げるので、試合に派手な演出がなくても面白い。ここが大きな違いです。
また、スポ根の熱血一辺倒でもありません。廻の強さは、怒りや根性の爆発というより、考えて試し、体で覚えていく過程にあります。そのため、競技経験がある読者には納得感があり、未経験者には「格闘技ってこう見れば面白いのか」と入口を作ってくれます。
こんな人におすすめ
- 総合格闘技をリアル寄りの漫画で読んでみたい人
- 強すぎない主人公の成長ものが好きな読者
- 技術の積み上げが面白いスポーツ漫画を探している人
- 試合だけでなく練習や日常も丁寧に描く作品が好きな人
感想
1巻を読むと、この作品の魅力は「強い人を見ること」より「強くなる途中を見ること」にあるとわかります。廻はまだ完成していないからこそ、ひとつ理解するたびに面白い。競技のルールや技の意味が、そのまま主人公の成長につながっている構造がかなりきれいです。
派手な格闘漫画を期待すると少し地味に見えるかもしれませんが、そのぶん説得力が高いです。総合格闘技の面白さを、痛みと技術の両面から伝えてくれる良い1巻でした。
格闘技経験がない読者でも、何が怖くて何が面白いのかがきちんと伝わる作りです。逆に経験者なら、理屈だけでなく体の感覚まで意識して描いていることに気づくはずで、かなり信頼できる導入巻だと思いました。
派手な必殺技や逆転劇だけに頼らず、「どうすれば次はもう少しましに戦えるか」という地道な前進で引っ張るのが本作の良さです。だから読者も勝敗そのものだけでなく、廻がどんな選択を覚えていくかを見守りたくなる。長く追いたくなるタイプの格闘漫画でした。
試合の勝ち負けより先に、競技を理解していく過程が面白いので、総合格闘技の入口としてかなり優秀です。地に足のついた格闘漫画を探している人には特に向いています。
読み終えるころには、次に廻がどんな局面で何を覚えるのかを見たくなります。